4-39.世界の英雄にするための、大事な責務Ⅱ

※今回は、ロビ視点から展開されていきます。



 これは天界からの通達だった。

耳慣れた声音。冗長といっても差し支えない、懇切丁寧な語り口調。

もう何度目の『覚醒啓示』になるのだろう。

つがいの神であるクロノスは、いつでも空気を読まない。

それは、こんな祝いの場においても同様のことらしい。

お兄様の元へと向かおうとした私を呼び止めるように、突然クロノスの『覚醒啓示』は始まった。


 ――やぁ、元気してるかい、ロビ。私は元気だよ。

さて、今回はあまり聞きたいとも思わないかもしれないけれど、大事なことを……うん、そうだな、助言アドバイスとでも言っておこうか。父親の戯言だと思って聞いてくれ。

ロビには二人のお兄様がいた筈だ。

一人はロビが羨望して止まないザビ。そして、もう一人。恨んでも恨み切れない長男、エク。

最初の流れからわかる通り、今回はエクについて話させてもらう。

エクは『――』の力を受けた、正しく最強の『神種ルイナ』だ。何もせずとも相当強い。

こんなことは誰であろうとわかり切っていることだ。

でも、だからなのだろう。彼は努力を捨てていた。

もっと強くなれる、その余白をないものとして過ごしてきた。

それではもったいないと共に、どこかで限界が来る。

例えば、上位の『神様』――『オリュンポス十二神』と対峙する時。

そもそもとして、物理面で損傷を与えられるほどの貫通は期待できず、魔法面も覚醒もしていない状態では渡り合うことは夢のまた夢なのだ。

……さぁ、ここまで長く話してしまって申し訳ないが、結論を言おう。

もしこの先、エクが上位の『神様』と戦う時が来るのなら、覚醒状態にまで至ることは必須条件だということだ。

まぁ、ロビのエクに対する思いも知っている。無理強いは勿論しない。

心のどこかにでも置いといてくれ。では、またいつの日か逢おう。


 延々と語り尽くされたエクお兄様の話。正直、私にはどうでもよかった。

エクお兄様は、ザビお兄様を裏切った。その事実は変わらない。

それだけで、私がエクお兄様を遠ざけるには十分な理由だった。

覚醒してないのは、自分の過失だろう。なんで私が知っている必要があるのか。

クロノスが私に求めていること、その意図がわからなかった。


 ――そうして、最悪のタイミングで王都を襲い出す地震。

ロクに楽しめないままに、タナトスが現れ、誕生日会は自然と消滅していった。

なぜかそこにはエクお兄様もいて、どうしても線をつなげたくなってしまう自分がいた。

お兄様の幸せがまた、崩されていく。この人がいる限り、お兄様に未来なんてやってこないのだ。

今日もまた、お兄様を押しのけて飛び出してきたエクお兄様を見ながら、私はを静かに固めていた。

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