4-6.怪奇の裏にⅡ

※今回も前回と同様、ムネモシュネ視点から展開されていきます。



 自分でも若干言い過ぎた節があったと思う。でも、これくらいの牽引力がなきゃ、私に興味をもってもらえない。

食台にすら載れないような、料理の役だけは嫌だ。折角気持ちを聞き出して、対等な関係になれたと思ったのに。


一端いっぱしの一般階級『神様』に何がわかるのかな?

早くとは言ったけど、信じるなんて一言も言ってないよ?」


「全ての輪廻の破壊に、新たな世界の創造? トんだデマカセっすね。

そんなものができるなら、オレっち達が知っていない訳がないでしょって話なのお分かり?」


 テンポの速い言及だった。

勢いに圧倒された私は、無言を貫くことになってしまう。


「オレはよくわかっておらンが……」


「アレスは喋んな」


「うすッ!」


「……まぁ、まぁ。皆落ち着いてくれ。まずは話を聞いてみることから始めるべきだぞ。

俺達がそんな風に囃し立てても、『答え』を知っているのはネムちゃんだけなんだから」


「チッ!」


「ふん!」


 特定の『神様』からの攻撃が苦しいが、ゼウスのように認めてくれる流れや、沈黙を貫くアテナやアルテミスのような動きも見受けられる。

約一柱だけ、この波に乗れていなかったような気がするが、きっと気のせいに違いない。

触れぬが『神様』。放っておこう。


 私も誇大して言ってしまったことは、紛れもない事実だ。

目を瞑ってくれる勢力が少しでもいるのなら、そちら側の『神様』の顔は立てなければならないだろう。

ここに来てからの私は、礼儀がなっていなかった。

それを不快に思っていた『神様』がいても、まるで不思議じゃない。

 でも、ようやく皆が口を開き、対話から会話へと移行されてきた頃合いだ。

場は一応、ゼウスが取り仕切ることになっている。

彼ならきっと私の味方をしてくれる筈だ。

うん。そうだな。……正直に話すのが一番かもしれない。

真なる真実を伝えて、協力を得る。

『今』の私にできる行為は、この一筋にある。

……よし、決めた。


「あの、皆さん。確かに皆さんの言う通り、私は少し誇張して言ってしまっていた側面もありました。

そこは謝罪させて下さい! 本当に申し訳ありませんでした!」


「対話でなく、がしたいって言ったのはお前だろうが。

そんなお前が嘘吐いてちゃ、オレ達だって会話なんかできないっすよ」


「なんでバレて……ハッ!」


「ほほう、気付いたか。オレっちは、恐らく下界でも逢ったであろうイノーのつがいの神なんすよね。

んでもって、『探真者』は元来オレっちの能力な訳で、オレっちも当然使えるだろってことよ」


 ――そう、『神種ルイナ』は『神様』の血によって創られた『寄生種パラサイト』なのだ。

だから、神子に選ばれた個体をわざわざ天界へと拉致をしてきていた。

そうやって、オズも私の元へ運ばれてきたんだ。


「そう言えば、私はもう要らなくなったそうですね……。

タナトスから聞きました」


「要らなくなった? 何に対してだ、あーと、あの計画のことっすかね?」


「そ、そうなんじゃないですか?」


「ん、じゃあよく分からないっすね。計画はもう終わっ……。

それお前、騙されてんじゃないの?」


「え?」


 謎が謎を呼んでいた。

嘘を吐いたことによるツケでこっぴどく叱られそうになったら、イノーさんのつがいの神がわかって、それからタナトスの言動の正当性が怪しくなってきた。

 わからないことだらけだが、解決はするのだろうか。

割れそうな頭を抱えながら、ここまでの対話を黙って聞いていたゼウスの言葉を待った。

ゼウスは長らく閉口していたが、ふむと鼻で息を吐くと、ゆっくりと唇を動かし始めた。

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