3-48.笑顔導く反逆の道

 俺とへイリアさんが戦闘準備を始めるのを傍で見ながら、エクは釘を刺すように忠告してきた。


「エラーの言葉は尊重する。アイツを倒せるなら、お前達で倒せばいい。

でも、一つだけ。この条件だけは飲んでもらう」


「ごちゃごちゃ言ってねぇで、『答え』を吐け。

ここでは、モテるもクソも関係ねぇからよ!」


「おい、総統への口の利き方がなってないな! ここでは不問とするが、次言ったら殺す!

条件はこうだ。――少しでも劣勢だと判断した場合、僕達『極擽懲花ウーヌム』がエラーの鎮魂を行うこととする!」


「劣勢って言うが、誰が判断するんだ?

俺達は己の劣勢を決して認めることはないぜ?」


「そんなもの、こっちが決めるに決まってるじゃないか! っというか、お前また僕に……」


「よし、圧倒すれば問題なしってことだな。

……行くしかねぇぜ、なぁ、へイリアさん!」


「おう!」


 俺とへイリアさんはエクの言葉を無視し、戦闘の意志を鼓舞する。ここで下らない問答をしている暇はない。

へイリアさんも言葉と並走し、ドラゴンと一定の距離を取った。

迷わず立ち止まったのは、腕を組んだ俺の隣。二人して射止めるドラゴンの成れ果ては、今なおエラーの消化を続けているようだ。

攻撃の素振りを見せず、美味しそうに胃袋の中でエラーを溶かし続けている。さぞエラーの血肉は締まっていることだろう。

もしかしたら、エラーの吸収によってドラゴンとしての能力を覚醒させるやもしれない。

エラーが苦戦を強いられたドラゴンの覚醒。考えただけで身の毛も弥立よだつ。

エラーを取り込んだ後のドラゴンは、泥土のままうねり続けていた。

この形態が定まった時、決戦の火蓋は切られるのだろう。

 今日、ここには多くの団員達が来ていた。そのせいかどことなく熱気を感じ取り、後ろを振り返る。

そこには見知った顔ぶれが何人も見受けられた。

王都に来てから出逢ったアナ、イノーさん。

入隊試験で共に戦ったリーネア、ハスタ、ロビ。

皆、後方から俺達の勇姿を見届けんとしている。

各々の声援が俺達の背中を押してくれた。


「お父さんを超えていってぇ、ザビっち、リア!」


「エラーの『勝ち』を引き継ぐのは君達だ! 師匠は超えるためにある!」


「なぁ、兄弟! お前はどこまでも輝いていける! 俺の分まで飛んでいけ!」


「ザビさん、へイリアさん! 負けないで!」


「お兄様! 死力を尽くして、ぶちかましてください!」


 皆の声が力になって、足に、腕に注がれていく。

これだけの期待を背負っている。

これだけの希望を託されている。

これだけの愛で満たされている。

これが幸せ。

これが強さ。

これが俺達、人類の底力だ。

 スビドーを破滅に追いやった最悪へ、反逆の狼煙が宙で笑った。

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