3-40.世界の英雄にするための、大事な責務
※今回は、ロビ視点から展開されていきます。
私は夜のうちに王都を飛び出して、エイム・ヘルムにまで足を運んできていた。
目的は、とある『神様』に逢うこと。かの女神とのつながりが私達の最終目的達成には必要不可欠なのだ。
何やら王都が騒がしい気がする。言っても目と鼻の距離に位置する二つの都市だ。
周辺諸国で聞き取る音とは訳が違う。
もしや敵の襲撃か。いや、まさかそんなことある筈がないじゃないか。
前回の王都襲撃からも、そう時間が経っていない。その上、現在はスビドーの方を攻めている真っ最中だ。
流石のタナトス様も、そこまで戦力を使い果たしたいとは考えないだろう。
私の気のせいであれば、全て解決する。そう思い込もう。
『今』は一刻も争う事態が起ころうとしているのだから。
暫くしてエイム・ヘルムの領地に到着した。
なかなかの荒れ具合だ。建物群の色も竜胆色をしていて、何とも忌々しいような雰囲気を感じる。
私は勇気を出して、一歩ずつ踏み出していった。
廃れた滅亡領域の町とはいえ、かなりの広大な敷地をもっている。
王都までとはいかないが、これでは虱潰しに探していくのは困難かもしれない。であるならば、私のとっておきを使うまでだ。
そう考えるが早いか、私は言い慣れた詠唱を小さな口元から紡ぎ出す。
「
冷酷なる貫流よ、我が臣下として
私の正体は『調時者』。平たく言えば、時間を操る『
『今』行使した魔法は、特定範囲を設定し発動することができるものであり、その範囲内で過去に
視覚的な理解は、もう説明するまでもなく、エイム・ヘルム全体の変化として確認できた。そう、眼前にはぼんやりとした赤い光が線になって続いているのだ。
その線は、私の立っている場所から始まっている。
この魔法に永続の効果はなく、寧ろ通常の魔法より持続時間が短い。
そして残念なことに、今もなお、線は伸びていっている感覚がある。急いで赤い線の先にまで追いつかなくては。
とにかく、この線を辿っていけば、目的の『神様』に出逢えるだろう。
それにしてもあちこち動き回っているものだ。
どこに行けばいいか分かったと言っても、それが簡単であるとは言い切れる訳もなかった。
でも、最初に思い付いた虱潰しよりは何十倍もマシ。
これはお兄様を世界の英雄にするための、大事な責務だ。
私しか動けないのなら、いや、他に誰が動けようとも、報われるべくして死んだお兄様にはちゃんと報われてもらわないと。
――私の寝覚めが、永遠に悪くなる。
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