3-34.再思三考、加えて四考
じたばたと地面をのた打ち回る俺は、さぞ醜かっただろう。
動こうとした時に倒れてしまい、そこから立ち上がれない状況が続いていた。
両手の自由はあるものの、結局敵に近付いていくことができないなら意味がない。ただ、問題はそれだけではなかった。
ベルウの赤黒い光球が未だ、浮遊した状態にあるということだ。しかも、その数は驚異の五つ。
どう考えてもひっくり返る未来が見えない。
現状、解決しなければならない事象は、全部で三つ考えられそうだ。
一つは俺の足を自由にすること、一つはベルウの光球を五つ全部捌き切ること、そして、最後の一つは当のベルウをぶん殴ること、その三つである。
解決にはかなりの手順を要しそうだが、悠長に考えている暇もない。必死で首を回し、その糸口を探す。
後方にはアナとイノーさんが控えている。そう言えば、イノーさんが一言も発していない気がする。
いつもなら、アナと一緒に俺にダル絡みしてくるというのに。俺は少し心配になって声を掛けた。
「てか、イノーさん、大丈夫か?
アナがあんだけ煩くしていたのに、イノーさんが騒いでないなんておかしくないか?」
「ちょっと、ザビっちぃ! シショーなんか唸ってるよぉ!
蟀谷あたりに手を置いて、
「おい、本気かよ! 危なそうならどっか安全な場所で休ませておいてくれ!
イノーさんが狙いの的にされたらたまったもんじゃねぇ!」
「ばっちりばっちりぃ! じゃあ、シショー。アタイの肩に掴まってぇ!」
「…………アナ。ワ、ワシは……だいじょう……ぶ、だ。ひとりで、いけるぞ」
「シショー、でもぉ!」
「ワシは大丈夫だッ!」
食い下がるアナの声に、一際張り上げた声音。その有無を言わさぬ圧に、俺達は何も言えなくなった。
とぼとぼと歩いていく背中に、無言の応援を送る。早く不調が治って、俺達の加勢に来られますように――。
でも、不思議なものだ。ベルウは、イノーさんには何も危害を加えなかった。
ただ茫然と見つめているだけだった。
俺は再度、思考を巡らせる。
これでイノーさんの助力を受けることはできなくなった。
ならば、アナと協力したベルウの倒し方を考えた方がいい。……そうか。アナの魔法だ。
「アナ、お前の魔法なら、ベルウに一泡吹かせられるかもしれない!」
「え、何か思いついたのぉ⁉ ……わかったよ、ザビっちぃ!
アタイに任せてぇ!」
俺は後方に向けていた顔を、ベルウのいる方角に戻す。
当のベルウは、光球を空中に浮かべたまま、静かに佇んでいた。
なぜかイノーさんが去った方に目を向け、どこか物憂げな表情を浮かべているのだった。
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