3-21.『五瀑征』の結束
※今回は、イノー視点から展開されていきます。
ここは、『
前回の会合からまだ二週間と三日しか経っていないが、『
エクの焦燥し切った表情が、事の重大さを如実に表している。
昨日、エラーから、珍しく弱音を吐くような『
毎度、勝気な言動で、ワシに安心を与えてくれていたというのに、だ。
不審に思ったワシは、様々な質問を投げかけた。
一昨日までは軽快に受け答えができていたというのに、なぜか昨日に限っては質問してもすぐに返事がなかったり、その返答にもかなりのムラがあったりするような気がした。
容量の得ない報告をつなぎ合わせていったところ、とんでもない敵と戦っていることが明らかになってきたのだ。
エラーが危険だ。
そのことに気付いたワシは、すぐさまエクの元へと向かった。
ワシからの報告を受けた後、エクのそこからの関係各所への対応は早かった。
――スビトー王国にて、複製体膨力竜と交戦中のエラーだが、どうやら今回の
時折、攻撃に対して自ら
伝わらないかもしれないが、要するに実態を持っていないんだ。
通常時は
とにかく、エラーに命の危機が迫っている。
なんとしてでも死なせてはならない。
人々の『我世』への信用が落ちてしまうじゃないか!
そうしたら、これまで僕が創り上げてきた地位が全て台無しになる。
そんなことはさせない。だから、頼む。力を貸してくれ!
どう考えても手放しに力を貸したいとは思わない提案の仕方だろう。だがしかし、エラーという、絶大な人類の味方を失うことは何としても避けたいと思う人が多かった。エクはエラーのおかげで
「それで、どうするんでしょうか。
もう直ぐにでも出発といった具合でよろしいのでしょうか?」
「そうだな、皆に手厚い協力をしてもらえたおかげで、何とか明日には出発できそうだ。
もう他部隊も準備はできているか?」
この言動に対し、拳を打ち鳴らしながら、リーベルが空気を割る。
「そんな質問は野暮だぜ、総統さんよ!
俺達がここにいるのは、何のためだ?
なら、『答え』は簡単だ。
いつだって俺達は準備ができている!
この手に『勝ち』を収めるまでは‼」
「言うまでもなかったな」
「当たり前です」
「道理だ」
「よし」
『我世』の血が、今ここに結集した。
普段はいがみ合い、殴り合うような関係だ。
それでも、この信念だけは皆、心に刻み付けている。
「それでは、明日――『スビトー竜征討戦』を決行する!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお‼」」」
「この地に立つは――」
「「「人類なり‼」」」
大きな作戦の前にはいつもこれをやる。
エクの考案したものだが、なかなか様になってきた気がする。
脳内ではそんなことを考えていた時、一階から直通している扉が勢いよく開かれる。
「おい、お前。何やってる……」
組織員は息を切らしながらも、エクの言動にちょっと待てと、手を出した。
「すみません。失礼は重々承知の上です。
そんなことより大変なんです!
お、王都が、王都が外縁から破壊されていっています。
天界からの敵襲、使者が降臨してきています!」
「なに! 本当か!」
「この『英雄王の間』は外部の情報を遮断するために、音も光も取り入れていない。
まさかそこが悪さをするとは……!」
「でも、どうしてもう襲ってきているんだ!
今はスビトーが狙われているのではないのか!」
「恐らく、同時に攻め入ることで、両方とも打ち取ろうとしているのだろうな。
エラーの戯言なぞ聞かず、最初からあちらを対処していればよかったのだ」
「おいおい、そんなこと言ったってしょうがないだろう!
今は、その敵襲をどうするかだ!」
「どうするんだ、エク?」
「決まっているさ、一匹残らずぶっ倒す!
ちょっとばかし手順が増えただけのことだ」
「ノホ。そう来なくっちゃな!
他の奴もいいだろ」
「名前で呼んでくださいよ、イノーさん」
「俺達にも立派な名前があるんだぜ?」
「ノッホッホ。それもそうだな、それじゃ行こうか! テム、ベル?」
「はい!」
「あァ!」
ワシ達は遠回りを余儀なくされた。
王都が狙われたのでは、どうしようもない。
できるだけ、早くに片を付けるそれでもって、エラーを救いに行ってやるのだ。
『
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