『壁外調査』編
2-42.親子の邂逅
※今回は、ムネモシュネ視点から話が展開されていきます。
砂の世界を歩き続けて、辿り着いた王都。四十日弱の一人旅は、私を大いに苦しめた。
食欲もなければ、性欲も睡眠欲もない。
ひょっとすると楽そうに聞こえるかもしれないけれど、正直これが一番辛いまであった。
何も感じないことは、何も考えられないことと一緒だ。
頭には、ただ足を動かして、目の端に小さく映る『
でも、そんな旅ももう終わり。
この王都を抜けて、北の方角に進む。
王都は世界の中心であり、王都からならどこへだって行くことができる。
まぁ、『滅亡領域』を抜かして、ということになるのだろうけれど。それを言えば、あのエイム・ヘルム
そうして、これまでのことを思い返している内に、北の
あれ、こんな生活不全区域で、待ち合わせをしている人達がいる?
もしかして、北の
二人は深めに
そもそも王都の地に足を踏み入れたこと自体初めてで、どんな人が暮らしているかなんて知る由もないけれど。
流石に、
でも、あの仮面の人、どこかで……。
見た感じ行き先は同じようだし、少しついていってみることにしよう。
ちょっと危険な香りもするけれど、女神の勘を信じてみることにする。
私は、一定の距離を保ちながら彼らをつけていくことにしたのだった。
✕✕✕
イノーさんとアナは共々、外套に深めの
遠目から見たら、いや近くで見たとて、話してみるまでは誰だか予測つかないだろう。
かくゆう俺も、いつも通り仮面を着けている。
傍からは、ヤバい集会が開かれているように見えてもおかしくない。
この区域に人が少ないとはいえ、全くいないという訳ではないことを忘れるな。
……総じて、長居することはあまり得策とは言えないだろう。
「おはようさん、ザビ少年!
早速出発といこうかね」
俺達の異質性を知ってか知らずか、イノーさんもここからの早期の立ち去りを希望しているみたいだ。
それよか朝から元気いっぱいの雰囲気を見せているが、そんな最高速をカマしていて大丈夫なんだろうか。
いぃや、いつもこんなもんだったな。
「ちょっぴりちょっぴりぃ!
ザビっち、遅れてんぞぉ!」
そうそう、あのアナの自殺未遂を阻止した日、俺達は互いに再度自己紹介をする機会を設けた。
そしたら、俺は『お兄さん』から『ザビっち』に
これが好意的な進展と言っていいのかはわからないが、距離感が近づいたのだと良いように解釈しておこう。
「……それで今日は、何のために『
「一番遅く来た癖に、一番早くぶっこんできたな」
「時間がギリになっちまったのは謝るよ、すまなかった!
この通りだ!」
俺は身体の前に手のひらと手のひらを重ね合わせて、反省の色を見せる。
イノーさんは両腕を横に広げ、小さく首を振る。
「まぁ、遅れたって訳じゃないし、普通に教えてやろう。
と言っても、ワシも全ての情報が頭に入っている訳でもないのだよ。
そうだな、知っていることと言えば――エイム・ヘルムには
そいつを
エイム・ヘルムに執行対象って、あそこにいるのは……。
一人の人物が頭に降ってきたと同時に、誰かの声が飛んでくる。
「ななな、なんですってぇぇぇぇええ‼
その、その話、私にも聞かせてもらえないでしょうかぁー?」
突然の後方からの声掛けにビビり散らかす、俺ら三人組。
ここは男が、声を出さなきゃなんねぇ場面だ!
「あ、あんたは誰なんだよ!」
思わず喧嘩口調で素性を聞こうとしてしまった俺に、すぐさま二人からど突きをもらう。
小声で、初対面の癖に何を言っているのだ、ここで不信感を抱かれたら一巻の終わりだぞ、とツッコまれてしまった。
だが、俺達の危惧した反応とは丸きり異なる反応が返ってくる。
「こ、この声は、オズの友達だった子ではないでしょうか?」
何でオズのことを知っているんだ?
オズはずっと一人だったし、外界とのつながりは一か月に一回、情報が入ってくることしか――。
「お、お前は何者だ?」
「は、はい。
私はオズの元
か、『神様』だって⁉
目の前の信じ難い状況に、思考が追い付いてくれない。
何がどうして、こうなったんだ――⁉
突如として俺達の前に降臨した『神様』の存在。
この出会いはこの『壁外調査』に何を生むのか。
試験当日まで、残り五日。
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