2-22.計画は進む
ここは天空二階層――『英雄の領域』。
『鉄の領域』の一つ上にある、
他層からの
手の込んだ彫刻が施された荘厳な柱の数々は、見る者に溜め息を
大理石の床には塵の一つも見当たらない。
そんな誰もが羨むような中々に豪華な空間に、一柱の『神様』とその従者がやってきた。
「ボス、まだアイツの始末はできないんスか!
もうオレ我慢できないっスよ!」
鼓膜を刺すように響く甲高い声音は、ボスと呼ばれる謎の存在に頻りに何かを伝えている。
「おい、
あと、俺のことをボスって呼ぶんじゃないよ。
俺はタナトス様だ!
仰々しいったら、ありゃしない」
騒がしく囃し立てるケルーに対して、冷めた口調であしらう死の神、タナトス。
一瞥を投げ、すぐにまた正面に向き直した。
「計画はあと少しで完遂することができる。
その第一歩、オズの殺害は
まぁ、もう俺たちの『勝ち』は決まったようなものだがな。フッフッフッフッフ……」
低く、不気味な笑い声は丁度柱によってできた闇に溶けていった。
絶望の
✕✕✕
右も左も関係なく腕はパンパンになり、脚は常に悲鳴を上げている。
エラーとの修行が始まって早三日が経とうとしていた。
あれもこれもと
たった三日では、エラーが求めているようなムキムキな身体にはなれていない。
がしかし、理想形に到達するまで待っていたら、試験当日になってしまうため、鍛えるのと同時進行で体術や魔法習得の
そう言うこともあり、身体は思うように動かなくなってきてしまっているのだ。
今日、エラーは朝の訓練を終えると、夜の部はまた明日やろうと提案された。
休んでいる暇がないとはいえ、俺も人の子。動かない身体を無理やり動かして、どうにかしてしまったら元も子もないので、お言葉に甘えることにした。
一日くらい、身体をゆっくり休ませなければ死んでしまう。
じゅあ、これで今日は解散だな。お疲れさん。そう言って立ち去ろうとした俺の肩をエラーはその剛腕を伸ばして捕まえてきた。
軽く抵抗し、その腕を何とか振り払うとエラーの方を向く。
そこで、意外な誘いを受けることになったのだ。
――一回よ、俺とサシで飲まねーか?話しておきたいことがあるんだ。
正直、そんなことをエラーから申し出てくるとは思わなかったから、驚きが隠せなかった。
が、特に断る理由もないので適当に相槌を打って誘いに乗っかることにする。
忙しなく過ぎていく修行の日々は、まるで荒れ狂う大海のようだった。
三日間ずっと高波に揉まれ続け、ようやく見えた人一人休める陸地。
だが、そこには奇妙な植物が生えていた。
そう、エラーとのサシ飲みだ。
エラーは一体何を話してくれるのだろう。
皆目見当もつかないが、きっと第二部隊長様が言うことなのだから大事なことに違いない。
もしかして、『我世』構成員しか知りえない情報だったりして――。
そしたら、俺の未だに分かっていない数々の謎を紐解く糸口になるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、指定された時間に集合場所に向かうのだった。
試験当日まで、残り二十六日。
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