終章
残夢
丘の上に立つ白亜の校舎に向けて、柴犬のような仔犬が足早に歩いてゆく。
門を通りすぎると、物好きな女子高生が声をかけてきたが、仔犬は無視して、学園の校舎の前を小走りに通り過ぎてゆく。
その先に見える体育館からは、凄まじい悪のアルマがにじみ出してきていた。
――四百年。
アオイは仔犬の頭のなかでつぶやいた。
――私たち、ずいぶん長いこと戦い続けてきたわね。
六つの
しかし、その霊体を保つためには膨大なアルマが必要で、アオイは自然界からちょっとずつ地道に集めているのに対して、カシンはアルマクリスタルを使って強引に人々から奪おうとする。
そうして、なんども二人はめぐりあい、なんども戦い続けてきた。四百年、長い長い覚めぬ夢を見ていたようだ。
いつの頃からか花神は、厄災の魔人
体育館の玄関の前に立ったアオイはその巨大な建物を、小さな頭をもたげてじっと見上げた。
――あぐりちゃん、どんな女の子に成長しているかしら、楽しみね。
十三年前に猫の姿でちょっとの間すごした、小さな幼女の顔を思い出していた。
アオイは意を決したように、建物へと足をふみだした。
どんよりと澱んだ悪のアルマが、小さな仔犬の体をしめつけるようにまとわりついてくる。
――いいかげん、夢から覚めましょう、恭之介。
(天煌装忍アルマイヤーに続く)
久遠の輪廻 ―アオイ妖忍伝― 優木悠 @kasugaikomachi
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