第3話

 ミーンッ


 ミーンッ


 ツクツクボーシッ


 いつもの“チーム★あやか”の集いの多目的教室。 


「暑い……。」

 あいが、駅で配られていたであろう、色気も何もない電気屋の内輪をあおぐ。  

「新学期なのに……九月なのに……。」

 やなは、小さな手持ちの扇風機の風を浴びながら、うなだれていた。

「てかさ、八月よりも九月の方が、ぶっちゃけ暑くない?」

 かのは、声優の花野まもるの今年の夏のコンサートツアーのタオルを頭に巻いていた。手首には、そのツアーグッズのラバーブレスレット全色がはめられていた。


「結局……、リア充になった人……いる?」

「私は……アルバイトをしてみた。」

「あい氏?!誠か?!」

「我等といる時はマシンガントークだけど、外では、真っ白なキャンパスかスケッチブックか自社制作の同人誌作成のためのiPadが話し相手の……コミュ障の塊のあい氏が……。」

「あ……アルバイト?!受験に向けて塾は?!」

「成績はそこそこだし……美術系の大学だから……塾行かなくても良さそうだったから……そのパン工場とコンビニでアルバイトを……。」

「あい氏の社会デビューにKP!!!!!」

「けぇ?ぴい?」

「乾杯!」

「「け……KP!!!!!」」

 各自各々の水筒から飲み物を飲む。

「で!アルバイトはどうだったの?」

「う……うぬ。ま、まずパン工場。」

「うん!」

「じじばばか……パートのおばさん。あとは……同じ女子高生の短期バイトで……出会いどころか、一時間以上経ったと思って時計見ても五分しか経っていないとうイースト菌に犯されるだけのアルバイトだった。」

「イースト菌……。」

「ただただ流れてゆくパンの仕分け。毎日順番に点呼をして、毎日少しずつパンを選別する場所を移動していくの。休憩時間も誰と話すわけでもなく、もくもくとパン工場のパンを食べ、携帯でBL漫画と小説を読んでいた。むしろ二日目には作業をしながらも推しのカップリング妄想のしあわせ過ぎる時間へとシフト展開され、十五分位しか妄想していなかったはずが“あれ?もうお昼休み?”と、三時間なんてあっという間だった。」

「ある意味、あい氏は無敵になられておるな。」

「深みの強みの境地。」

「コンビニのアルバイトは、パン工場の後だったから……夕方からだったから、男だらけだった!」

「「えぇーーーーー!!!!!」」

「ぎゃ……逆ハーレム!」

「しっ……しかも男子高校生だけではなく、男子大学生、フリーター、脱サラおじさん!」

「え?あい氏もうそれ!そこにいるだけてで受精してるよ!妊娠してるよ!」

 やなと、かのが拍手をしながら……

「「パイセン!ご懐妊!おめでとうございます!!!!!」」 

「う!産まれる!ひっひっふー!……て、んなわけあるかい!想像してみなさい!コンビニはね、レジ立ってるだけかと思っていました。」

「違うの?」

「時間毎の検品。掃除。品出し。しかも駅前店だったから帰宅ラッシュで常に客足たえないし。たまに入る、他の陽キャ女子高校のバイトはチヤホヤされ、私は空気も同然。おじいちゃん店長しか笑顔で話しかけてくれなかった……。改めて顔面偏差値の大切さを痛感し、コミュニケーション能力の大切さを学ぶ……むしろ突きつけられるセンチメンタルなだけのアルバイトだった……。せっかく男子が多いからBLカップリングのおかずにでもしてやろうと思ったさ。なんでも美味しく組み合わせていただくのが腐女子の強み!しかし!あそこまで陽キャとの差を毎日突きつけられると……妄想する気力は湧かず、むしろ皆様の当たり障りのない存在でいる事に必死になるのです!」

「ひ……人は環境でそこまで追い詰められるのか?!」

「なんて残酷なんだ!」

「と言う事で、私。あいは……惨敗です!じゃあ、次はやな氏!」

「私は……演劇部の文化祭にむけての稽古の日々。塾の夏期講習に出会いを求めるも、やはり学校と一緒で陽キャ族ではチームが出来ていて、余った陰キャ男子はロリアニメヲタ。声優トークも噛み合わない。潤ったのは束の間の2.5次元のミュージカル生観戦と映画館でのライブビューイング。動画とDVD鑑賞の時間。……いや、本当にライブビューイングと生観戦はしあわせだつまた。で、カノ氏は?」

「声優の専門学校の体験入学へ行くものの、やはり陰キャからのヲタクでスッパリ男女に別れていた。同じく玉砕。」


 はぁ〜っと、三人はため息をついた。


「悲しい話は、切なくなる。」

「それなぁ。」

「なんか明るい話しよ?」

「あ……。」

「どーした?あい氏。」


 あいが鞄からiPadを出した。

 

「コンビニから解放された今!我ら“チーム★あやか”に再会してマシンガントークしたら元気回復してきた!」

「あい氏!好きっ!むしろスコッ!」


 サラサラとあいは、iPadに絵を書き出した。


「相変わらず描くの上手くて早いね。」

「コンビニの男子達は陽キャばかりで顔面偏差値が高かった……!」

「あ、私、ビジュアル的に、この“短大生けいすけ”推しかも!」

「そう!このけいすけは、ノーマルな主人公系なの!是非“ツンデレSキャラフリーター裕“と合わせたい……ところを!“総受け高校生しゅん”と組み合わせて、ノーマルから攻めへの成長を美味しく崇めながら見届けさせて頂きたい!」

「か……考え、いや妄想するだけで頭が至福ですなっ!」

「じゃあじゃあ!私は花野まもる様のツアーコンサートで二回も目が合ったの!二回目はもうアイコンタクトでプロポーズされたから!」

「かの氏の思考回路は、ショート寸前所がぶっ飛びすぎて崩壊からの大爆発の大怪我大事故じゃん。」

「逆に尊敬するわ。」

「この写真集や雑誌を見て?!」


 かのは、それらを鞄から花野まもるの写真集やファイリングされた雑誌の切り抜きを取り出した。雑誌の切り抜きにいたっては、自ら作成したであろうハート形や星型の色紙までプリ帳よりも華やかにデコレーションされている。


「相変わらずカッコいね。花野まもる。」

「王子キャラからBLまで……大御所の仲間入りしたのにドラマとかにも出るようになったもんね。それでもなんかコッチ側の人間って感じが憎めないというか。」

「ふたりとも辞めて!同担拒否!!!!!

「「はいはい。」」

「この写真だって全部私のことを見つめて微笑んでくれている。」

「そりゃ写真だからね。カメラ目線になるからね。」

「“今はまだ会えない。側にいられない。でも大丈夫。俺達はいずれ結ばれる運命だから”」

「え?なんの話?誰?」

「……て、笑顔なのぉーーーーー!!!!!」


 あいとやなは、いつもの、かのの暴走に、もはやツッコミをしなかった。


「そういえば!夏コミ楽しかったね!戦利品ホックホク!」

「いや、私は今回、ラストがやや悲恋で落ち込んだわ!」

「無限大に妄想出来て、沢山の恋愛見れてるうち等って、ある意味に陽キャパリピよりリア充なのでは?!」

「確かに!一人に割く時間はないし!浮気!不倫!そんな事も妄想だし!性病になる心配もない!」

「安心清潔!」

「と、思えば!あそこ!」



 やなが、おもむろに窓に近づき校門を指差した。


「さ……三年の後藤パイセンと……その弟一年後藤たかし……。」

「今日はお互いの群れから離れて……しかも!校門で待ち合わせとか……近親相姦じゃん!」

「しかも!ちょっと待って!後藤パイセン!学校前のコンビニでジャンボフランクフルト買ってる!エッロ!ハレンチ!」

「「あ!」」

「弟たかし、それにかぶりついた……。」

「間接キスやん。むしろそれは……18禁ですやん。」

「そういえば、陽キャパリピナンバー2の藤盛みなみの“ウィンナーからのエイリアン説”。」

「それって……今の純粋すぎる弟たかしに、後藤パイセンのウィンナーは、……ビッグフランクフルトとなり、エイリアンの如く弟たかしを襲うのでは……?!」

「たかしが危ない!」

「け……けしからんっ!もっとヤりなさい!!!!!」


 チーム★あやかの妄想暴走は今日も止まらない。


☆★☆Fin★☆★




  

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