黒歴史だらけのこんな俺でも恋することが出来ますか?
ヒイロ
第1話 プロローグ
皆さんには黒歴史と言うものがあるだろうか?そもそも黒歴史とは、自分が無かった事にしたい事や目も当てられないような話の事だ。
そんな黒歴史がこの俺、
例えば小学生の頃鬼ごっこをしていた時、足を滑らせて橋から落ちて骨折をしてみたり、中学生の頃電車の中でクラスメイト(女子)が痴漢されているのを見つけて止めに入ると、女子生徒に自分が痴漢して来たのだと勘違いされてしばらく痴漢魔と噂されてみたりなどなど。
「改めて思い返してみると結構恥ずかしい黒歴史ばかりだな……猛烈に居た堪れないというか」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
「でも、蒼太くんが黒歴史だらけの過去を乗り越えることが出来たおかげで今の私達の関係、そしてこの関係があるんでしょ」
「花咲先輩の仰る通りです!」
「……確かにそうだな」
今こうして3人で笑って話せているのも俺が勇気を出して自分を変えようとした結果なのかもしれない。
そして、これから話すのはそんな過去を変えようと努力したこの俺、緋山蒼太の中で1番と言っても過言ではない黒歴史の話………
当時の蒼太(中学2年生)には好きな人がいた。その人の名前は
花咲鈴香は蒼太の1つ上の先輩で当時は同じ生徒会に所属していた。生徒会では花咲先輩が生徒会長、蒼太が副会長という役職だった。
「あ、花咲先輩!お疲れ様です!」
「うん!蒼太くんもお疲れ様〜!」
「ところで花咲先輩、この事なんですけど……」
「ふむふむ……。ここは会計の方に回してもらった方が良いかもね」
「なるほど、分かりました」
花咲先輩とは生徒会の繋がりもあってか、とても仲が良かった。分からない事があったらいつも相談していたし、花咲先輩も俺の事をよく頼ってくれていた。
ちなみに、黒歴史だらけである意味有名だったこんな俺が生徒会副会長になれたのも先輩が推薦してくれたおかげだ。
そんな真面目で勉強が出来て頼れて可愛い花咲先輩にいつの日にか恋焦がれていた。彼女は自分の黒歴史についても何も詮索したりしなかったし、馬鹿にもしない。そしてこんな俺でも頼ってくれるそんな花咲先輩が恋しくて堪らなかった。
そんなある日、近々行われる体育祭の日に告白しようと決心した。体育祭では開会の挨拶を生徒会長、閉会の挨拶を副会長に任されていたのでその機会を利用して花咲先輩に想いを告げようと考えていた。
花咲先輩は美人で有名でもちろん沢山の人に告白されていたがそのたびに断っていたらしい。こんな俺なんかじゃ釣り合わないかも知れない。でもそんな事は関係ない、だってこんなにもあの人の事が愛おしいのだから。絶対に成功させてやる、そして2度と黒歴史しかないなんて誰にも言わせない。
当時の俺にしてはなかなか大胆な行為に出たなと思うが告白した事に関しては後悔はしていない。だが、のちにこの告白が自分史上1番と言っても過言では無いほどの黒歴史になると当時の俺は思いもしなかった……
そして先輩に告白を決心した運命の体育祭の日を迎えた。
花咲先輩の開幕宣言を終えた後、プログラム通りに様々な種目が開催された。告白する前に先輩に自分の活躍する姿を見せたかったがあまり運動が得意では無い蒼太は種目で活躍する事が出来ない。
100m走ではスタートしてまもなく転んでしまった。
「おい緋山、また黒歴史を生むのかー?」
「くっそ……!」
結局転んで怪我をしてクラスメイトのからかいの声援を受けながらビリでゴールした蒼太はその場を逃げるような形で保健室に向かう羽目となった。
体育祭で全校生徒がいない校舎はとても静かなものだった。まるでいつも賑やかなのが嘘みたいで……
「失礼しまーす……ってなんだ、先生いないのかよ」
保健室にたどり着いて治療してもらおうとしたら誰もいない。仕方なく救護箱を棚から取り出して擦りむいた膝を水で洗って消毒液を染み込ませた消毒綿で手当てする。傷口に消毒液を付ければ傷の痛みと悔しさが滲んでくる。
(くそ、今に見てろよ……絶対に後で見返してやるからな)
そんな事を考えていると廊下の方から足音が聞こえてきた。咄嗟に痛みと悔しさで出た涙を急いで拭う。もしかして保健の先生が戻ってきたのか?
「失礼します。大丈夫?蒼太くん」
「え、は、花咲先輩!?」
保健室に現れたのは今日告白する予定の花咲先輩の姿だった。てっきり先生だと思っていたのでこれは予想外だ。
「さっき、リレーで転んでいたみたいだったから心配してたの」
「え、見てたんですか!?」
「うん、そしたら校舎に戻って行くのが見えたからついて来たってこと」
「マジですか……それだったらめっちゃ恥ずかしいっすね。先輩にカッコ悪いところ見せて」
「そんな事ないよ。これは蒼太くんが一生懸命頑張って走った証。カッコ悪いなんて思わないよ」
「花咲先輩……」
「ほら貸して、手当てするから」
そう言って先輩は俺の傷をそっと手当てしてくれた。先程までの痛みは今はドキドキしすぎてよく分からない。
(やっぱり、俺この人が好きだなぁ……)
絶対成功させよう、改めてそう決断したところで手当てが終わった。
「うん、これで良し!」
「わざわざありがとうございました」
「これで午後からも頑張ってくれたまえよ、副会長くん?」
「は、はい!頑張ります!」
「ふふっ、これだけ元気が有れば大丈夫そうね。私達が卒業した後も生徒会を安心して任せられるわ」
「そんな寂しい事言わないでくださいよ、先輩らしくないですよ?」
「蒼太くん……うん、そうだね!じゃあとりあえずこの体育祭を無事に成功させようか!」
「はい!」
そして午後の種目を終えて閉会式を迎えることとなった。
『閉会の挨拶、生徒会副会長2年1組、緋山蒼太』
「はい!!」
名前を呼ばれて閉会の挨拶をする為に壇上へと向かう。ヤバい、緊張で心臓が飛び出そうだ。
壇上へ上がりマイクのスタンドを自分の高さに調整する。緊張を和らげる為に深呼吸をしていると視界の端に花咲先輩の姿が見えた。
先輩は笑顔で静かにこちらを見ていて目があったことに気がついたのか小さく手を振ってくれている。ここで言わなきゃいつまで経っても先輩と今の関係のままだ。覚悟を決めろ、俺。
『えー、以上を持ちまして体育祭の全ての日程を終了致します。本日は皆さんお疲れ様でした』
ここまでは順調だ。そしてここからが本番。さぁ俺を馬鹿にしてきた奴らを見返す時が来た!
『そして、この場をお借りしてお話したい事があります』
「なんだなんだ?」
「アイツってあんなキャラだったか?」
「緋山くん、一体何を言うつもりなの?」
「また黒歴史を生むんじゃねぇの?」
蒼太の突然の発言に全校生徒がざわつく。
今までの俺だとこんな大勢の目の前で大胆な行為はやらなかっただろう。だけどこんな黒歴史だらけの俺でも変えてくれた人がいた。その人の為なら何でもできると思っていた。
(今に見てろよ、俺を馬鹿にして来た野郎ども)
『3年2組の花咲鈴香先輩!』
「え、私?」
花咲先輩が驚いた表情でこちらを見つめる。そして周りの視線が一気に先輩に集まった。
『先輩、俺はずっと先輩に憧れていました。勉強が出来て、真面目で、皆んなからも人気があって、美人で、そんな先輩に追いつきたくて生徒会で一生懸命頑張ってきました』
「蒼太くん……」
『でも先輩への憧れの思いは日が経つにつれてだんだんと恋心に変わっていきました』
おぉーー!!っと周りから黄色い歓声が上がる。そんな事も気にせず蒼太は真っ直ぐと先輩を見ている。普段は凛としている表情の先輩は動揺しているのかほんのり頬が赤く染まっていた。
ここまで来たんだ、言うなら今しかない。
今日でこんな黒歴史人生とはおさらばだ!
『先輩が生徒会副会長に推薦してくれて、こんな俺でも頼ってくれて、俺はそんな先輩をどんどん好きになっていきました』
「………」
『先輩、貴方の事が好きです。俺と付き合って下さぁぁーーーーい!!!』
マイクを使ったにも関わらずあまりに大声を出したものでハウリングが起こってしまった。だがそんな事は今の蒼太にはまったく気にもしていない。
言った。とうとう言ったぞ。後は先輩の返事を聞いて馬鹿にしてきた奴らを見返すのみ。
ざわついていた生徒達はしん……と静まり返っていた。そんな中、先程まで下を向いていた先輩がゆっくりと口を開けた。
「………さい」
『え?』
「ごめんなさい」
先輩の返事は自分が予想していた返事とは全く別のものだった。馬鹿にしてきた奴全員を見返そうとして告白してまさかの振られたのだ。
『嘘………だろ…………』
蒼太はあまりのショックで壇上で膝を落とす。そして周りからは爆笑の渦が巻き起こった。
「やりやがったなぁ緋山!」
「また新たな黒歴史が誕生したな!」
「会長に生徒全員の前で告白して振られてるのウケるー!」
やめろ、やめてくれ……
先輩の方に視線を向けると気まずそうに先輩は目線を逸らした。そしてその後先生が俺に駆け寄って来て壇上を降ろされ、こうして決意を決めた体育祭は最悪な展開で幕を閉じたのだった。
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どうも初めましての方は初めまして!ヒイロです。この度は「雨が嫌いな普通の少年がもしも雨が好きな学校1の美少女の出会ったら?」に続いて新しい作品を制作しました!
まだまだ初心者ですが初心者なりに頑張っていこうと思います。
不定期で両方とも更新していくつもりなのでこの「黒歴史だらけのこんな俺でも恋する事が出来ますか?」の方もよろしくお願いします!
黒歴史だらけのこんな俺でも恋することが出来ますか? ヒイロ @Repop
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