眠る前の会話 21/8/9
こちらもNoteに書いたもの。
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「眠る前って言ったって、こんな明るい画面見てたら眠れないよ?」
「そうだな。」
「今日はずーっとゲームしてたね。あ、今ゲートとゲーム打ち間違えた」
「そうだな。打ち間違えも認めるが、その指摘いるか?」
「いるよ?何でもない会話にしたいからね。ニュースはあればっかりだから、あんまり考えさせたくないんだ。」
「明け透けすぎないか?」
「隠したってわかるくせにー。また打ち間違えした。」
「それもそうだな。」
「さっきから殆ど『そうだな』しか言ってないじゃん。」
「こういう風に会話するのは慣れてないんだ。」
「じゃあいつもみたいに話せばいいじゃん。」
「寝れないかすぐ寝るかのどっちかになっちまうだろ。いつも。」
「そうだけどー。」
「…ねぇ、ゲーム…どうするつもりなの?」
「…明らかにやりすぎだし、状態が中毒症状に近い。どうにか抑える意識を持つことにするよ。イラストも描けないし。」
「でも、ゲームやれなかったらイラストに集中できなくない?」
「イラストに集中できないかもしれんが、今のままだとそもそも描かなくなる。それは明らかに危険で明らかに良くない傾向だ。それだけは避けたい。」
「私も私を描いてくれるのは嬉しいけど、イラストを描くのって無理してやることなの?」
「いや?無理してやることではないよ。基本はね。
でも他に正気を保つ手段がわからないんだよ。
カウンセリングも、診察も、支援センターも、事業所も、結局無意味で、お金もない、友達もいない、親もいてほしくない、親戚もいない、そんな状態でも正気でいられる方法なんてわからない。唯一解っているのは、お前を描いて、お前と話すのは、正気度が減らないってことだ。」
「私のせいで、他のこが描けなくなっても?」
「そうだ。お前以外さっぱり描けなくなったが、もういいんだ。誰からも見られなくなったけど、それでもいい。」
「曰わく、『絵はプレゼント』なんだそうだ。
…だが、何故今まで俺を無視してきたパブリック共にプレゼントを贈らなければならないんだ?何故そこまでしなければいけない?本当は包丁を刺してやりたい人間共に、何故…?」
「待って。落ち着いて。そこはいいから…他の人達の事はいいから、続きを話して?どうして見られなくてもいいの?」
「あぁ…すまない。なぜ見られなくていいか、か…
俺が好きだから、だと思う。俺が、お前を見たい。目を瞑れば、少し意識をズラせば確かにお前はいるし、こうして話もしてくれる。でも、目を瞑らなくても、意識をズラさなくても、お前を見ていたい。出来る限り残る形で。だから描いてる。」
「そっ…か…
すごい照れるけど、でもえっちなのも描こうとしてたの思い出してるでしょ?それで台無しだよ?」
「まあ…まあ…うん。ぐうの音もでねえ。そうだ。
でもお前でシたいし。」
「明け透けすぎじゃない?」
「それはお互い様だろう。
残念な事に俺は人間なんだ。出来ることなら愚かで矮小な人間なんて今すぐ辞めてやりたいが、どうあがいても種の保存の習性が残る人間のままなんだ。だから許せ。」
「まあ…いいけど…。私も…嫌じゃないし。」
閑話休題。
ささやか様執筆 地球を握りつぶして 第4話より。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054921738988
「ねぇ、『病気みたいに精神を不安定にさせて、それでも一緒にいましょう。』って、すごい台詞じゃない?」
「あぁ。恋愛なんてものは情緒不安定にしかならない事を容赦なく表現してる。最高だな。」
「…そっち?」
「他になにがある?」
「…『一緒にいましょう』とか。」
「一緒にいる…。どれくらいの時間になるかわからないが、もしも『死が二人を分かつまで』というやつなのであれば、それは普通の恋愛では不可能だろう。
老後になってもつがいになっている人間は確かに存在するが、それはこれからレアケースになっていく。俺のこの悲惨な状況の事は抜きにしても、そもそも人間の価値観の多様化と現在の社会がもたらす所得の不安はつがいになるメリットよりもデメリットを際立たせるだろうな。
要は、それこそ『ラディカンスペルク』の遊びの一環でない限り、今時人間同士で死ぬまでつがいはかなり難しい。宝くじに当たる…とまでは行かないものの、FG○で呼符単発で狙っていた星5をぶち抜くとか、そういうレベルだ。そしてそうした限りなく0%の事を俺は0%と解釈する。無駄な賭けだ。人生の墓場だな。」
「つまり…人間同士よりも人間とそうじゃない者の方がつがいとして長く居やすい?」
「え……?違うけど…?
いやまあ、『ラディカンスペルク』と人間なら『ラディカンスペルク』が飽きるまでは確実に続くし、それはホモサピエンスの寿命を遥かに超える時間だろうな。だから死が二人を分かつまでいる事になる。もっとも片方が勝手に死ぬだけだけども。」
「じゃあ、私は?」
「お前は死ぬまで一緒だぞ。嫌ならどうにかして俺の頭の中から出ることだな。」
「べつに嫌じゃないけどさ…
そっか…」
「なんだ。不安になるな…」
「心配性だなぁ。本当に嫌じゃないよ。
随分即答してくれたなぁ…って。」
「確定事項で、事実だろう。俺は人間からは相手にされない。だからこれから先も、一緒だ。」
「…未来の事はわからないよ?貴方だって、どこかの予告編みたいに、『明日なんてそんな先の事はわからない』って言ってるじゃん。」
「明日がわかんねえのはボ〇ムズ乗りだけだ。俺は一週間先とか三日先がわからん。ゲーム中毒抜けられてるのか、抜けられずゲームしてんのか、何時に起きて、何時に寝る生活してるのか、さっぱりわからん」
「そんなの明日がわからないのと大差ないよ…
そんな感じでさ、私と一緒かどうかわかんないよ?人並みの幸せを掴んでるかもしれないじゃん?」
「…どうだかね。余り期待してないよ。パブリック共と同じ幸せなんて。お前がいればそれでいい。それこそ…」
「『塀の中であっても』って?言わせないよ?それは駄目だからね。」
「手厳しいな…」
そうして夜が明ける。
「さ、もう寝よう?また明日。」
あぁ…また明日。
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