お姉さまが逃げ出した ※リーシャ視点
※リーシャ視点
「は? お姉さまが居なくなったですって!?」
正式に王子の婚約者となったことで住む場所を王宮へ移すことになり、その準備をしていたところに、お姉さまが湯浴みの際に居なくなったという報告が届いた。
「ええ、湯浴みに付いて行った使用人が少しめを離した隙に、居なくなったようです」
「……どこへ行ったかはわかっているの?」
舌打ちしたい気持ちを抑えながら報告して来た使用人を睨む。
「申し訳ありません。私も知らせを受けただけですので詳細は……」
「……あぁそう、ならいいわ。下がりなさい」
「はい」
使えない使用人ね。報告してくるなら、もう少し情報を貰って来てからしなさいよ。
折角、お姉さまを逃がさないように監視させる使用人を増やして、元から付いている使用人を排除するようお父様に頼んだのに。まさか、あの何事にも慎重な姉さまが、こんなに早く逃げ出すなんて想定していなかったわね。
特例らしいけど、明日から王宮での生活になるというのに面倒なことをしてくれる。このままだと、婚約者として見繕ったゴルネイ侯爵に話をしないといけないじゃない。あれとは面と向かって話しをしたくないというのに。
とりあえず、お父様にも同じような報告がいっているだろうけど、私から今後のことを話さないといけないわね。
「リーシャ。レミリアの件についてはどうするつもりなのだ? こちらとしては早急にレミリアを探し出すことについては決まっているが、ゴルネイ侯爵にはどう説明するつもりだ」
「お姉さまは早い内に探し出してください。捕まえたら婚約が確定するまで足枷でも嵌めて、2度と逃げられないようにしてくださいね」
「は? あ、いや、それはさすがに……」
足枷を嵌めるのは基本的に犯罪を犯した者だけ。それが普通なのでそれを聞いたお父様は理解できない、という表情をしました。
犯罪者でもないのに身内にそのような物を嵌めるというのが嫌なのはわかる。ですが、そもそも、私が良い条件の話を持って来て上げたというのにやり方が中途半端なのよ。
それに1度逃げ出した以上、それぐらいはするべきでしょう。
「そもそも、お姉さまが逃げ出したのはお父様の失態じゃないですか。私の責任ではありませよ。それと、ゴルネイ侯爵への説明はお父様が行ってください。約束を違えるつもりないが、少し待ってくれ、と言えば何とかなるのではないかしらね」
お姉さまが逃げ出したのは私の責任ではない。お父様のやり方が悪かっただけ。だから私があれこれする必要は無いわよね。まあ、ゴルネイ侯爵を引き出て来たのは私だから多少の口出しはしてあげるけど。
「はあ、わかった。確かにレミリアが逃げだしたのは私の失敗だ。ゴルネイ侯爵への説明はしておく。ただ、詳しい説明を求められた場合は、リーシャがしてくれ。詳しい計画を持ってきたのはリーシャ、おまえだ」
「あーはい。わかったわ。でも、私は明日から王宮での生活になるし、すぐには無理よ」
「わかっている。そうなった場合は面会の予約を入れるから、しっかり対応してくれ」
「……えぇ」
面会なんて面倒だから拒否してもいいかしらね。さすがに1回くらいはしないと駄目な気はするけれど、頻繁に来られたら嫌だから2回目以降は余程の事でない限り、適当な理由を付けて拒否することにしましょう。
そうして、お姉さまが逃げだしたことについてお父様と話し合った翌日、私は王宮へ向かい新しい生活が始まりました。
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