さて、どうしましょう
グリー第2王子とリーシャの婚約が発表された。
私はその場には居なかったのだけれど、報告を聞く限り恙なくその場は終わったようですね。
グリー王子が手を出した関係者がその場に見受けられたらしいのだけど、特に反発はなかったようだ。ただ、はやりと言うか水面下では色々と問題が起きているとは聞いています。
リーシャも王子と婚約した以上、それに関わることになるとは思うけれど、どうなるのでしょう? まあ、もう私には関係ない事ですから、どうなろうと良いのですけれど。
そして、予想通りと言うか、グリー第2王子の婚約者が直前で変わったことについては、全面的に私の所為になったようです。
元の婚約者は、第2王子と婚約を予定していたにも拘らず、他の男と閨をともにし、不貞を働いたため、王族の婚約者としては不適格として、その妹であるリーシャが急遽婚約者になる事になった。らしい。
完全に嘘の内容によって、私は婚約者から落とされたことになったようですね。何処までこの話を信じる人が居るかはわからないですけれど、そもそもこの話は、この話は全てグリー第2王子に関する話しです。
5年も仮の婚約者をしていたので、グリー第2王子と他の女性が閨を共にしていると思われる場面に遭遇したことも在りますし、おそらくだけど、子が出来ていても認知はしていない可能性もあると思います。
それぐらいに人目を憚らず女遊びをしていた人物なのです。おそらく婚約者が変わった理由は第2王子にあるのでは、と思う貴族の人たちもそれなりにいるのではないでしょうか。まあ、どちらにしろ、本当の理由は違うのですけれど。
朝食を食べた後、暫く考え事をすると使用人に伝えて自分の部屋に引きこもっていた私は、外の景色を見ながら考える。
リーシャと第2王子の婚約が正式に発表された以上、世間に流された情報の事実がどうあれ、このままでは私の将来は暗い。
世間があの理由を信じる、信じないに関わらず、王子の婚約者を外されたことで私の進退はほぼ決まってしまっています。
このまま何もしなければ、婚姻を結ぶこと無く独り身で過ごし続けるか、嫁ぎ先で嫌な目に遭い続けながら生きていくかです。良い嫁ぎ先に当たる可能性も無い訳ではありませんけど、余程の事がない限り在り得ないでしょう。
まあ、他家との繋がりを強く欲しているお父様が居る限り、私がこのまま独り身で過ごすことはあり得ないです。受け入れ先がある限り、どこかに嫁がされるのは確実なので。
それを回避するには、どこかに嫁がされるよりも前に自ら嫁ぎ先を見つけるか、さっさと逃げださなければならないのです。
さすがに、逃げ出すのは貴族の家で育った私には無理でしょう。行く先もないし、あったとしても現在の状況で受け入れてくれるかどうかも怪しい。
一応、特技と言えるものはあるけれど、普通の生活をしている中ではそう使わないので、王族以外にはあまり知られていないのですよね。凄いとは言われていたけれど、比べる相手もいなかったからどれほど凄いのかもわからないし、お世辞の可能性も十分あり得ます。
まあ、その特技があったから王族の婚約者として選ばれていたところもあったのだけど、リーシャも一応使えるので、それで変えても問題はないとされたのだと思います。
ん? ああ、朝に送った手紙の返信が届いたみたいね。
窓辺に留まった小鳥の脚をみて、私は一縷の望みがつながったことを実感し安堵した。
窓に近付き、そこに居る鳥を優しく手元に移動させる。そして鳥の脚に括り付けられていた物を取ると、その鳥が最初からいなかったかのように虚空に消えていきました。
今、消えていった鳥は魔法によって作られた伝書鳥というもの。
魔法自体使える人が少ないから知らない人も多いけれど、魔法を使える人にとっては割と一般的な魔法ですね。まあ、大抵は鷹などの強くて移動速度の速い鳥をモチーフにするので、小鳥の形を取っている伝書鳥は珍しいと思いますけれど。
伝書鳥の脚に括り付けられていた物を広げる。
小鳥サイズの伝書鳥の脚に括り付けられていた物なので、広げてもそれほど大きな紙ではないですね。それでも、私が今朝送った手紙の返事としては十分な内容が書かれていて、読んだ限り私への返事としては色よい物だったので、私は胸を撫でおろしました。
私が手紙を送った相手は隣国、アレンシア王国で生活している幼なじみ。辺境伯の子息であり、辺境伯軍の副隊長をしているらしい人物。
最後に直接会ったのは5年以上前だけど、少し前まで年に数回は連絡を取っていたので、ある程度の近況は互いに把握しています。
まあ、辺境伯軍の副隊長になったことについては、手紙でのやり取りだけで直接確認した訳じゃないので、本当かどうかはわからないのですけどね。私に嘘を吐く理由がないので本当の事でしょうけど、確認のしようがないので『らしい』なのです。
アレンシア王国は、5年前に亡くなったお母さまの出身国です。その関係でアレンシア王国の辺境伯に繋がりがある、という訳です。
お母さまは結婚する前まで辺境伯軍に従事していたらしく、それにより辺境伯の令息である幼なじみと出会ったという訳です。
妹であるリーシャは当時、遠出をすることを拒んだため、幼なじみとの直接な面識はありません。送られてくる手紙を読んだことがあるので、存在は知っている程度ですかね。
とりあえず、これで隣国への伝手に連絡がついたので、先の不安は多少改善しましたね。
後は、この屋敷を出るタイミングですが、お父さまや使用人たちは、私が屋敷から逃げ出すことを想定しているとは思えませんし、何とかなるでしょう。
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