第6話 カイトが行く
俺の持っているクリスタルでハンターを仲間にできることが解った。
ハンターに追われている女を助けたら、なんと――王族のルエラ姫。
お姫様と一緒に彼女の姉を探すことになりそうだが、俺のこの力があれば、もっとデカいことができる。
その前に森でキャンプしている連中をぶっ潰して、俺の幼馴染たちを助ける。
どうやら、あそこにいる黒装束の連中も、王族に関係しているようだ。
ドラゴンたちに乗って、お姫様と一緒にキャンプ地に向かう。
「なあ、ディーネ。ここに来る途中で古代遺跡を見かけたんだ。やっぱりラウル古代遺跡と関係あるのか?」
「主殿は勘違いしているようじゃな」
「勘違い?」
「うむ、禁断の森にはあちこちに古代遺跡があるが、それらは全てラウル古代遺跡で、中で繋がっておる」
「そうなのか」
「ワシとフィーネはラウル古代遺跡の番人じゃ」
「森にいる魔物もそうなんだろ?」
「そのとおりじゃ。少々暴走しておかしくなっておるがの」
そいつを俺が持っているクリスタルで、まともにできるってことだ。
「――ということは、やはり爺さんはラウル古代遺跡の最深部で、このオーヴを採取したのか」
爺さんは、このオーヴに不思議な力があると、知っていたのだろうか?
それを知っている連中がいれば、オーヴを狙ってきてもおかしくはねぇ。
「なあ、お姫様! 野営地でキャンプを張ってる連中は何しに禁断の森に来たんだ? あんたは知ってるんだろ?」
「……」
彼女は俺の問にうろたえている。
「その顔は知ってる顔だ!」
「か、神の塔……」
「神の塔?!」「神の塔じゃと?!」
お姫様の言葉に、2頭のドラゴンが反応した。
「神の塔って?! そりゃなんだ?!」
驚いたディーネに俺は振り落とされそうになった。
「塔の頂上の祭壇に古代王の力が封印されておる」
「それじゃ、そいつを俺がもらっちまえば、この大陸を支配できるかもしれないってことか」
「そのとおりじゃ」
「ははは! こいつは――やっぱり俺にもツキが回ってきたということか」
俺の言葉を聞いたお姫様が、フィーネの上で大声を出した。
「そんな力は、人に扱えるものではありませぬ!」
「なんだ、お姫様は俺の考えに反対か?」
「当たり前です!」
「そりゃ、俺が支配者になったら、王侯貴族なんてものは意味がなくなるからなぁ」
「私は、そのようなつもりでは……」
「はは、心配するな。俺と一緒にいれば、王族の血はつながるぞ?」
「誰が、そなたのような男と!」
「ははは!」
お姫様の姉貴もどこかにいるらしいが、そいつも探せばいい。
とりあえず王族が2人いれば十分だろう。
話している間に、キャンプに到着した。
翼竜のハンターたちが、空から急襲をかける。
黒装束たちは、対空兵器をもっていないらしく、上からの攻撃に脆弱だ。
たまに軽機の音が聞こえるが、そんなものじゃ大型のハンターは壊せねぇ。
敵が混乱している間に、地上部隊からも攻撃が始まった。
俺が手懐けた狼型のハンターである。
次々と黒装束に食いつき仕留めていく。
「いいぞ! ディーネ! あのテントだ! めくってくれ」
俺のビジョンで見たテントを指差した。
白いドラゴンがテントをめくると、中から牢に入った2人の幼馴染が現れた。
「よう! ふたりとも無事だったか?」
「カイトなのか?!」「カイト?!」
「ディーネ、牢を壊してやってくれ」
「承知した」
彼女が鋭い爪を立てると、簡単に牢が破壊された。
「カイト! そ、それはドラゴンか?!」「そうよ! いったいなんなの?!」
「こいつらは俺の仲間だ。敵もあらかた片付けたから、お前らなら森から脱出できるだろう」
俺は、残された車を指差した。
「お前はどうする?!」
「俺か? 俺には、やることができたからな。お前らとは、袂を分かつことになる」
「なにを言ってるんだ?!」
「まぁ、解らんでもいいさ」
「カイト!」
「それじゃな! 2人とも元気でやれよ! ミサ、応援してるぞ!」
俺はネロを指した。
「バカぁ!」
「ははは」
白いドラゴンが、幼馴染を置いて宙に舞い上がる。
「主殿、これからどうするのじゃ?」
「う~ん、とりあえず俺が世話になった騎士団に挨拶だな」
「なるほど、立つ鳥跡を濁さずというやつじゃな」
「そのとおり」
地上のハンターは移動に時間がかかるので待機させて、空中部隊だけで王都に向かう。
途中、寄ってきた翼竜ハンターを共食いさせて、また強化させた。
どうやら、ハンターは俺のクリスタルに寄ってきているようだ。
どうりで、俺ばかりが攻撃されると思ったぜ。
白黒のドラゴン2頭と、強化型翼竜ハンター6頭で、騎士団を強襲した。
ハンターの背中から発射された武器が、騎士団の施設を破壊する。
黒い煙が上がり、長い歴史を持つ建物が木っ端微塵になった。
「ははは! こいつはいいぜ!」
「主殿、立つ鳥跡を濁さずではないのかの?」
「だから綺麗にしてやるんだよ! 綺麗サッパリと更地にしてな!」
突然の空からの急襲に、騎士団の連中も逃げ回っている。
元々、大した実力もなく、身分とコネで集まってきた連中ばかりだ、なにもできやしねぇ。
ディーネとフィーネが、広場に着地した。
「ディーネ、ドラゴンってぐらいだから、火炎は吹けないのか?」
「吹けるに決まっておる!」
「よし、やれ! フィーネもだ!」
「承知いたしました」
「焼き払え!」
2頭のドラゴンの口から、火炎が発射されて辺りを焼き払う。
轟々と燃え盛る炎の中から赤い制服を着た騎士団が集まってきた。
それぞれが銃を撃っているが、そんなものがドラゴンやハンターに効くはずがない。
その騎士団の先頭に、長い金髪の男がいる。
「よお~、アズダン伯爵公子、久しぶりだな!」
「なに?! 貴様! カイトか?! いったいどういうつもりだ!?」
「どうもこうも、この腐った騎士団を綺麗にしてやるんだよ。てめぇにもたっぷりと礼をしてやるぜ!」
「なんだとぉ!?」
やつが俺に向けて銃を発射してくるのだが、そんなものが当たるはずがない。
「ディーネ! やつを踏み潰せ!」
「個人的な恨みがすぎるのではないかぇ?」
「俺の新しい生活が始まるんだ、ゴミは片付けておきたいだろ?」
「やれやれ」
ディーネが白い足を持ち上げると、男を踏み潰した。
「ぎゃぁぁ!」
「「アズダン様ぁ!」」
「ははは、ハンターども! その取り巻き連中も、蜂の巣にしろ!」
翼竜の背中から、武器が発射されて公子の金魚のフンどもを肉塊に変えた。
「いいぞ! ははは!」
「こ、このような恐ろしいことをするなんて! 私は降ります! 降ろしなさい!」
王女殿下が、フィーネから飛び降りようとしている。
「おっと、ディーネ! お姫様を逃がすなよ」
「こんな小娘、ワシがいれば十分だろうに」
「お前は人間とガキを作れるのか?」
「それは無理じゃ」
「なら、人間の相手が必要になるだろ?」
「仕方ない」
ディーネが手を伸ばすと、フィーネの背中でジタバタしていたお姫様を捕まえた。
「離して! 離しなさい!」
彼女が白いドラゴンの手をペチペチと叩いているが、そんなことをしても無駄だ。
「よし」
あとで、お姫様の姉貴を探すとしても、新しい生活を始めるには女が少々足りねぇな。
ドラゴンの上から辺りを見回していると、炎から逃げ回っている金髪を見つけた。
「きゃぁぁっ」
「フィーネ! あの金髪の女を捕まえろ」
「承知いたしました」
黒いドラゴンが手を伸ばすと、金髪を捕まえた。
こいつは大した実力もないのに、家柄だけで騎士団に入ってきた公爵令嬢だ。
「なに?! なんなのぉ!? 黒いドラゴン?!」
「ははは! ブリュンヒルデ、いい恰好だな」
「貴様は、カイト?! この私に、こんなことをしてただで済むと思っているのか?!」
「ああ、ただで済むってこういうことか? フィーネ、ちょっと振り回してやれ!」
「はい」
黒いドラゴンが公爵令嬢を手にもって振り回した。
「ぎゃぁぁ! ぐぇ! げぇぇ!」
ブンブンと振られた金髪は、ヘドを吐いてすぐにおとなしくなった。
こいつは性格は最悪だが、身体は抜群だからな。
なにかと使えるぞ?
「さて、1匹確保したから、もう1匹ぐらいは欲しいところだな……そうだ!」
俺は心当たりを思い出し、ディーネに建物の玄関を破壊させた。
そこには受け付けがある。
「きゃぁぁ!」「ぐあぁ!」
逃げ惑い、瓦礫の下敷きになった騎士団職員の中に俺の目当てを見つけた。
「ディーネ、あの女を捕まえろ」
「まだ、捕らえるのかぇ?」
「これで最後だ」
白いドラゴンが手を伸ばすと、黒髪をアップにした、メガネの女を捕まえた。
「きゃぁぁ!」
こいつも男爵家の令嬢とか言ってたな。
事あることに、俺を馬鹿にしやがって。
一握りの貴族の子息連中が、平民あがりの騎士をこき使う――ここにいる連中は、そんなやつらばかりだ。
「よし、こんなもんだろう」
2頭のドラゴンが空に舞い上がると、道を戦車が走ってくるのが見えた。
ここらへんが潮時だろう。
「ハンターども! 最後の置き土産を、あの戦車に打ち込んでやれ!」
翼竜の背中から発射された武器で、戦車が次々と吹き飛んだ。
戦車は上からの攻撃に弱いからな。
「ははは! いい気味だ! これからの俺の新しい生活を祝福する、ちょいと汚い花火ってところか」
「主殿、終わったのかぇ?」
「ああ、行くぞ!」
俺たちは、燃え盛る街をあとに森に向かって飛び立った。
目的地は神の塔。
古代王国を復活させる新しい戦いにカイトが行く!
END
某ゾット帝国ナントカが行く! @OXSIDE
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