高牧鉄道の夜はいつ明ける

ふみ乃や 文屋

序.最終電車はどこへ行くか

 世の中は理不尽だ。だがそんなのは当たり前だ。何が、などと言っても仕方がないではないか。次へ向かっていくしかない。生きてさえいればなんとかなる。信じるのだ。

「まもなく1番のりばから、高牧(たかまき)線最終、急行沢城ゆき発車します。はい、1番線車掌ドア閉めてください」

 そうか、この電車は最終電車なのか……いや、そうじゃない! と、あわてて降りようとした時には遅く、ドアは閉じられた。

「本日も、高牧鉄道をご利用いただき、ありがとうございます。この電車は、高牧線方面最終、急行の沢城(さわしろ)止まりです。東方(ひがしかた)より先、参りません。沢城止まりです。次の停車駅は、古高(ふるたか)です」

 

 車輪とレールがこすれる音が響く。

「まもなく、沢城、沢城です。これより先に参りません。この電車の終点です。お忘れ物に、ご注意ください。本日も、高牧鉄道をご利用いただき、ありがとうございました」

 車両は程なく駅のホームに入る。ドアが開くと空気が冷たい。ホームを見回すと下車客は他に数人。到着ホームの看板には「1」とある。反対側は「2」だ。いやいや……早く駅から出なければ。

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