第16話 再恋

 渡り鳥がワンシーズンだけ気まぐれの恋をするように、僕も時々恋をした。そして、毎回別れを告げられるのは僕の方だった。そんな話もマスターとエリさんに笑い飛ばしてもらえれば、どうってことのない話だ。


「また、キャンプしようか。」エリさんがカップを洗いながら僕に言う。

「いいキャンプ場見つけたから、今回は僕が幹事でもいいですか?」そんな話になると、テーブル席から「裕太、日にち決まったら連絡ちょうだい。」と声がかかる。


「了解。じゃあ、また来るね。」カランコロン。店を出ると、さっきまでカウンターで本を読んでいた女の子が追いかけて来た。座っていると気付かないけれど、すごく小柄な子だ。よく見かけるが、話した事がない。


「あの・・・。」消え入りそうな声。目を合わせると一瞬下を向く。

「一緒に食事に行きませんか?裕太さんとお話がしたいんです。友達になりたいんです。」


 20センチの身長差。僕は少しだけかがんで、「今度、この店の常連さんとキャンプをするけど、一緒に来る?」と聞いてみた。途端に顔が曇る。「冬なら大丈夫なんですけど、今の季節は虫が苦手で。」「そうか、じゃあご飯食べに行こう。また連絡ちょうだい。」携帯番号とLINE IDを書いたメモを渡すと、一瞬ホッとしたような表情を浮かべ、ニッコリほほ笑んで店に戻って行った。口元から八重歯がのぞく。今回はいつもとはちょっと違う展開になりそうだ。


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コロナ渦の失恋 穂高 萌黄 @moegihodaka

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