第48話 これから
会議室に入ると、室内には第十一大隊のメンバーをはじめ、第六大隊の隊長達が顔を連ねていた。
「全員揃ったな」
俺の顔を見るなり
待たせてしまった後ろめたさから、俺は背中を丸め、そそくさと空いた席へと座る。
「それでは始めようか」
全員が着席したのを確認すると、
「みんなも知っての通り先日、市川という男によってこの駐屯地は壊滅的なダメージを負った。まずその事について情報共有したいと思う。梶原中隊長」
「はい」
櫛引大隊長に説明を促され、梶原中隊長は椅子から立ち上がり説明を始める。
「今回、我が駐屯地は輸送機、車両、物資、弾薬、それに多数の負傷者を出すなど甚大な被害を被りました」
梶原中隊長はこの場にいる全員に被害状況を説明する。
「爆発現場からは、爆破系の術式を込めた霊符の破片が落ちていました」
そう言うと梶原中隊長は、霊符の破片が入ったビニール袋を机の上に置いた。
「ひょっとして、その霊符って……」
俺が確認するように聞くと、梶原中隊長は肯定するように頷いた。
「おそらく綱島駐屯地から横流しされたものでしょうね。と言っても使われたのはその内の一部でしょうが」
やはりそうか、という事は
結局、市川を取り逃してしまったため背後にいる組織の事は掴む事は出来なかった訳だが。
「そういや男鹿、お前達がここに来たのは横流しされた霊符の調査目的だったそうだな。まったく、言えば協力したのに」
櫛引大隊長は男鹿大隊長へ文句を漏らした。旧知の仲だというのに何の相談もなかった事に不満だったようだ。
「言ったら潜入捜査にならねえだろ。お前も容疑者候補だったんだから」
「信用ないな、悲しいよ俺は」
櫛引大隊長は少し拗ねたようにそう言った。
そんな二人のやり取りを遮るように、梶原中隊長が口を挟む。
「話を進めても宜しいですか?」
「ああ、すまん続けてくれ」
やや気まずそうに櫛引大隊長がそう言うと、梶原中隊長は話を続けると。。
「今回の件は入念に仕組まれたもので、目的は第一空挺団の無力化でしょう。実際、第一空挺団は翼をもがれた鳥のような状態です。おそらく敵は近々大規模な攻撃を仕掛けてくるんじゃないか、というのが上層部の見解です」
訓練校の襲撃といい明らかに計画的な犯行、しかもこのタイミングでこちら側の機動力を削いだという事は、敵側が何か大規模な攻勢を仕掛けてくるというのは十分あり得そうだ。
「そういうわけで、第十一霊能大隊も首相官邸の警備に回れとのお
今後の事について櫛引大隊長の口からそう告げられた。
しかし、その話を聞いた男鹿大隊長は不満げな様子だった。
「敵の拠点を叩いた方が早いんじゃないか?」
「それが出来れば苦労しないさ。それに、仮に拠点が分かっていてもお前達は作戦に参加出来ないかもしれないけどな」
「何だそりゃ、どういう意味だよ」
意味深な櫛引大隊長の言葉に男鹿大隊長は眉根を寄せる。
「まあ、向こうに行けばわかるさ」
その後、会議は滞りなく進み閉会となった。
含みのある櫛引大隊長の言葉に引っかかりを覚えながらも俺たちは東京へと向かう事となった。
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