第23話 証拠探し

「監視カメラの映像を調べるって、映像記録は半年分あるんだぞ」


 立華りっかの発言に俺は不満の声を上げる。


「お前も見ただろ? あの妹尾せのおの自信満々な態度。おそらく監視カメラを調べられても何の証拠も出ないと確信してるんだ」


「だからこそじゃないか。ヤツのあの自信満々な鼻っ柱をへし折ってやりたいんだよ」


「それで何も得られなかったら時間の無駄だろ。だいたい査問会までに映像記録を全部確認するなんて無理だ」


 半年分といったら単純計算しても4320時間だ。とてもじゃないが四日で確認出来る量ではない。だが立華はその考えを否定した。


「いいや無理じゃないね。昨今の防犯カメラは動体検知機能が付いてる。半年分の映像記録といっても、そこまで膨大な記録量ではないはずだよ」


 動体検知機能とは、人などの動きを検知した時のみ録画を行う機能の事だ。常時録画してるわけではない為、内容の確認が簡単に行えるわけだ。


「……なるほど、確かにそれならいけそうだな。よしわかった、それじゃあ入出庫の記録とも照らし合わせて確認しよう。それから他の職員が在庫データにアクセスした記録も欲しいな」


 俺は大隊長たちに相談し、各種データを集めてもらうようお願いした。


 揃えてもらったデータの中から、まずは出納記録を探し出し確認する事にした。


 記録を見て、霊符の入出庫は月に数える程度しかないという事がわかった。これなら監視カメラの映像記録も、確認にそう時間はかからなそうだ。


「監視カメラの映像記録の方は私がやっておくよ」


 立華がそう言うので、映像記録の方は彼女に任せて俺は在庫データへのアクセスログを確認する事にした。


 まず俺は過去半年間のアクセスログを、アクセス回数や時間帯でグラフ化した。 


 他の職員の同グラフと比較して見て、まず思ったのが紫音しのんだけ極端にアクセス回数が多いと言う事だった。


「確かにこれだけ見ると怪しいと思われるな」


 俺から見てもそう思うんだ、他の人間が見たら容疑者だと言われても疑わないだろう。


「でも紫音ちゃんは霊符を書いて納品してるんだし、在庫データにアクセスしててもおかしくないと思うんすけど?」


 小嶺の疑問に朝日奈中隊長が答える。


「いや、在庫データにアクセスするにはパスワードが必要になる。パスワードは管理局以外の人間以外は知らないはずだ」


「なるほど、はたから見たら怪しさ満点だわな。だが如月本人は否定してるんだろ?」


 男鹿大隊長の言葉に、朝日奈中隊長は頷きながら答える。


「はい、取り調べの場ではアクセスした覚えはないと主張していたそうです」


「なら、やっぱりこのアクセスログは捏造された物って事ですかね」


「ああ、だが問題はどうやってそれを証明するかだな」


 結局行き着くのはそこだ。いくら無実を叫んだところでソレを証明出来なければ意味がない。


 頭を抱えながらも資料と睨めっこすること数時間、映像記録を確認していた立華が天井を仰ぎ「ふぅ」と息を吐く。


「見終わったよ」


「何かわかったか?」


 俺は微かな期待を込めて立華に聞いた。


「残念ながら霊符を盗んでいる映像はみつけられなかった。だが一つ分かったことがある」


「分かったこと?」


「ああ、映像記録を見る限り紫音は保管倉庫に一度も訪れていないって事だよ」


「って事は紫音ちゃんは霊符盗んだ犯人じゃないって事っすよね?」


「……いや、これだけで無実を主張するには弱いな。立華、何か他に変わった事はないか?」


「映像じゃなくて、入出庫の記録で気になる点があるかな」


 立華は入出庫記録を出し、入庫欄を指さした。


「ここ、入庫に500って記載されてるだろ?よく見ると毎月同じ数が入庫されてる」


「それがどうした? 別に入庫ぐらいあってもおかしくないだろ」


「入庫自体は別におかしな事はないさ。ただ入庫数が気になってね」


「どう言う事だ?」


「煉、君も見ただろ?プレハブ小屋にあった膨大な量の霊符を」


「ああ……」


「あんなに膨大な量の霊符があるにも関わらず、どうしてたった500枚だけ入庫したのか気になってね」


 確かに言われてみれば妙だ。映像を見る限り保管倉庫には余裕があるにも関わらずだ。


「この入庫された霊符がどこから持ってきた物か調べてもらえませんか」


 今はどんな些細なものでも調べるべきだと判断した俺は、隊長たちに霊符が入庫された経緯を調べてもらうよう言うと、朝日奈中隊長が「わかった」と小さく頷いた。


「ん? ……あれ?」


 アクセスログを眺めていた小嶺が首を傾げ

た。


「あん? どうした小嶺?」


 男鹿大隊長の問いかけに、小嶺は返事もせず何やら自分の携帯を開いて何かを確認し始める。


「……やっぱり。これ見てください!」


 小嶺は携帯に保存されてる写真と、アクセスログを皆に見せる。


「……これは?」


 画像を驚く俺の横で、男鹿大隊長が歯を剥き出しにして笑う。


「でかしたぞ小嶺」

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