第17話 第十一霊能大隊
俺は第十一霊能大隊に配属される事となったのだが、大隊長から入隊式前に顔合わせがしたいと言われた為、執務室へと向かっている最中だ。
「大隊長ってどんな人だろう?隊長っていうくらいだから、
俺が期待と不安を胸に抱いているのとは対照的に、
執務室の前まで来た俺は、大きく一度深呼吸をしてから身だしなみを整え、ドアをノックする。
「第十一霊能大隊に配属されました
緊張していたが何とか噛まずに名乗る事ができた俺は、その場に直立不動のまま待つ。
ガチャリ。と部屋のドアが中から開けられた。
「よく来たな久坂三級奏霊士。入れ」
部屋の中から出迎えたのは、切れ長の目をした長身の女性だった。女性でありながら威厳のある佇まい、この人がこの隊の大隊長だろうか?俺は促されるように部屋へと入る。
ちなみに三級奏霊士とは奏霊士の中では一番下の位であり、その上は準二級、二級、準一級、一級、上級、準特級、特級と続く。
部屋の奥は机がいくつも並べられていて、その一つに
小嶺はこちらに気付いて小さく手を振ると、椅子から立ち上がり、部屋の奥のソファーで寝転がっている男のもとへと歩いて行く。
「大隊長、煉くん来ましたよ。起きてください」
小嶺は手に持っているペンの尻で寝ている男の頬をつついて起こそうとする。どうやら出迎えてくれた女性は大隊長ではなく、ソファーで寝ている男の方が大隊長らしい。
「うぅ〜頭いてぇ。二日酔いだ」
男はソファーから起き上がり、眠気まなこで頭を抑えながら気怠そうにそう呟く。
「またですか、大隊長」
俺の前に立つ長身の女性がため息をつく。
「付き合いだから仕方ないだろ。これも仕事だ」
「酒飲んで徹マンするのが仕事っすか?」
大隊長と呼ばれる男の言葉に、小嶺が横からちゃちゃを入れる。
「まさかとは思うが、このオッサンが大隊長なのかい?」
初対面の人間に対して失礼な立華の発言に対し、男は、むっとする。
「オッサンじゃない。俺はまだ35のお兄さんだ」
立華にオッサン呼ばわりされたのが不服だったのか、男は抗議の声を上げる。
「いやいや、あたしから見たら大隊長オッサンすよ」
「うるせー! 余裕こいてられるのも今のうちだぞ。いっとくけど20代なんてあっという間だからな」
小嶺の指摘に対して子供のように反論するその姿は、失礼だが大隊を預かる隊長の威厳は感じられない。
「大隊長、そろそろ本題に入りたいんですが……」
このまま放っておくと脱線したまま戻ってこないと判断したのか、長身の女性が話を戻すよう促す。
「おっと、すまんな」
男は、女性に注意されるとソファーから立ち上がり自己紹介をする。
「第十一霊能大隊隊長、
「副官の
「あたしの事はもう知ってるから今更っすけど、
全員の挨拶が終わったのを確認すると、俺は背筋を伸ばし敬礼し、改めて自己紹介をする。
「本日よりお世話になります、久坂煉です。よろしくお願いします」
「立華だ。知ってると思うが煉の聖霊刃だ。よろしく頼むよ」
緊張している俺とは裏腹に、立華はいつものように不遜な態度で名乗る。
「君が立華か。なるほど、こうして見るとホントに人間みたいだな」
そう言いながら、男鹿大隊長は舐め回すように立華の体を観察している。
「あまりジロジロ見ないでもらえるかな?セクハラで訴えるよ」
「おいおい、それは勘弁してくれ」
立華の脅しに焦った男鹿大隊長は、即座に後ろへと下がり立華と距離を取った。
「まあそんなわけで俺たち五人、チーム一丸となってがんばろうじゃないか」
「あ、あの……」
「どうした久坂?」
「今、五人って言いましたよね?まさかこの大隊って俺と立華を含めて五人しかいないって事ですか!?」
あまりの衝撃的な事実に、俺はつい声を荒げてしまった。
「それは違うな」
それまで黙って成り行きを見ていた副官の朝日奈中隊長が口を開いた。
「五人というのは間違いだ久坂。大隊長、数は正確に伝えなければ誤解を招きます」
朝日奈中隊長は、男鹿大隊長に対して訂正を求めた。そうか、やはり何かの間違いだったのかと俺は胸を撫で下ろした。
「立華は聖霊刃ですから数に含めるのは間違いかと、正確には第十一霊能大隊のメンバーは四人です」
いや、訂正ってそっち?俺は一瞬フリーズしてしまいツッコム事すら出来なかった。そんな俺の様子を見て男鹿大隊長が口を開く。
「相馬から聞いてないのか?うちは出来て一年経ってない急造の新部隊だ。大隊とは名ばかりで実際には小隊規模にすらなってない」
「まあ、少数精鋭って事っすね」
ガハハと豪快に笑う男鹿大隊長の隣で、小嶺もニャハハと楽しげに笑っている。
「笑い事じゃないですよ。いい加減隊員を揃えてください」
朝日奈中隊長に
「そうだな。そこでだ久坂、お前に初任務を与える」
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