少女たちが突如として集団失踪し、その4分の1のみが帰ってくる。彼女たちはどうやら、特殊能力を付与され「魔法少女」となったうえで、凄惨なゲームに巻き込まれていた、らしい。
らしい、と記したのは、この作品がその内実を描くものではないからです。「AFTER」とタイトルに冠してあるとおり、あくまで生還した元プレイヤーたちのその後の生に焦点が当てられている点が、まずユニークだと言うことができるでしょう。
消えることのない罪悪感。周囲の困惑や苦悩、あるいは噂話の気配。彼女らをバックアップする組織の存在。同じ運命に見舞われた者たちのネットワーク。こうして取り上げていくと、元魔法少女たちは退役軍人に近い存在のように見えなくもありません。帰還兵のPTSDを扱った作品のいくつかに似た手触りも、この作品にはあるように思います。
そのうえで特徴的なのは、元魔法少女たちには「誰かのせいにする」という選択肢が存在しないことでしょう。命令だった、仲間を守るためだった、いかれた奴にいかれたゲームを仕組まれた……そういった、責任を求めることのできる外部の存在が、この作品には登場しないからです。
残酷なゲームの主催者も、観客もいない。ただ不幸な災害としてのみ、「他人を殺さなければ生き残れない」という極限状況が発生し、巻き込まれた者たちは自らの意思で行動するほかない。そこには罪も罰もなく、ただ「起きてしまった、もう取り返しがつかない」という事実のみが横たわる。あまりにも残酷で悲しい運命に支配された物語である、と言うほかないと思います。
いかに現実が強大であろうとも、「生き残ってしまった」以上、続きを生きていくしかありません。人によってやり方はそれぞれ、抱えているものもそれぞれです。ほんの僅かな光に向けて、ぼろぼろになりながらも這って行く者たちの生の軌跡が、この作品にはあるのです。