超常的な能力を持つものの、その能力がいまいち役に立たないため、下っ端のチンピラとして生きることを余儀なくされた男の物語。
アウトローな社会を舞台にした、バイオレンス多めの現代ファンタジーです。
主人公にはいわゆる「異能」、常人には不可能な不思議な能力があるものの、しかし決して万能ではないところが特徴的。
まったく役に立たないわけではないにせよ、でももし自分ならあんまり欲しくないなーと思ってしまうような(=つい我がこととして想像させられる)、絶妙ないまいちさ加減が好みでした。使い所はなくもないけど、デメリットが大きくて……。
魅力はやっぱりストーリーの軸、彼の紡ぐドラマの部分です。
うんざりするような底辺生活の中、そこか抜け出すための手段も見えず、ただ漫然と燻り続けるしかない閉塞感。その最中に起こった事件と、そこで出会ったひとりの少年。
時間としては本当に一瞬の邂逅でしかないはずのものが、でも彼らの間に確かに何らかの結びつきが生じたのがわかる、その感覚が素敵でした。
ひとことで言えば「優しさ」なのですけれど、そこに彼自身のこれまでに由来する何かが、無意識的に上乗せされるような感じ。
血みどろのハードコアな場面もありながらも、その中に人の繋がりを描いてみせる、厳しくも優しい作品でした。