第2話 道中

 子供たちは元気そうに私の前を歩いている。先ほどの光景と手に持つ金属バットさえなければ普通の子供と一緒である。ふと私はどこに向かっているのだろうかと思う。両親はいない。施設に住んでいてこの時間に外にいることはないだろう。この子たちの保護者はどこのどなたなのだろうか。親戚?ホームレスってことはないよね。この子たちが悪魔の使いとかって線は流石にないよね。ホラー映画の見過ぎ?シャイニングで双子が出てきた気がする。そもそも名前を聞いていなかった。

「君たち名前はなんていうのかな?」

「名前?私ははちゃ。」

「私がめちゃ。」

ツインテールがはちゃで、ストレートがめちゃね。それにしてもひどい名前ではないか。

「歳はいくつなのかな?」

「としってなに?」

「しらなーい。」

子供に年齢を聞くときってこの聞き方でいいはずであるが本当に知らないのだろうか。

「学校は行ってるのかな?」

「学校?」

「なにそれ?」

保護者は何をしているのだろうか。ご飯だけ用意して放置?ペットの猫みたいに。もしそうであるならば施設に保護してもらったほうがいいのでは。やはりきちんと話し合う必要がありそうだ。保護者には保護者の責任があるのだ。

「お家には誰がいるのかな?」

「師匠がいる。」

「師匠帰ってきてるかな?」

師匠?おじいちゃんとかであろうか。それとも兄妹?嫌なニュースを思い出す。親が子供に妹を押し付けて妹を殺してしまった事件。それともし同じような状態だったら?それならばこの時間にふらふら出歩いているのも納得できる。嫌な想像ばかりが続く。まだなにもわかっていないのに。

「師匠って何やってる人なのかな?」

「なんだっけ?」

「確か社畜。」

「そうだった。」

「そうなのだ。」

社畜ということは大人なはずだ。それともこの二人のために若くして働いている未成年か。なんか漫画であった気がする。遊びたい盛りだろうにこの子たちのために汗水流して必死に働いているのかもしれない。勝手な想像だが泣きそうになってきた。

「あそこがはちゃの家。」

「あそこがめちゃの家。」

二人が指を指す先にはアパートがあった。そこの一階の一番奥へと歩いてゆく。

はちゃが玄関のノブを回すとすんなりと扉が開いた。

「師匠帰ってきてる!」

「ご飯だ!」

二人は走って家の中に入っていく。私はそのあとに続き

「お邪魔します。」

と小さい声で呟き中に入る。そしてそっとドアを閉めた。

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はちゃめちゃ @dayuo666

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