第105話 大団円!(最終回)

 ペガサスは、ゆうきちゃんが最後に示してくれたルートを順調に進み、ついに最終目的地である『サルタヒコ』が眼前に迫った。


 ……ところが、ここまで来て、思いがけない事が起きた……


 俺の全身を『恐怖』が包み込み……足が勝手にペガサスのブレーキを踏み締めたのだ。



 ……今、思い出してみると、俺はかなり無茶して此処ここまで来てしまった。


 浅利さんや、祐希さんのお姉さん『祐香』さん、そして、祐希さんの分身である『ゆうきちゃん』……皆、口々に『祐希は法外さんが救助に向かうことを望んでいない』……と言っていた。


 ……ダルメシアンがサルタヒコに向かい、祐希さんに危険が迫っているビジョンを観てしまい、更に『神余かなまり』さんから、短歌による『ロケーター・ムーバー』の予知を贈って戴き、何だかんだで此処ここまで来てしまったが、肝心の祐希さんは、本当にそれを望んではいなかったんじゃ無いだろうか?


 ……サルタヒコのドッキング・ベイに到達し『入港申請』した時に……『却下』されたら……どうしよう!?


 ……今の俺は、祐希さんが全てだ。 それを否定された時の事は考えていなかったし、考える余裕も無かった。


 でも、ダルメシアンの脅威が去り、時間的な余裕が出来た今……そんな恐怖が俺の心を占めていた。


 祐希さんの気持ちを推し量る唯一のツールだった『ゆうきちゃん』は、もう居ない……。




 …………


 ……元々、俺は臆病な人間だ。


 他人に嫌われるのが怖いから、自ら負けを選択し、血が噴き出すほどの忍耐力で自分の心を押し殺して来た。


 ……そんな俺が、一番嫌われたく無い人に嫌われてしまったら……どうなってしまうだろう?



 ……


 …………


「ぷっ!」


 ……俺は、ふと浮かんだ考えに、思わず吹き出してしまった。


 ……もし、祐希さんに否定されたなら……


 それなら、それで……良いじゃん!




 俺は、何で努力してここまで来たのか?


 自分の『欲望』を満たすためか?


 否!


 祐希さんを救い出し、安心して生活して貰う為だ。


 祐希さんに危害を加える敵は、もうこの世に存在しない! 


 ……苦労が多かった祐希さんには、これから、是非とも楽しい人生を歩んで貰いたい。


 幸い、祐希さんには、心強い仲間がたくさん居ることが判った。


 ……もう、それで充分じゃないか!


 

 …………


 

 ……でも……やっぱり……怖いなあ……


 ……その時、唐突に、ペガサスの中央モニターに……


 特務機関『1〇〇ひとまるまる』の面々と、勝目ブラザーズが映った。


 そして、浅利さんが……


「せ〜の!」


 全員が、満面の笑みで……


「 早 く 行 け 〜 !」


 と言ってくれた!


 俺は、胸が熱くなり、皆さんに心からのお礼を言った。


「あ、法外さん!」……浅利さんだ。


「……?」


「我々の『上司』が、法外さんに是非伝えたい事がある……と申しております。 閣下、お願い致します」


 画面が切り替わり、そこに映し出されたのは……


 あの『100%』の面接会場にいた、全身黒尽くめの人物だ!


「法外さん。 こんな姿で失礼します」


 俺がドギマギしながら……「い、いえ……その説はお世話になりました」


「いえ……法外さんには、言葉では伝えきれない感謝の気持ちでいっぱいです。 有難う御座います」……と言って、頭を下げてくれた。 ……こちらも恐縮して、より深く頭を下げた。


「さて……本題ですが……」


「……?」


『閣下』が、カメラに顔を寄せ、小声で言った。


「……東矩の有給休暇は、まだ2週間以上残っています……安心して、ごゆっくり……!」


 ……と言って、目深に被った帽子を少し上げ……いたずらっぽくウインクをしてくれた!


 ……皆さんに、もう一度挨拶して、通信を切った。


 そして……


 俺は迷わず、ペガサスのアクセルを、力強く踏み込んだ!


『100%!』・完




 ご精読頂き、感謝申し上げます。


 皆様の温かい応援とコメントに支えられて、無事に完結する事が出来ました。


 この場をお借りして、心より感謝申し上げます!


 本当に、本当に有難う御座いました。


 2022.4.18 コンロード

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