第43錠 白の遺伝子
「はぁ、最悪だ!」
その後、究極の選択を迫られ、折れるしかなくなった誠司は、酷く不貞腐れた表情で、彩葉の隣に座っていた。
「なんで、こんなことに……!」
「なんでって、お前が首つっこむなんて言うからだろ」
「あぁぁぁ、つーか、性格変える薬があって、なんて、タイムマシンがないんだよ!! いっそ、ドラ〇もん開発してほしい!!」
「えらく夢のある話だけど、ドラえ〇んの秘密道具は、マジでシャレにならないものあるからな。あれは、のび〇君が使うから平和なんだよ。じゃなきゃ、犯罪が横行してる」
「犯罪、犯してそうなやつが言うな!! 明らかに、お前の組織の方がやべーだろ!! コ〇ン君がおかっけてそうな組織だろ!?」
「……はぁ、だから正式な国家機関だって言ってるだろ」
呆れかえる彩葉を前に、誠司は
その国家機関ってのが、真面目に信じられない。
だが、そんな誠司の顔つきを悟ったのか、彩葉は
「ん? なんだ?」
「俺の名刺」
見れば、そこには『
「ん? 製薬会社、か…カ……?」
「製薬会社
「お、表向きって!? やっぱ、やべー組織じゃねーか!! だいだい本田ってなんだ!? 国家機関のくせに実名も名乗らないなんて!」
「仕方ないだろ。万が一にでも、国が性格を変える薬を開発中だなんてしれたら、下手したら暴動が起きる。それに、色を売るのも楽じゃないんだ。薬欲しさに、学校を特定されて、待ち伏せされても困るし」
「あ。じゃぁ、もしかして、その制服も」
「あぁ、ボルドーの制服って目立つからな。ジャケットの色を地味な色に変えて逃げれば、あっさり巻けるんだよ」
その話には、妙に納得してしまった。
彩葉の制服が、紺からボルドーに変わっていたのは、そのためだったのかと…
「ちなみに、この件触れ回ったら、刑務所行きだからな。親だろうが、彼女だろうか、他言するなよ」
「……っ」
彩葉の言葉に、誠司はげんなりする。
これは、マジな厄介ごとに首を突っ込んでしまった。
つーか、まさか、こんなヤバい組織が絡んでるなんて思わないじゃん!
身体売ってるだけだと思ったんだよ!
いや、身体売ってるのも「だけ」ですませていい話ではないんだけど…
もはや、身体売ってるだけにして欲しかった!
なんて思ってしまうほど、今すごく後悔している。
「それより、お前に手伝ってもらう仕事のことだけど」
「っ……何だよ。まさか、そのわけわからない薬を売れってのか?」
「違うよ。この薬は、資格がないと売れない。だから組織の人間でも、売れる人間はごく一部だよ」
「え? そうなのか?」
すると、彩葉はその言葉の通り、資格証みたいなのを、誠司に見せてきた。
「『危険機密道具・特別取扱許可証』……なんだ、これ?」
「"危険機密道具"ってのは、colorfulもだけど、世間に出回れば、犯罪に悪用されそうな危険な道具とか薬の事。この資格は、そう言う危ない道具を扱かってもいいですよって証。まぁ、いうなれば、犯罪に使用しないと認められた人格者にしか発行されない許可証だよ」
「人格者ぁ!?」
つまり、彩葉が持ってるということは、彩葉は人格者だと?!
ダメだ、全く信じられない!!
「まぁ、別に信じなくてもいいけど。それより話を戻すけど」
「……っ」
瞬間、ごくりと息をのんだ。
もし、変な仕事を任せられたらどうしよう!!
「お前には【白】を探すのを手伝ってほしい」
「は?」
だが、その後、放たれた言葉に、誠司は首を傾げる。
「白?」
「あぁ、さっきも言っただろ。俺たちの組織は、人の遺伝子から、性格のデータだけを抜き取り、人には8種類の先天的な性格があるのをつきとめたって……そして、そのデータを元に作られたのがcolorful。だけど、そのcolorfulを作るには、人の遺伝子、つまりそのデータの元になるDNAが必要になってくる。薬を売る際に、新規の客にはDNAを提供する代わりに、多少はサービスしてるけど、採取が難しい希少な色があるんだよ。それが【白】。純粋で清らかな、自己犠牲をいとわない真っ白な性格をした遺伝子」
「真っ白な……性格?」
「そう。お前は、その白のDNAを持っていそうな人を見つけて、俺に報告してほい」
「………」
そう言われて、一瞬、セイラのことが過った。
セイラは、まさに『白』と言われるような性格をしていたから。
でも……
「その白を見つけて報告したら、お前は、どうするんだ?」
「………」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます