【第1章】再婚
第1錠 刺激のない日常
人は常に刺激を求めてる。
平凡な日常より、胸踊るような刺激的な生活がしたい。
そう、例えば、リア充のような──
「たくっ……アイツ、また
現在、高校2年生の誠司は、いつもと変わらない日常を過ごしていた。
朝起きて、顔を洗い、再び二階にある自分の部屋に戻ると、誠司は、なにげなく送った彼女への
中学3年の冬。誠司は、ずっと好きだった女の子に告白をして、恋人同士になった。
付き合って2年。
そこそこ、長い付き合いになるのだが……
「スタンプくらい送れっつの。一応、女子だろうが?」
既読はついたが、一切反応がない彼女の返信を見て、誠司は、ため息を
当たり前の日常。刺激のない毎日。
そうです。
現在、誠司は、彼女とマンネリ中です!
「誠司~。ご飯できたわよー」
「……!」
瞬間、一階から母が呼ぶ声が聞こえて、誠司はスマホを放り投げ、すぐさま着替えを始めた。
涼しくなり始めた、9月末。
先日、
紺のブレザーに、チェックのスラックス。
普通の高校の普通の制服。
そして、スエットを脱いだ誠司は、Yシャツに袖を通し、あっという間に着替えを終えると、ツンと
「おはよう。誠司!」
ダイニングに入れば、普段通り母の
誠司の母親である
髪が長く、ほっそりとした容姿をした彼女は、ホンワカしたとした少し天然なお母さんだ。
すると誠司は、ダイニングの椅子に、
時計を見ると、少し急いだ方が良さそうだ。
とっとと食べてしまおうと、誠司は『いただきます』も言わずに、味噌汁を手に取る。
すると、誠司が朝食をとり始めたのを見て、向かいの席に腰かけた優子が、少し、しどろもどろしながら話しかけてきた。
「あのね、誠司。私、再婚したいの!!」
「ぶーッ!??」
だが、突然の母の告白に、誠司は飲んでいた味噌汁を吹き出した。
(は? 今なんて言った!? 再婚!?)
てか、俺、今から学校に行くんだけど!?
そんな大事な話を、こんな慌ただしい朝にするなんて、どこまでド・天然なんだよ、母さん!?
「さ、再婚?」
「うん。前にも話したでしょ?
「…………」
申し訳なさそうに話す母を見て、誠司は眉をひそめた。
優子の夫であり、誠司の父である
そして、それからは、ずっと優子が女手一つで、誠司を育ててきた。
パートをかけ持ちし、夜遅くまで働き、それでも笑顔を
そして、そんな母を
(そっか……、ついにか)
母が、葉一さんのことを
なら、反対する理由なんてない。
「別に、いいんじゃね。再婚すれば」
「え? いいの!?」
「うん。葉一さん、いい人そうだったし」
当然のように返事をすれば、優子は、嬉しさが入り交じるような顔で、誠司をみつめた。
だが、それを見て、誠司は少し複雑な心境になる。
(本当に好きなんだな、葉一さんのこと……あ、でも、再婚したら、
誠司たちが住んでいるのは、二人で住むには広すぎる、5LDKの一軒家。
そして、この家は、亡くなる前、父が建てた家だった。
本当は、もう一人くらい子供作るつもりだったらしいが、そう上手くはいかず、リビングやキッチンの他に、一階に三部屋と、二階に二部屋あるが、その内の二部屋は、全く使用してない。
きっと、母は、この家を手放さないだろう。
なら、この家に、葉一さんと一緒に暮らすことになるのかもしれない。
(親父のことを思うと、複雑だけど……母さんのためだよな)
チラッと父の
だが、そこに──
「それとね! 葉一さんにも、お子さんがいるの!」
「ぶーっ! げほッ、ごほっ!?」
だが、母の突然の告白(二度目)に、誠司は、再びむせ返った。
「はぁ!? ウソだろ!? 葉一さん、子供いんのかよ!?」
「う、うん。でも、イロハちゃん、凄く美人でいい子なのよ。年も誠司と同い年の高校2年生だし、話も合うと思うの!」
「……い、イロハちゃん?」
母から飛び出した女の子の名前。
そして、その名を聞いて、誠司は、改めて今置かれている状況を
(それって、俺に妹ができるってことか?)
どうやら、母の再婚相手の葉一さんには、娘がいるらしい。
しかも、すごく美人で、誠司と同い年の高校2年生。
これは、あの漫画や小説でありがちな血の繋がらない義理の妹と暮らす、お約束のパターンなのだろうか?
ということは、そのイロハちゃんに『お兄ちゃん♡』なんて、言われたりするのだろうか?
(どうしよう……)
誠司は、頭の中でぐるぐると考える。
だが、無言のまま
朝食に手をつけることなく、じっと誠司の返事を待つ優子。
この返事一つで、母の未来が決まる。
だが、家族になるとはいえ、同い年の女の子と、ひとつ屋根の下に暮らすのは、どうなんだ?
誠司の
確か、その漫画の主人公も、今の誠司と同じ状況だった。
親の再婚で、一緒に暮らし始めた同い年の女の子と、ドキドキで、少しエッチなハプニングが、昼夜、問わず訪れるのだ!
(お、おちつけ! あれ漫画だから! てか、俺、彼女いるし! 彼女一筋だし!!)
誠司は、ブンブンと頭を振り、
いくらなんでも、そんな漫画みたいな展開が訪れるわけがない!!
だが、最近、彼女が
ずっと変わらない彼女との関係。
いつもと変わらない日常。
それに、飽き飽きしているのも、確かで──
(兄妹か。……まぁ、悪くないかもな)
この先、ずっと変化のない毎日を過ごしていくよりは、いいような気がした。
葉一さんやイロハちゃんと暮らし始めたほうが、この刺激のない日常も、少しは華やかな毎日へ変化するかもしれない。
誠司は、そう思うと──
「いいよ」
「え?」
すると、優子が大きく目を見開き
「い、いいの?」
「うん。この家、二人で住むには広すぎるし、部屋もあまってるし。子供一人くらい、イイんじゃね」
平然と返せば、優子は、ほっとしたように瞳を
父のことを考えれば、色々複雑だ。
でも、これも全て、母さんの幸せのため──
「ありがとう、誠司……じゃ、
「え!? 今夜!?」
だが、そう言って、淡々と進めていく母を見つめながら、誠司は驚きつつも、また食事をとりはじめた。
ほんの少しの期待と、不安を胸に抱きながら──
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