発した言葉が現実のものとなる〝言霊〟の力によって、大事な友人を殺めてしまった少女が、それ以降声を捨てて生きるお話。
身に余る力を持ってしまった人の悲哀を描いた物語。もしくは、思春期特有の肥大化した自意識に振り回される人のお話です。
一人称体ならではの書き方、いわゆる「信用できない語り手」によるミスリーディング。どっちが正解か訝りながら読み進めていく、その感覚そのものが楽しい作品でした。
手段としてのミスリーディングではなく、それ自体にドラマ性があることの面白み。
特筆すべきはやはり主人公の内面、溢れ出る自意識の痛々しさです。
世に言う厨二病、思春期年代に特有の、後々思い返すと「ウッ」となるようなおかしな振る舞い。それを一人称体の文章を通じて追体験させられる、その感覚の生々しさがもうものすごい……。
なにより魅力的なのは最後の最後、結局どちらなのか断定できないところ。「たぶんこっち」と自分なりに答えは出せても、はっきりした証拠までは与えないその匙加減が最高でした。
自分の願望をなんでも叶えてしまえる能力ならば、登場人物たちの振る舞いはその結果か、それとも認知の歪みによって主人公の中でのみ歪められているのか? 想像の余地が余韻のように働くところが好きな作品でした。