fin
「おぉ・・・レイラ・・・レイラなのか?」
両手を広げて待ち構えるチュータ王。
レイラは戸惑いつつあったけれど、王に近づくと、王は嬉しそうに抱き着く。
抱きしめられた時に親の愛情を感じたレイラ。
そして、これは間違いなく自分の父親だと確信した。
「レイラ・・・私の愛しい子」
今度はパンプキン王妃とハグをするレイラ。
涙を流すパンプキン王妃に、レイラは初めて他人から心配されて不安になってしまう。そんなレイラが実の母である王妃をを見上げると、そのレイラの困った顔を見て、パンプキン王妃が慈愛に満ちた顔で微笑んだ。
レイラは今度は自分からもぎゅーっと抱きしめた。初めて会ったと思ったけれど、その匂いは懐かしく感じた。
「お母さん・・・あっ」
レイラは独りの時はお母さんと呼んでいたけれど、マルガリータは「様」を付けなければ激怒したので、ぶたれるんじゃないかと身構えるが、
「えぇ・・・そうよ」
パンプキン王妃は嬉しそうにレイラの頭を撫でる。
「さて・・・エリオット王子」
「はいっ」
エリオットが右手を拳をあてて王に拝謁する。
「頭を上げてくれ、エリオット王子。本当に貴殿には感謝している。ありがとう・・・」
深々と頭を下げる王と王妃。
「喜んでいただき何よりです。おかげさまで・・・素敵な出会いがありました」
ちらっとレイラを見るエリオット。
その笑顔に照れてしまうレイラ。
「あらあら・・・」
それを見て、何かを悟ったパンプキン王妃。
「そうだ、レイラ。何か欲しい物はないか?もしくはしたいことだ」
チュータ王はレイラに尋ねる。
「じゃあ・・・」
レイラは本当にいいのかなと自信なさげに希望を伝えた。
その日の夜
モダンな音楽。国随一の音楽家たちがバレンタイン城に集まり、楽器を奏でる。
音楽家だけではない、多くの貴族や王族たちが集まり、自身が輝くと思う様々なカラーやスタイルのドレスやタキシードを着ている。夜だと言うのに豪華なシャンデリアや数多くのキャンドルによって、外は真っ暗だと言うのに広間は眩しかった。
しかし、そんなすべてが霞み、追わず見惚れてしまう二人がいた。
「本当にごめんなさい・・・」
レイラが頬を赤らめながら、エリオットのダンスのリードに従う。
「何がだい?」
「助けてくれたのもそうだし、私と踊るのなんて・・・」
かつてない視線の多さに戸惑うレイラ。中でも父チュータ王とパンプキン王妃は温かい目で見ていた。
「キミと踊れるなんて、最高の夜さ」
そう言って、レイラを回して、そっと背中をキャッチするエリオット。
「ちょっと、はしたなかったかな?」
語り掛けてくるエリオットの顔が目と鼻の先まで近づきドキドキするレイラ。
「・・・ううん」
レイラはチュータ王に舞踏会を開くようにお願いした。
王も娘の願いを叶えるために当日だと言うのに多くの人を集め、最高の舞踏会を開いた。
レイラが何日も夢見た舞踏会。そこには夢のような世界が広がっていた。
レイラは踊りだって動物たちとの創作ダンスしかしたことがなかったし、怒られて行動を制限されていた暮らしをしていたので、何かをすれば怒られるかもしれないと思ったし、余計なことをせず隅で素敵な雰囲気を味わえるだけでいいと思っていた。
けれど、王がエリオットにも娘を助け出したお礼に願いを一つ叶えると伝えると、エリオットは迷わずレイラと踊りたいと伝えた。かなり驚いたレイラは最初は断ったし、不安しかなかったけれど、今は素敵な舞台にあげてもらえて、巧みなステップでダンスをリードしてくれるエリオットにとても感謝し、他にもよくわからない気持ちを抱えていた。
にこっ
ドキッ
それは特にエリオットが微笑むと大きくなる感情だった。
それが「恋」と呼ばれる感情だとレイラが気づくのはまだまだ先のお話。
今はただ、その瞬間を楽しんで、踊るだけだった。
fin
レイラとエリオットらがバレンタイン城で舞踏会を楽しんでいる頃、遠く離れた城、ブルラン城。
時計の針が真夜中の12時を指すと共に聖剣カーテナルがキュラドの胸から抜けたことをレイラたちが知る由も無かった・・・
fin?
舞踏会へ連れてって!! 残念でしたね、心も見た目も醜い継母たち。王子と結婚するのはどうやら私のようです。 西東友一 @sanadayoshitune
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