第2話 専科校舎屋上の砲撃戦準備
「カスキー、遅いっ!!」
遠慮ない声色は、元同級生の
「悪い、遅くなった。薙刀大会が延長ありありの熱戦続きだったもので。テレビカメラを抱えた広報が抜けるわけにはいかなかった。」
彼は歩を緩めないまま、そう返した。10秒ほど経って、
「会長から丁寧に連絡頂いたわよ。お詫びは聞かなくていいから上に急がせろ、とのことよ」
この二月ほど、ミカ校での作業に戻り、少々気まずい視線を受けていたので、生徒会の二人の変わらぬ態度はありがたい。
都合4階分の階段を速歩のまま上がり終え、彼は、屋上へ出た。
「生徒会広報班、
と敬礼する。
その
成人している自衛隊員やエムデシリ隊員にもキラキラネームが多い中、なかな珍しい古風な名前である。ミカ校時代に薙刀大会を連覇して依頼、
全速力でここまで来たことを示す荒い息のまま、
一辺約百メートルの正方形の専科屋上に、各設備は幾何学的に対称配置されている。中心にそびえ立つのが、階下の変電蓄電所からの熱を放散するための放熱空洞を兼ねた電波通信塔。その足元に
南西と北西の各辺の中点付近は、強い電磁波放射を伴う砲弾射出時に階下に退避するための『滑り台』だ。最小摩擦時の最速降下線、すなわちサイクロイドの形状で作られている『滑り台』を降りると、そこが階下の管制制御室。滑り台の周囲には炎天下の物見のためにいくつかのビーチパラソルが並ぶ。骨組みがしなり元々が強風に強いパラソルは、砲弾射出時の後方衝撃波に問題なく耐えるという。
屋上北側の頂点付近の、赤テープが島方位角に合わせ✗字に貼られた撮影指定ポイントにたどり着いた
水平確認を終えた
直後、右後方から
「想定島方位角ヒトゴウマルに
「このタイミング、か」
後ろからタケミカヅチ先輩の声。
このままカメラの準備を続けていいのか指示を仰ごうとそちらを向いた
視線にさらに右にたどる。ショートカットの
その刹那、「見るな、カスキッ」という
リケジョの園のミカ校生。現代兵器、より正確には近未来兵器の使い手たることが期待されている彼女たちに肉体的なスキルは強く求められてはない。しかし、年若くして未来的な兵器を扱おうと志す母集団ゆえか、ミカ校生の約半数は「個人的に」武道をたしなんでいる。
砲の下のくぼみ台に一人、艶然と座る金髪の女性ミーシャ。
「指導官!」と、黒木砲術長がその姿に指示を仰ぐ。
「飽和射出を許可する。待望のお客様の来訪アナウンスの前に、アンノウンどもを退散させろ」
「「了っ」」
凛と命じた声に、隊員たちは直立し応える。
指導官の命を受けた黒木砲術長は
「哨戒隊、1分の後より防衛線付近のドローンを山越えさせよ。砲術隊、近接距離にての飽和射出戦を用意」
とさらなる指示を出す。
その声に鷹揚に頷いたミーシャ指導官は、不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる。その上半身には、
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