零 生徒会広報班の最終週
第1話 専科校舎への鬼コギ
ミカ校の本校体育館で開催された、高等科1年生の薙刀大会の決勝戦は、二回の延長の後に決着した。勝者と敗者が中央で礼をするまでを撮り終えた、ミカ校広報担当の
そして、審判を務めるエムデシリの隊員女史に一礼し体育館を出ると、彼は制帽をかぶり体育館に隣接する自転車置き場に向かう。
自転車置き場の広報部備品のママチャリを押しながら通用門をくぐり、ママチャリにまたがった
カスキーと彼をあだ名で呼んだ声の主は、生徒会長にして広報部長を兼務する
サトウキビ畑沿いの車通りの少ない道を通り、目指すは、敬礼の向きと同じく数キロメートル先の小高い牧山の頂き、正確には頂きにあるミカ校の専科校舎だ。
伊良部島で一番の高台にある専科校舎屋上には、米国の支援で導入された陸上設置型の
専科校舎に向け鬼こぎをする時、彼の脳裏には、その専科自慢の砲が自分を向いているような妄想が時たま浮かぶ。
今の宮古島市防衛戦の要たる
道の続く先には、本来は海峡を挟んで宮古島があるのみ。左手遠くに見えるのが
そもそもが幻だと言ってしまいたい。
しかし、昨年末、彼は、隣島宮古島の高台高腰城跡に通い詰め、
それは、上司として君臨してきた兼任広報官のミーシャからの
陸自駐屯地の第五地対艦ミサイル連隊の哨戒部隊員が島の半径50キロメートル四方への
高腰城跡に陣取った駐屯地隊員たちは、
基地の眼の役割を担う哨戒用ドローンは防衛線付近を通過するたびに、撮像位置の島方位角と仰角とを伝えてくる
その条件は、彼が見張り台にへばりついて3日目に満たされた。
その日、専科校舎屋上の
そして、その撮影ミッション自体は、ほんの前まで、地元横須賀の通信科高校生という肩書きでの合法的で自由な引きこもり生活を謳歌していた高2の
さておき、左手に牧山が迫る中、
1年前には呑気な引きこもり生活を送っていた
坂を登り切り、牧山展望台が見えてきた。本日、展望台は久しぶりに市民に開放されている。抽選で選ばれた市民80名ほどが展望台を訪れている。
島の物資とエネルギーが困窮する中、彼は、ミカ校中高等科校舎と専科校舎のちょっとした物資の自転車輸送に駆り出されていた。数百回に及ぶ急ぎの輸送任務で今や鬼漕ぎはお手の物だ。
ようやくに専科校舎の駐輪場にたどり着く。ママチャリをそこに止めると、そこからは速歩で校門に向かう。「陸上自衛隊」という縦書きの看板が見えてきた。看板の左下には、「高等ミサイル科学校専科校舎・電磁加速砲台基地設置準備室」との文字がある。専科校舎は、事実上の砲台基地を兼ねている。校門兼基地入口を守る歩哨に任につく陸自隊員に敬礼し、
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