世界を滅ぼした魔神の娘に取り憑かれた 短編

ルド

タイトル? 敢えて言うなら『暗躍ネコミミ妖怪』かな?

 こちらは短編版です。続編は未定となります。

 作者がちょっと思い付いたストーリーで、展開はラブコメなのかバトルなのか正直あやふやです。

 ただ、主人公のスペックの低さは、過去どの主人公よりも低いものとなります。めっちゃ弱いです。ヒロインたち(取り憑いた魔神の娘とか)がいないと最弱レベルです。


 ですが、今回はあくまで作者のお試し企画。

 そういうバトル要素は一旦捨てて、何気ない(本人たちにとって)日常をお送りしたいと思います。


 ですので、あまり過度な期待とかはしないように。

 


 *



 すべての世界には表と裏が存在する。それは世界の必然である。


 光があるところには必ず闇が存在するように。

 天があれば地があるように。

 善人がいれば悪人だって当然いる。


 ここも何気ない世界であるが、密かに【魔導師メイジ】と呼ばれる魔法使いたちが影で世界を守っている。


【魔導師】は世間には知られておらず、大昔から存在している。

 世界の影から人々に襲いかかる『魔物』という存在と戦い、人々を守りながら討伐してきた。


 そして大昔、魔導師たち……人間たちの規模遥かに超えた戦い────『神々の戦い』。

 人類は巻き込まれたと言っていいが、戦いの果てで一度、世界は滅びを迎えてしまった。

 

 しかし、とある神の巨大な力による修復が間に合い、完全消滅だけはどうにか回避された。

 そして世界を滅ぼした魔神は恐れられ、魔法使いたちの歴史書に残るほど言い伝えられていた。


 万が一復活した時の為に。

 その戦いのことだけじゃない。その恐怖まで風化してしまわないように。




【しかーし、今回の話はあくまで日常系のお話でーす。シリアス展開とかバトル展開とかは一切アーリません。今後あるかどうかもわからない物語とは、全然関係ないのでそこんところよろしくぅー】


「どうでもいいが、だれ視点で話してんだ?」


【ふ、ふ、ふ、ふ……はーじまーるぜぇー】


「なんで悪役みたいな雰囲気出してんだよ。え、これがスタートなのか?」




『世界を滅ぼした魔神の娘に取り憑かされた』───第1弾 ラブコメ回? いや、策略的な修羅場だよ!!(サブタイトルに深い意味はありません)



 まずは俺の紹介から始めよう。男の紹介なんて誰が喜ぶんだって話だが、そこは目を瞑ってもらいたい。

 俺の名は壱村いちむら冬夜とうや、学力普通な高校1年生だ。

 いきなりわざとらしい自己紹介でアレだと思うが、後々だと面倒なのでさっさと名乗ってしまうことにした。


 自虐的な発言にも聞こえるが、本当に平凡な人間である。顔は普通メン(告白された回数ゼロ!!)……自分で言ってちょっと泣きそう(涙目)。学力も本当に平均レベル、運動は元々そこそこで無茶苦茶凄い。偶に誤解されるけど周りが結構ハイスペックだけで俺は本当に普通なの! 器用貧乏でもないが、お願いだから察して!?


 一緒に暮らしてる義理の姉2人(片割れは凶暴ゴリラ!)も高校では生徒会長、そして風紀委員長を務めている。慈愛な方の会長の姉は優しいが、ゴリラな姉の方は同じ学校だからって事ある毎に人を扱き使う! 職権濫用と言いたい……! 怖いから言えないけど。

 


 あと昔から付き合いがある幼馴染の女友達が……ぐぅ! ふ、古傷が開きそう。

 元々家が近所だったから親同士の付き合いもあってよく一緒にいた。姉たちも妹のように優しくして、気付いたら学校では女子に対しヘタレな俺も自然と話すようになっていた。


 そう小中学校でも人気だった幼馴染と一緒。だからよく周りから付き合ってるんじゃないかと揶揄われ、そして嫉妬されて(特に男子からで)大変だったが、中学2年の夏休み以降、長く続いた色恋沙汰も静まることになる。何故なら……



「ごめん。アタシ、冬夜のこと、幼馴染以上には見えないんだ……」


「人のトラウマ台詞を姿変えてまですんなぁぁぁぁぁぁ!!」



 ナーレーションしている最中に心臓が止まるかと思ったわ!?

 自分の部屋に入った途端、なんでか着物姿の幼馴染がいてあの時と同じ感じでフってきてる。――ってなんの嫌がらせだ!? あの風景が脳裏に過ったぞ!?


「声まで真似しやがって! この妖怪ネコ娘が!」


「ふ、ふ、ふ、ふ! みゃ〜!」


 クルッとその場で横に1回転する。明るい茶髪がさらに明るいオレンジ髪になる。ちょこんと猫耳と色が変わった着物から尻の部分から尻尾が生える。活発な幼馴染の顔からボーとしたような無表情なそれが姿を現したが、そこそこ付き合いがある俺には分かる。コイツ、明らかに楽しんでやがる!


「ミヤ? これはどういうつもりだ?」


「……トウヤいじり?」


「弄りにしても悪質っ! 何処から聞き付けた!?」


 反省の色がゼロのミヤに俺は怒りで頬をピクピクしながら睨む。3ヶ月くらい前から俺の家……俺に取り憑いているが、幼馴染にフラれたのは中学2年の頃だ。俺の中で覚醒してなかったこいつが知ってる筈がないが。


「みゃ? トウヤだけど?」


「誰だよトウヤって――俺やん!」


 近所に冬夜なんていないから俺じゃん! 言ってない筈なのに何で!?


「トウヤとミヤ――『一心同体』」


 感情が含まれない淡々と口調。

 だが、何処か得意気な顔で着物越しでもたわわな胸元をポンと叩く。

 ……揺れてる。効果音が出そうな感じで揺れとります。


「こうして離れてるときはムリ。けど、トウヤの中で眠っている最中なら夢も見る。トウヤの記憶」


「つまり俺の見た夢をミヤも見えるってことか?」


「みゃー」


「はははは……マジかー」


 返事はみゃーであったが、俺は思わず顔に手を当てて項垂れる。

 夢の内容はぼんやりであるが、確かに覚えがあったからだ。ちょうど暑い夏なのが影響したのか、つい最近あの頃の事が夢に出て、汗だくで目が覚めたのだ。


「で? 興味が湧いて実際に再現したと?」


「にやり」


「なるほどなるほど…………ふん!」


「みゃー!? ネコミミだめぇぇぇぇぇぇ!?」


 さて、お仕置き中に説明を続けようか。え? ミヤはいいのかって? 全然平気です。アイツ人外でしかも『魔神』とか呼ばれてる種族だから。


 前振りで大体は察していると思うが、実は自分、魔法使いをやってます。魔力が超ショボ過ぎだけど。

 びっくりすると……思わないな。遥か昔から取り憑いているミヤが原因で魔法使いになったのは、三ヶ月前の高校に入った直後のことだ。



 俺、壱村冬夜は死にました(ちーん)。



 はい、冗談ではなくガチで逝っちゃいました。

 理由は省くが、魔法使いとか魔物とかとは関係ないところでだ。事故死に近い。

 普通の人間ならそこで終わりの筈だったが、俺の中にはずっーと昔に世界を滅ぼした(すぐ修復されたらしいから未遂?)神の宿敵という魔神の娘が取り憑いて眠っていた。


 俺が死んだことで眠っていた魔神の彼女、ミヤが起きてしまった。いや、起こしてしまったと言うべきかもな。魔法使いにとって危険過ぎて歴史書にも残った魔神の娘のご降臨であった。

 


【クククククッ! やっとか? 待ち侘びたぞ! 我が半身!】


「みゃ〜」


「……」



 ほら、不思議でしょうー? 普段のネコ耳妖怪の姿と口調は省エネモードで、これが本来のミヤに近い状態らしい。


 男女問わずその美貌と声音で魅了してしまう、今の姿とは全く異なる超絶美女がそこに立っていた。……すぐに背丈が小学生で巨乳のネコ耳妖怪になったがな。最初にあった威厳が一瞬で粉々になったわ! シリアス感ゼロだもん!


 そこからはとんとん拍子に物語りは進んでいった。

 ミヤの覚醒が原因で騒ぎ立つ魔物との初戦闘! こっちとら喧嘩もしたこともないド素人だ! だから察してください!!


 どうにか勝ったけど俺自身の魔力がカス過ぎても宿ったことで、色々な者たちに気付かれた。少量でも魔法使いなら魔力を感知出来るそうだ。


 まず家族である。驚きの話だが、実は魔法使いしている家系だった。魔力が無く魔法使いでもないから俺だけ内緒にされていた。

 別にそこに怒るなんてことはない。ただ女神のような姉だけでなく、凶暴なゴリラ姉も魔法使いだと知った時は……リアル魔王に見えたのは内緒だ。マジで命がアブナイ。


 しかし、驚いたのは身近な友達のことだ。全員ではないが、殆どが密かに魔法使いを務めていて、あの幼馴染までもが魔法使いだった。対面した時のアイツの狼狽した顔は今でもよく覚えてる。


「結局フラれた1番の理由は魔法使いだとバレたくなくて、両立が厳しいと思ったかららしいが……」


「まじで?」


 魔法使いに関する説明後、何故か必死に取り繕う彼女。色々と訳ありなのは分かったが、今さら言われても正直困る。

 あの件では同情もされたが、散々周りからも揶揄われた。ゴリラ姉なんか調子に乗って露骨に人様の神経を逆撫でするから、頭に来てしばらくホントに口を聞くのやめた。


 とにかく俺の中では、もうあの時ことは決着……ついてませんけど!? 同じ高校でしかも一緒のクラスになったから余計に意識してましたよ!? どうして別の高校にしなかったかって? レベル的にそこは楽だったんだよ!


「ふしぎー? めっちゃあぷろーちされてるじゃん」


「全部ボー読み! 全然興味ないだろう!」


「ヘタレの悩みにきょうみなし」


「ぐは!?」


 遠慮のない相棒のボディブローが中に来る!?

 ミヤが不思議そうに(態度だけ!)首を傾げているが、確かにその通り。自意識過剰とか勘違いしたくないが、バレて以降その幼馴染からのアプローチが……う、胃が痛い。中学までは全然モテなかったのに、何で急に――



「ホントヘタレな男ね。だからクラスで『都合の良い童貞くん』って呼ばれてるのよ?」


「また姿を変えて、繊細な人の心を突き刺すようなことを言うなぁぁぁぁぁぁ!」


 

 そのあだ名は嘘だと信じたい! 切実に!

 しかも、よりにもよってクラスメイトの……言い方に困るが、言い寄れている女子の姿と声音で悪戯っぽく近付いて――ギャァアアアアアアアア! 吐息があたる!?


「そんな小動物みたいな目で逃げなくても……可愛い。虐めたくなるわ」


 いやぁぁぁぁぁぁ! 危ない女豹の目をしてるぅぅぅぅぅぅ!
 新たなにミヤが姿を変えたのは、黒髪の清女な(見た目は)夏の制服姿のクラスメイト。

 活発な雰囲気がある幼馴染とは正反対なクールな雰囲気もある。幼馴染とはクラスどころか学年でも1位2位を争う関係であり、同時に魔法使いでもある。


 つまり学校でも魔法でも2人はライバルなのだ。毎回衝突している。視線で雷を起こしてます。


 そう、俺が幼馴染の誘惑?みたいなのを素直に受け止められない理由である。

 それが同じクラスメイトで隣の席に彼女が原因でもあった。


 本気かどうかも分からない2人の行動と発言が俺の弱々しい精神を日々削り切っていた。……ホント、容赦ないよ。認めたくないが、俺は取り憑かれてる点を除けばただのど、ドウテイ――グッ!? 言うだけで心の傷が深まる! とにかく悲しくなるくらい地味なキャラなのに、魔法使いになった途端、2人から数え切れないほど言い寄られてます。マジで不思議です。怪奇現象です。誰かゴーストバスターでもいいから呼んでください!



「ふ、ふ、ふ、ふ! まぁミヤ的にはハーレム展開もありといえばありだけどなぁ〜」



 とか言うから相棒は当てにならないし! リアルでハーレムとかマジでありえないから! 最終的に絶対ヒロインたちに刺し殺されるエンドしか待ってないから! ミヤもいい加減現実を見なさい! 俺が逝っちゃったらミヤもアウトなんだぞ!


「だいじょうぶぅー、不安ならミヤが卒業させてやるからさぁ〜。ハーレム街道の手始めに〜」


「何さらっと恐ろしいこと言ってんの!? ――ってちょっと待て!」


 主人をからかうのが大好きなミヤも無駄にデカい胸を俺の胸元へ押し付けて来る! 柔らかい、餅みたいに潰れる感触がダイレクト過ぎる! 制服の中、絶対着けてない!


「毎回のことだけどそうやって俺を追い詰めるのだけはやめて!? 緩々な俺の理性が飛んだからどうすんだ!」


「むしろ飛べ。カモンだぜトウヤー」


「飛んでたまるか! 短編だけで物語が終わるわぁぁぁぁぁぁ!!」


 分かっていた。一番恐ろしいのはクラスメイトでも幼馴染でもない。この年中発情しているネコ妖怪であった。


 そして、ネコのように戯れ来るミヤとの攻防は夜まで続いた。

 詳細は省くが、俺の未来はどうにか守られたことは、分かってくれたら助かる。







 というわけでオチなんて考えない。

 何でもない普通で平凡だった俺の今の日常の1ページ。楽しんでもらえたか? 同情してくれたのなら、ネコ妖怪の対処法でも教えてくれ。代わりにネコミミをプレゼントしよう。


 はてさて、今後どうなることか、俺の物語の確信はまだまだ先にあるが、ここで一旦小休止としようじゃないか。



 以上、ナレーション及び司会を務めた壱村冬夜がお送りしました。


「みゃ!? さりげなくミヤの対処を依頼された! ……あと司会はトウヤがしてたんだぁー。みゃー、なんてコメントし難い物語だぜー」


 またお会いしましょう!



 *



 はい、と言う感じの一作目でした! 何がと言う訳か分からないと思う人が多いと思いますが、とりあえずやり切ったぜー!


 今回の短編版、実は色々とアイデアがあって、途中まで書いたのもあったのですが、オチが上手く出てこなくて、進めていくと迷走しちゃうことが判明したのです! ……はい、ちゃんとオチを考えていなかった自分が悪いですね(汗)。


 そんな感じで2作品くらい途中やりで止めて、夏バテとあとオリンピックが気になって全然進みませんでした。本当は7月に出す予定でしたが(苦笑)。


 無事に終わったので、一先ず安心して次に移れそうです。

 ちょうどお盆ですし、ゲットしたばかりの銀◯ファイナルでも見ながら……あ、お盆だからディスクがあるリビングが占領されてる(唖然)。


 つ、次は『神と魔王の弟子は魔法使い 〜オリジナルマスター継承者〜』をよろしくお願いします!!

 あれ? タイトルまた変わったような?

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