ジャンヌ・ダルク。
実在した人物であり、百年戦争でフランスの危機を救った16歳の少女――。
これだけでも「ジャンヌ・ダルク」には特異な人、特別な人という印象があります。
しかしフランスに尽くした彼女の最期は悲しいものです。コンピエーニュの戦いでブルゴーニュ公国の捕虜となり、シャルル7世に見捨てられ、イギリスに引き渡されます。そこで魔女裁判(宗教裁判)に掛けられるのですが、男装をして剣を振るジャンヌは異端とされ、火あぶりの刑に処されるのです。
私は彼女の存在を知り、歴史の流れを知ってからというもの「何故、シャルル7世はジャンヌを見捨てたのか」ということが、ずっと疑問でした。
――フランスの危機を救ったのに何故?
――ジャンヌがいたことで、シャルル7世は王となったのでは?
世界史の教科書には、歴史の流れ以上のことは載っていません。
しかし、吾妻さんの『夏の陽《ひ》燃えて』には、私が疑問に思っていたことについて、一つの答えを導きだしてくれたように思います。
もちろん、内容はどこまで本当のことかは分かりませんし、シャルル7世の気持ちは、資料を読んだ際の彼の生活態度などから、作者さんが想像したのだと推察します。
しかし、この作品のなかで「何故シャルル7世がジャンヌを見捨てたのか」ということや、その後の彼の生活、また心の中に生まれる苦痛や、後悔を読むことが出来てよかったなと思いました。
また、この作品の特徴は場面一つひとつゆっくりと進むところです。その描写がとても丁寧で、短いなかに深いものを感じます。
じっくりと、しっかりと読める作品です。興味のある方は、読んでみてはいかがでしょうか。