第3話・泣きそうな瑠々亜ちゃん
唖然。
陸上部、ガチだ。
別に、皆自分より速い訳ではない。むしろ、一年はまだ入ったばかりだから自分の足の速さは普通に中間くらいだ、多分。
ただ、練習量がヤバい。中学では文化部だったから、運動部の辛さを知らないのだ。
「四十九、五十! 腹筋終わり、次背筋!」
部長が呼びかける。
うう、疲れた。反射的に瑠々亜ちゃんの方を見てしまう。
瑠々亜ちゃんと目が合ってしまったが、瑠々亜ちゃんは俺にニッコリ、ちょっと不器用に笑いかけてくれた。
うおおおおおおおおおおお! HP回復! 今なら何しても疲れない! 全ては瑠々亜ちゃんの愛おしさのおかげ!
というわけで、五十メートル走タイム計測。
陸上部に入りたての俺だけまだ一年の中でタイムを計っていないらしいから、一人で走ることになった。
スタートラインに着いた。五十メートル先には、タイマーを持った瑠々亜ちゃんがいる。
よって、今、俺と瑠々亜ちゃんはマンツーマンで向かい合っている状況なのだ! (考え方がもう完全に変態)
少々疲れているが、ゴール先で瑠々亜ちゃんが待っていると考えると、そんな疲れも吹き飛んでしまう。(もう変態を超えて一周回って天才)(?)
旗が上がると同時に俺は瑠々亜ちゃんに向かって走り出した。
ゴール。
瑠々亜ちゃんパワーで速く走れた気がする。
「はぁ、はぁ、何秒だった?」
俺が聞くと、瑠々亜ちゃんは気まずそうな愛おしい顔で返答してきた。
「えっと……は……は……」
え? もしかして、八秒台?
「計れてない……」
「よし。もう一回走ろう」
「本当にごめん! ごめん! 本当に!」
「大丈夫だよ」
大丈夫。
瑠々亜ちゃんだから許せる。
結構疲れているが、まだ瑠々亜ちゃんパワーは健在しているだろう。
旗が上がると同時に俺は瑠々亜ちゃんに向かって走り出した。
「はぁ、はぁ、はぁ、何秒だった?」
「……計れてない……」
「よし。もう一回」
既に思考は瑠々亜ちゃんがどれだけ罪悪感を持たずに済むかという方向に働いている。
「本当にごめん! 本当にごめん!」
泣きそうな顔の瑠々亜ちゃんの愛おしいパワーは絶大すぎる。何があっても許してしまう。
すごく疲れているが、とにかく瑠々亜ちゃんに罪悪感を持たせないために走りきろう。
旗が上がると同時に俺は瑠々亜ちゃんに向かって走り出した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、何秒だった?」
「は……は……」
「は?」
「八秒、一四」
満足。
隣の席の瑠々亜ちゃんが愛おしすぎて死にそうなんです! n:heichi @n-heichi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。隣の席の瑠々亜ちゃんが愛おしすぎて死にそうなんです!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます