大怪獣バトルロワイアル戦記 カズラ

マンチェスター

プロローグ

あああああーーー


かんだかな天使のような声がビルが建ち並ぶ都会の街に響く。


目の前には巨大な真っ白な翼のようなものを左右に三枚広げる巨大な生物がいた。否、生物というよりは神々しい神や女神のような姿であった。

一番高いビルの屋上で少年は臆することなく立っている。



少年は勇気を振り絞り死地に赴く。

勝てるかもわからない戦いに身を投じる。その先に勝利がなくても少年は喪うことを怖れない。何故なら少年は既に何もかも喪っているからだ。少年には喪ったものに対する悲しみはもうない。あるのはただ目の前に神々しく佇む天使や神のような姿をした者への激しい怒りと殺意だけだった。

少年はぐっと歯をくいしばる。

自分が立つビルの傍にはビルからのっきりと頭がでるほどの背丈もある獣がたつ。獣は背中から鶏冠まで剛毛のようなふさふさと黒い鬣を生やしていた。


グロロロロ

黒い剛毛のような鬣を生やす怪獣は喉から低い唸り声をもらす。


「行くよ。カズラ。」


少年は親しみを込めるようにそのカズラという黒い鬣を生やす怪獣に声をかける。

怪獣には意思などない。ただ神のような存在にふざけたゲームで利用される為だけに生まれた存在であり。戦う道具でしかない。それでもカズラは少年にとって初めて子供のころに作ったオリジナルの怪獣の模型から生まれた存在だった。それをそのまま自分はゲームの戦う道具としてつかってしまったのだ。本意ではなかった。それでも少年と一緒に戦っていたその青黒い肌と剛毛のような黒い鬣を生やす巨大な怪獣をまるで長年付き添っている友や家族のように少年は思えていた。例えそれがまやかしでも少年はそう心から強く思えるのだ。

カズラが鶏冠から生えている剛毛がゆっくり靡く。鋭い赤い眼光の眼がじっと神々しい天使のような存在を睨んでいた。


少年と一匹の怪獣は最後の命を掛けた戦いへと挑む。



       

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