INCREASE
「カイル。
ちょっといいか?」
「おぉ、
どうしたニック?」
暗がりに僅かに灯される明かりの中。
密かに生活を続ける集団達。
あれから、、世界は、
徐々に。
悪い方へと、進んでいった。
出る杭は打たれる。
そう。言われたが、誰も。
釘を打つ者と、その釘が打たれる材料に対して、
誰。一人として、おかしいと思ったり、
確認したりと言った"疑う"と言った行為すらも、
持ち合せてはいなかった。
個性は『協調性』と言う"押し付け"に殺され、
いつからか、自分の考えで行動する事すらも、
我々は出来なくなっていってしまったのだ。
そうして。
少しずつ、洗脳されてゆき、
いつからか、、
それで良いと。
それが。全部。正しいと。
勘違いをし始めた。
結果。
正常な判断能力でさえも、
奴等に奪われていき、
我々は、それに気付く事等無く、
馬鹿みたいに。
"哀れにも、飼われ、続けるのだ"
ニック「西の方のコミュニティがやられた、」
カイル「、、またか、、」
最近。回収が多い。
BLOODFARMで、何が起きてるのか。
そろそろ本腰を入れて、
情報を集める必要があるのだろう、
囚われた家族や友人や恋人は沢山居る。
何の考えも無しに、死んでいった奴等も、
少なくは無い、、
その想いも、俺には分かる。
充分過ぎる程に、、
冷静さを保てなければ、
勝てる戦いも勝てなくなってしまう。
何しろ、向こうには、
BLOODDOGが居るのだから、、
弱虫。と、人間ではない。と、
そんな言葉を言われた事もあった。
だが、下手に動くと、見付かりかねない。
それに相手には、武器がある。
もし。それらに対抗するのならば、
出来るだけ沢山の人数で、安全に。
効率良く。何処かを占拠して、仲間を解放し、
装備やら何やらを整える他、手段は無いのだ。
ニック「それで、、」
端切れが悪く言葉を濁す。
カイル「どうした。
また倉庫のをこそねたのか?」
ニックは大食らいだ。
中でも肉が好き。
この世界で旧名等はいらない。
必要なのは、今日を生きれる確証と、
腹を満たせる食べ物。
"BLOODDOG"に見付からない場所さえあれば良い。
ニック「それなら良いんだけどな、、
西の奴等がこっちにも流れて来て、
更に、この間。
農場が奴等に荒らされただろ?
あまり、こうゆうのは言いたくねんだが、、
そろそろ、限界かもしれない、、」
ニックの苦笑いをする顔を見て、俺は察する。
カイル「そうか、、
まあ、元々ギリギリでやってたんだ。
そろそろ変えようと思っていた所さ、」
ニック「そうか、、
たまには、たらふく食いてえしな。」
ニックはいつもそうだ。
皆に。できるだけ、明るく、振る舞う。
口癖の様に言う彼のセリフは、、
『笑っていれば、
幾ら辛い事があっても、
そんな事が辛く無くなるのさ。
だから、笑え?笑うんだ。
そうすれば大丈夫。
きっと乗り越えられるさ。』
これを何度聞いた事か、、
ニックは優しい奴なんだ。
本当の、いい奴。
ニックに救われた者は多い。
無論。俺もだ、、
カイル「占拠するにも、頭数がいる。」
ニック「それなら大丈夫だ。
もう、皆。腹は決まってんだ。」
カイル「すまねえな?
上がこんなんで、」
バシッ
背中を強く叩かれる。
ニック「何言ってやがんだ、
お前じゃなきゃ、皆。
言う事なんて、聞かねえだろうさ。」
リーダーとしての品格は、ニックの方にある。
だが、彼は俺を立てた。
ニック「お前は俺達のリーダーだ。」
そんな風に、あっさりと俺に決まった。
皆もニックの言葉に従った。
ニック「作戦はこうだ。
偵察から連絡が来次第。
俺らはBLOODFARMへと突入しに行く。
倉庫の食料も農場も、、
先が見える状態ではなくなった。」
「ニックが全部食っちまうからなあ、」
あはははは、
殺伐とした雰囲気は笑いで吹き飛ばされた。
ニック「んっ、んんん。
ともかく、だ。
上手くいけば、たらふく食えるし、
今の穴蔵生活からも抜け出せる。
俺らの生活を、取り戻そうぜ!!」
おぉお!!
下手すれば皆死ぬ。
相手にとっては貴重な商品であり、
大事な生命力だ。
だからと言って、反撃しない訳でもない。
BLOODDOGが居なければ、何とかなる。
それが鍵だ。
奴等が回収に出ている間なら、、
中から鍵をかけられさえすれば、
勝敗の確率は格段にも上がる。
中に居るのはただのボンボンだ。
まともに戦える奴なんて居ない。
それに比べ、俺らは傭兵みたいなもんだ。
修羅場なんてもんは幾つも乗り越えて来た。
作戦通りなら、いける。
そうしたら、世界は変わる。
またあの日の様に、普通に生活が出来れば、
それを当たり前の様に繰り返せる様に、、
これは、その第一歩だ。
負けられない。
敗けてたまるか、、
BLOOD×BALLAD 影神 @kagegami
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