第21話:危険は忘れた頃に3

 なんでこんなことをやっているんだ、私は……。


 アルマ達について戦場に行く。それは良い。


 それは良いんだけど、なんか思ってたのと全然違うんですけど⁉


 私はてっきりお世話係としてお供するんだと思っていました。それはもう、『食事の用意から洗濯までどんと来いやぁ!』って、意気込みでしたよ?


 でも、現実は予想の斜め上だったようです。


※※※


 まず、いきなり大勢の侍女さんに囲まれてお風呂に押し込められたと思ったら、全身隅々まで揉みくちゃにされ、挙句の果てにドレスへとフォームチェンです。


 そして現在、出陣式の舞台上に座らせられて大勢の兵士さんや王都の皆さんの見世物になっております……。


 王族の方々は貴賓席にいるのでアルマはここに居ないので、代わりに隣の二人組みから話を聞きたいと思います。


「ちょ、ちょっと、シドハル。一体どうなってんの、これ……」

「仕方無いだろ。成り行きとは言え、嬢ちゃんは王命で俺らについてくるんだし……」

「それに、司祭からは『戦神から遣わされた少女に手を出すな!』っと、全軍に厳命されていますから、いずれにしても注目されます」


 そんな、無茶苦茶な話もいいところじゃないか!!


「しかし、悪いことばかりではありませんよ。注目されていると言う事は、裏を返せば複数の目があるという事です」

「嬢ちゃんに下手な手を出しにくくなるって訳だな!」


 まぁ、私って変な水晶で覗かれ放題らしいんで、今更誰に見られても……、って、そんなわけあるかぁ!!

 さっきから皆さんの視線がチラチラとこっちに刺さって来るんですけど⁉


「それにしても、相当に気合入ってんな。その格好……」


 えぇ、えぇ。勿論、分かっていますとも。


 こんな上品なドレス、見たこともなかったですよ。それを私なんかに着させて、服に着られているってこんな気分なんだね。


「私が頼んだ訳じゃないんだけど……、やっぱり変だよね?」

「いやいや、結構似合ってるぞ」

「貴族のご令嬢方と比べても遜色ありませんよ」


 これはお世辞だな。

 だって、ここにアルマのヤツが居たら言いそうな事を、私は簡単に想像出来てしまっていますから。


※※※


「……馬子にも衣装だな」


 ほ〜らねぇ。想像通りのお言葉を頂きました。

 正直、予想通り過ぎて反応に困ってしまうなぁ。


「やっぱり、変だよね?」

「ま、まぁ、悪くはねぇけどよ……」

「んん~、ハッキリしないなぁ」


 おいおい、目がこっちを見てないぞ。

 そんなに見るに耐えないのかい?

 流石にショックで泣いちゃうぞ?


「い、いいから、出陣だぞ! 準備しろよ」


 そう慌てたように、アルマは軍勢の中へと消えて行った。


※※※


「なんか軍隊の移動って、想像してたのとちょっと違うんだね」


 私はてっきり隊列を組んで、兵士さんがぞろぞろと行進するだけだと思っていましたけど、実際はちょっと違ったようだ。


 まず、軍隊の中には兵士さん以外の人達も結構いた。料理人だったり、荷馬車を動かす行商人のような人達。私達のような使用人。


 そして、なんでついてきてるんだ司祭様……。


「ちょっと、シドハル! なんで司祭がついて来るの⁉」

「普通ついて来んだよ。戦争ってのは生き死にを賭けた運だめしみたいな事もあるし」

「神事によって迷いを断ち切り、戦いに臨める兵士も多い。それに、戦場では必ず死者が出ますから、彼らの弔いなども司祭様の役目です」


 そっかぁ、私よりよっぽど多忙じゃないか司祭様。私なんかに構わなくても大丈夫なんですよ?


 そんないろんな人達の中で、私が一番良かったと思える人がいる。


「でも、シアさんがついて来てくれて本当に良かったぁ!」

「そう言って頂けると、私も嬉しいです」


 この度、シアさんが私のお世話係としてお供してくれることになりました。


 よかったぁ! 正直、男の人だらけのところで大丈夫かなぁと思ってたけど、シアさんが居てくれるだけでなんて心強いんだろう!


「ハァ、物見遊山気分は困ります。お姫様……」


 あ、もう一人。女の人がいました。

 私の護衛役としてついてくれるミナトさんです。


「あ、ごめんなさい。気を付けます……」

「はい。貴女は今、我が軍の象徴です。言動にはご注意を」


 こうして、私はアルマ達と共に戦地へと向かうことになりました。

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生贄って私のことですか?! 〜でもなぜか呪いの相手に助けられました〜 田辺千丸 @senmaru

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