第20話 保健室の異世科医診療タイム

 廊下を保健室へと向かうわたし。後には心春こはる鬼姉様。


 保健室の扉をコンコンっと、ノックし、「凪沙野穂香なぎさのほのか、入ります」と挨拶した。


「おはようございます、穂香ほのかさん、いらっしゃい」

「おはようございます、香織かおりさん、よろしくお願いします」


 室内から返ってくる声は、特命で保健室の先生となった白井香織しらいかおり先輩のもの。

 先輩といっても香織かおりさんは、はじめてお会いした時に友利会長から説明いただいた通り、ミカ校の先輩ではない。

 心春こはる鬼姉様に入りますの黙礼をして、入室する。

 鬼姉様はこのまま、保健室の扉の前に立つとのこと。

 

 保健室内には、セーラー服姿の肩までの黒髪セミロングな正統派の美人。


 そう、香織かおりさんは、SJGロゴのワッペンが付けられた学校指定の制服姿でのお勤めしている。香織かおりさんは、今月までは東京の女子御三家として有名な中高一貫学校法人である桜女子学院の高校3年生。医学部への推薦合格後に短期の交換派遣生としてミカ校訪問中の彼女は、私服をわずかしか持ってきていなかった。


「では、服を脱いでくださいね」

 前回と同じく、香織かおりさんは、シルバーブルーの聴診器を耳にはめなから、おっしゃった。

 

 わたしは背負っていたミカ校指定のリュックを肩から外し、制服を脱いでいく。


 島外の異世界化に居合わせてしまい医学部入学が叶わなくとも、自称異世科医(?)として医学の道を進もうとしている香織かおりさん。まずは、週に3日、琉球準州病院の宮古島市分院のベテランの女医さんの下で、臨時助手をすることになったのだと言う。

 

 Tシャツを脱ぎ下着姿となったわたしは、患者用の丸椅子に座る。

 聴診器修行タイムの開始だ。絶賛ナノマシン取込中で、今もきらめき続けるわたしの身体は、香織かおりさんの異世科医修行にもってこい、なのかも。

 

 肺の音を丁寧に聴くということで、丸椅子の上のわたしくるりと回しながら、香織かおりさんは背中や脇に聴診器を当てていく。脇の上の方に聴診器が当てられると、こそばゆさと少しゾクリとした感覚を味わう。わたしの顔は少し赤らんたかも。煌めきのせい、誤差の範囲だろうけれども。

「呼吸音は概ね前回通りね」

 香織かおりさんの聴診はだいぶ慣れた手付きとなっていた。


「心音、心雑音共に、正常と思われるわ」


 前回、きらめきながら丸椅子に座って、香織かおりさんから聴診された時は、年上の美女に見つめられたためか、わたしの心臓は少し鼓動が高鳴ってしまった記憶がある。今日はその感覚はない。


 ……そうですね。さすがに5日間の夜の別命で、和希かずき先輩の異能の視線に見つめ続けられ、わたしはけっこう慣れちまいました……裸を見つめられることに、えぇ。。

 

 そう思うわたしの顔を正面からしげしけと眺めていた香織かおりさんは、最後におでこを温度センサーでピッと検温をした。問題ないようだ。


「はい、本日の異世科医ごっこはおしまいね」

 

 最後は身体測定だ。


 身長は当然146cmで変化なしなのに対し、体重は48Kgになっていた。5日前からの体重増加は、3.5㎏。そのほとんどが、煌めく身体か取り込んだナノマシンのレムちゃんたちなのだろう。

 

 はたして、わたしの体重は最終的には、何kgとなるのだろうか?

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じみか。 於・自衛高等ミサイル科学校ST℮M少女之学舎 人道的異世界探訪記 十夜永ソフィア零 @e-a-st

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