第三章 真実を模索せよ

9, 記録


 「うへぇ……。何が何だか、わけわかんない」


書庫の扉を開け、そう呟いた。一見整頓はされている。しかしそれだけである。棚がいくつも聳え立っているからだ。正直どこから手をつければ良いか、見当もつかない。

 溜息を零す。最近増えたな、なんて考えながら。


 今私が知らなければいけないこと。この世界について。そして、ループしてしまう世界の終わらせ方。―――臎、そしてあの二人の救い方。

 といっても、この膨大な資料から探すのは、少々、いやかなり骨が折れることだろう。

 そんな時、背後からすぅっと、まさに今現れたかのように、一人の女性が横切った。まるで、こっちだと言わんばかりに、先々へと進んでいく。

 とにかくついていかなくちゃ、と思い、追いかける。

 一番奥の戸棚に着いた。先程の曲がり角で見失ってしまったようだ。近くの本棚に目をやると、何やら色褪せてしまった本が並んでいるようだ。一つ手に取って表題を見る。

 

 「……! これだ 」


 まさしくこれが世界を知るために一番適しているもの、と言えるだろう。颯一が見ろ、と言っていた本と同じ表題を示しているのだから。だがしかし、表紙をめくれば、達筆な字がこれでもかと言うほどびっしり書き留められている。目が痛くなる。

 仕方ない。痛くても、見なければならない。見なければ始まらない。まるで私が来るのを待っていたかのように置かれた、椅子に腰掛ける。ぎぎ、と木の軋む音は古い記録を甦らせる音に相応しい。

 さて、これから情報をいやでも頭に入れる訳だが。記憶力に自信はあるが、はたして全て自分の糧に出来るのだろうか。

 いや、しなければ。

 もう一度物語に入る前に、自分の両頬を思い切り叩いた。痛いけれど、その分気合は入る。


 「さぁ、やろう」

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our last lovers(改定前) 椿原 @Tubaki_0470

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