第30話 Shall We Marriage?

「まあとりあえず、クレイブおめでとう」

ベリーニはそういって乾杯の音頭を取った。


「まあ変わらんけどな。これからもよろしく」

そう言いつつも嬉しそうなクレイブだった。


今回の一件でフェリクスさんは予備役中佐となった。暗黒騎士としての階級は変わらなかったが、それに伴いクレイブを始めとするミッドウォール作戦に参加した3グループのリーダーは正式に近侍となった。要するに下士官待遇の予備役である。


もちろん正式な軍人ではないクレイブ達には軍人の部下はつかない。しかし暗黒街では大きな影響がある。これでクレイブは暗黒街でも一目置かれる存在となった。


代わりにロズワルドは近侍の任を解かれた。これはフェリクスさんが勝手にそう言っていただけだし実体はなかったのでさほど問題はなかった。


そうして酒盛りをしているとフェリクスさんが現れた。別に中佐になったからと言って何が変わる訳でもない。クレイブは鯱張って敬礼をした。


「まあ今日くらいは俺も安酒でも飲みたい気分でな」

つまり宴会に参加してくれるという意味だ。やさしい。


「…あの手記は結局その老人のものだったのですか?」

ロズワルドはそう訊いた。いや判らんとフェリクスさんは言った。


「幹部たちはそういう体で話を進めたみたいだが、名前なんか書いてなかったしな」

ただ、とフェリクスさんは続けた。


「あの爺さんじゃなくったって一緒だ」

そう言うとエールを一息で飲み干すフェリクスさんだった。そうか、そうだよね。別に誰が書いたものでも同じなのだ。フェリクスさんは当時の捕虜たちの待遇に憤激し、その被害者の象徴がその老人だったのだろう。


「神聖騎士…どこがだよ」

リオンはちょっとお酒が回って憤激した。今更言っても始まらないが確かにそうだ。


「…ウチのお客さんでも未だにイヤな目にあってる人、多いよ」

ベリーニはそう言った。ホストとして客は金だと明言しているベリーニだが、一人の人間としては大いに同情しているっぽかった。


いつかその伯爵の家に行って金品でも強奪してやろうかな、僕はそんな事を考えた。実際には警備は厳しそうだけど何か煮え湯を飲ませてやりたい。そういう作戦でも来ないかな、と思ってちらりとフェリクスさんを見たが、口にしたのは別の事だった。


「ああそういえばシオンとリーザ、お前らいつ結婚するんだ?」

四人から驚きの声が上がり、僕とリーザの顔は真っ赤になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おるめた! @samayouyoroi @samayouyoroi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ