第51話 テスト終わったから家事担当は僕らしいです
苦しかった中間テストが終わり、テスト休みに入った。僕は発表されていない結果にビクビクとしながらも休みに入った解放感から家で自堕落な生活を送っていた。と言いたいところだが、自堕落な生活を送るには隣の幼馴染がはっきり言って邪魔過ぎる。ご飯も僕任せ、洗濯も自分じゃ出来ない。努力すると言っていた家事手伝いすらテスト後休みたいという理由で全くやらなくなっていたからだ。
「凉、休みだからと言って家事をやらないのはどうなんだ?」
「そんな面倒くさい事言わないで」
いつもよりも素っ気ない態度で返される。全く僕だってだらだらとしたいのに。
「あのな、凉、お前は僕が居なかったらどうするつもりなんだ?」
「それに関しては大丈夫」
やけに自信満々な表情を浮かべながら、自堕落な幼馴染は答える。
「どうしてなんだ?」
「秀がいない事なんてない。勝手にいなくならない限り」
あまりに堂々とした返事に少し顔が熱くなってしまった、それにしても黙って高校を実家から遠い所に入学したのまだ根に持っているのだろうか。
「あのな、そうじゃなくって……。」
何か言い返そうと思っても言葉が上手く出てこない。
「そうじゃなくてなに?」
言い淀んでいる所に鋭いナイフのような言葉が飛んでくる。仕方がないので他の話題にして誤魔化すしかない。
「そうだ、凉テストも終わったし何処か遊びにでも行こうか?」
「行く」
一秒の間もなく返事が返ってくる。彼女がテスト勉強をしたとは思えないが、彼女なりにテスト期間中にもしかしたら大変なことがあったのかもしれない。
思えばテスト期間は僕が家事をあまりやってあげられなかったし、彼女なりに僕の事を気遣ってくれていたのかもしれない。
それならば彼女と何処か一緒に行ってその遊ぶ代金くらいは払らうくらいならいいか。
「どこ行きたい?」
「ヨーロッパ」
「へぇ、ヨーロッパのどこ、何か見たい場所あるのか?」
「イタリア」
「イタリアか、いいな って遠いし高いわ。流石に無理だ」
「じゃあ沖縄」
「待ってくれ凉なんで行くのにそんなお金がかかる場所を指定してくるんだ。それは遊びに行くんじゃなくてただの旅行だ」
「お金かかるの?」
「かかる。そろそろ普通の金銭感覚も身に付けていこうな」
「分かった」
彼女の親の稼ぎ方を見ていると、彼女に金銭感覚を身に付けさせることはもしかしたら不要かもしれない。
ただ、もし彼女が親から独立した時にはまっとうな金銭感覚は必要になっていくだろう。
「それを考慮してお金がかからない場所に行きたいと思います、凉何か行きたい場所は?」
「結婚式場」
「言いたいことはいっぱいあるが。まず、お前もしかしてイタリアとか沖縄とかってハネムーンに行きたいという事ですか?」
「ええ」
「凉さん、僕たちは高校生です。」
「下見」
「どれだけ行きたいんだ」
「トラック一台分に入りきらないくらいの感情」
「それは恐ろしいな」
本当に恐ろしい。思わず顔を覆ってしまう。表情を冷静に戻した後僕は
「他の所で頼む」
と真顔で答えた。
僕の芝生は青くない 仙次 @kotee_
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