彼女と過ごす日曜日

よし、まずは距離をとって相手の出方を伺うことにしよう。

彼女がスマブラ初心者か熟練者だった場合を考慮して、攻め過ぎず引き過ぎずを意識して様子見だ。


「いっくよ」


そういうと彼女は僕が様子見していてもお構いなしにガツガツ攻めてくる。

もしこれが初心者ならば難なく回避して距離をとれるだろうが、明らかにそこそこやり込んでる動きでボコボコにされた。


「えっ」


そういえば彼女「七瀬月紬(ななせ つむぎ)」はゲームが上手いVtuberで定評があるとvオタな友達が言ってたっけ。

実力はわからんがこれで手を抜いてやる必要がなくなった。

彼女の方を見ると満足げな表情を浮かべている。

ここから一気に巻き返そう。


「次は負けないから」


「やれるもんならやってみな」


次はこっちもどんどん積極的にせめて行こう。


「うわ、やられた」


「やった」


良い感じにコンボが決まり一気に倒すことができた。

これで一勝一敗だ。

3回倒せば勝ちだから後2回か。

このままの勢いでいけば、いける気がする。

けどやられる気もする。



この後は苦戦したもののなんとか2回勝った。

ここまでやって分かったが、実力はほぼ同じと言って良いだろう。

強いて言うなら僕の方が若干強い気もする。

でもこのまま彼女が練習したらすぐに彼女に追い抜かされるだろう。

彼女は負けたというのに満更でもなさそうな顔をしている。

まさか、本気を出していなとでもいうのだろうか。


「悔しくないの?」


「うん。だった強いの知ってたもん」


「そっか。もっと驚いてくれるかなって思ったんだけどなあ」


「えっ、いや、結構驚いてるよ」


個人的にだいぶ上手いプレイもできたと思ったのだが。

彼女はあまり感情が表に出てこないタイプなのだろうか。

まだまだ本当の力を出していないのだろうか。


「そんなことよりさっさと次の試合やるよ」


そんなこんなで接戦を何度か繰り返していたら、もう昼も過ぎだった。


「もう昼だけどどうする?」


「うーん、ご飯でも食べに行く?」


「そうだね、お腹すいたし食べに行こっか」


日曜日に彼女とお昼ご飯。

正解は何なのだろうか。

僕的にはマックとかでも全然いいのだが、彼女をマックに連れていくのもなんか違う気もする。

きっとここは格好いいところを見せるところなのだろう。

そうに違いない。


「何か、食べたいものとかある?」


「私は特にないかな」


「じゃあ、家にずっといても決まらなさそうだし、とりあえず外に行こうか」


クソ長い廊下を出て数分がかりでマンションの下に着いた。

下に降りるだけなのにこんなに苦労するのか。

タワマン暮らしも楽じゃないなあ。

エレベーターが混雑する時間なんかはもっと大変なのだろう。


「じゃあ行こっか」


「うん」


じゃあ行こっかとか言ってしまったが全く土地勘なくて何もわからねえ。

なんかビルだらけだし全部同じ道に見えるし。

格好いいところを見せるどころか道に迷って、無様な姿を見せる羽目になってしまうかもしれない。

どうしたものか。

とりあえずGoogle先生に助けてもらうのが得策だろう。

困った時はググるこれが大切。


「ねえさっきからずっとスマホ見てるけど大丈夫なの?」


「え、全然大丈夫だけど」


「彼女の前で格好つけておしゃれなカフェにでも連れて行こうとしたけど、土地勘ないし沢山ありすぎて困ってる感じでしょ」


「え、あ、いや」


「いいから、いいからここは私に頼ってお気に入りのカフェに連れってあげるから」


「すいません。お願いします」


ここはせっかく格好いいところを見せるチャンスだったのに。

でも彼女の顔はどこか嬉しそう。

もしかしたら頼られるのが好きなのかもしれない。

だから僕なんかと付き合ってくれてるのかも。

ならとことんダメ人間になった方が彼女は喜んでくれのだろうか。

こんなこと考えてても仕方ないか。

とりあえず忘れよ。

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僕の彼女は大人気Vtuber キベ @kibe_3

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