彼女との朝

「ふぁ〜あ」


眩しい朝日で目覚めた。

どうやらここは高層階なだけあって、日当たりも良いらしい。

なんか良い匂いもするし。

起きあがろうと体を起こすと、身体中が痛い。

なんか頭痛もする。

倦怠感もすごい。


「もう、そんなところで寝るからしょ」


どこからか、彼女の声が聞こえてきた。

そういえば昨日寝る場所に困って床で寝たんだった。

この床は大理石のようでとても硬くて冷たい。

普通に寝る場所ミスった。

だからといって、彼女と一緒のソファーに寝る勇気もないし。

毛布があっただけマシだったが。


「ほら、ご飯作ったからさっさと食べちゃって」


なんか良い匂いすると思ったが朝ごはんを作ってくれていたのか。

なんて優しいのだ。

好き。

体を起こしテーブルに着くと、美味しそうなスクランブルエッグにウインナー。

しかもパンにはベーコンと目玉焼きが乗ってる、優雅な朝ご飯のテンプレみたいだ。


「飲み物はコーヒーでいいよね?」


「勿論コーヒーで」


僕が好きな飲み物もちゃんと覚えてくれている。


「さ、食べて食べて」


「いただきまーす」


まずはパンを一口。


「うっま」


パンは熱々で目玉焼きはとろとろベーコンはカリカリ。

イメージはジブリ飯だろう。


「へへへ、そんなに美味しいの」


「本当に最高、店で出せるレベル」


「もう、それは言い過ぎだって」


そんなこと言いながら照れていて可愛い。

スクランブルエッグもトロトロで美味しいし、ウインナーもジューシーだ。

美味しすぎて無我夢中に食べてしまった。

よくよく考えたらこれが初めて食べた彼女の手料理じゃん。

もっと味わって食べれば良かった。

少し後悔している。


「美味しかった。ありがとう」


「へへへ」


満足げな彼女の顔を見ながら、コーヒーを飲む。

なんかようやく一息つけた気がする。

やっぱりタワマンなだけあって景色がやべぇ。

完全に別世界だ。

やっぱり僕なんかとは全くもって釣り合わない気がする。

僕は特別な魅力も無いだろうし。


「なーに浮かない顔してんの?なんか嫌なことでもあった?話聞くよ」


「ありがとう。でも、なんでもないから大丈夫」


「そっか。もし何かあったら話聞くから話してね」


優しい優し過ぎる。

やっぱり最高な彼女だ。

そんなことを思いながらしばらくコーヒーを飲みながらだらだらしていた。

彼女もしばらく一緒にだらだらしていたが、急に何かをゴソゴソ探し始めた。


「じゃーん」


彼女が取り出したのはスマブラだ。


「得意でしょ」


「それなりに」


「じゃあ特訓に付き合って」


特訓かあ。

何かスマブラの大会か配信でもやるのだろうか。

スマブラはガチ勢という程でもないが、そこそこ強い自信がある。

明らかな実力差があった時のスマブラはなかなか厄介だ。

彼女の強さ次第では接待プレイになってしまうかも知れない。

本音を言うなら気を遣うスマブラや、マリオカートはつまらないから嫌いだ。

ゲームは僅差な実力の人とやるのが一番楽だし、なんだかんだで一番楽しいはず。


「さ、やるよ」


いつの間にかSwitchをテレビに繋げコントローラーを二個用意している。

完全に準備満タンな状態だ。

ルールは3スタック制で先に3回やられた方が負けだ。

まず最初は彼女がどれくらい強いか見極めよう。

勝つことも大切だが、何より彼女を不快な気分にさせないのが最重要だ。


「ステージはお任せでいいよね?」


「あ、うん」


まず最初はキャラ選択。

僕はまずはバランスが良く大体の敵とやり合えるキャラにした。

彼女はコンボを決められると大ダメージを与えられる、扱いが難しいキャラを選んだ。

これはキャラのことを理解して選んだのか、見た目で選んだのかによって戦い方も変わってくる。


「よし、やるか」


「負けないよ!」

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