わたしはここにいる
「ジュン....あのさ、わたし...んッ」
ジュンはわたしにキスした.....チュってかわいいやつ。
「ミキ〜ミキィ〜やっぱり ミキ」
え?寝たの?寝たな......。
はあ びっくりした。
ジュンが見たかもしれないみきの左肩、わたしの左肩には火傷の跡がある
タンクトップならはみ出すぐらいの。あの太陽の家が火事になった日に負った火傷
わたしは部屋を出て鍵を締めポストに入れた。
ジュンは悪いが床に放置だ.......。おやすみ ジュン。
それからわたしはジュンが気づいたか気づいてないか分からないまま、いつまでこのシンデレラ状態がつづくのかも分からないまま、ただ日々を過ごす。
―――――事件が起こったのは何でもない土曜日の昼過ぎ
わたしはたいしてモテたいわけじゃない。ただあの時捨てられて.......美女になりたかった。美女になったらなんか変わると思ってた。浅はかでした......それだけだった。
すっかりやる気をなくしたわたしは、どうでもいいテレビをつけたまま、スマホで動画を見て、それも飽きてビール片手にベランダで最近始めた家庭菜園のトマトの小さな苗を眺めた。
ん なんか臭い 野焼き? 違う バチバチ音がした。わたしはベランダから乗り出して辺りを見渡す。
斜め下からケムリが出てる
―――火事だ!
わたしはパニックをおこした
部屋につまづきながら戻った拍子に足をひっかけ机の角で額を切った
そのまま廊下に飛び出た 火災報知器が鳴ってる
濡れタオル......ジュンがいつも言ってた.....
また部屋に戻ってわたしはパニックになりながら震え狂う手先で洗面所のタオルを濡らして口に当てた
非常階段! 急がないと.......非常階段!
一つ下におりると煙たいような でも炎はない
出てきた人に続いてゆっくり屈みながら階段を下りる
と、パ―――――ンッ 大きな音がした。爆発音みたいな。
やっぱりパニックになる
わたしは走っちゃだめな火事場で勢いよく階段を降りた。
わたしは5階に住んでいる
ウ―――カンカンカン―――
消防車の音がした 救急車も
助けに来た音がなぜかより恐怖を煽る......。
すぐ出口まで来たわたしの足は動かなくなった。
あの記憶が鮮明に浮かび上がる......自分の背後にまだ取り残されたこがいるんじゃないか。
太陽の家が燃え盛る炎のなか、消防車の音 消防隊員の叫び声―――
「美姫ー!みきー!美姫ーっ」
あのときと同じ.......誰かがわたしを担いだ
外へ運ばれ毛布を被され、見た顔は......消防隊員のジュン
「みきさん 美姫は?美姫どこに?中にいるかもしれない―――」
血相を変えたジュンはまたマンションへ向かう
だめ!戻らないでー!
「――――ここにいる ジュン!ここにいる!わたし!美姫!!!」
精一杯叫んだ 振り返ったジュンが
「え?」
「わたしだよ」
わたしはまだ理解できていないジュンから数メートル離れた道路で左腕を首元から抜きだし、左肩を出した
ジュンがわたしに近づいてくる
「美姫.........」
ジュンはわたしを抱きしめた、というより抱っこした
わたしが飛びついたからだ
周りを見ると、みんなパニックではない。パニックなのはわたしたち。
火事は料理中の火事で低層階だった為すぐに鎮火されていた。
まだ抱っこ状態のわたしたち
「美姫 おまえ 整形したのか」
ああこりゃまた説明が大変だな
「シンデレラになった 0時までだけ」
「は?」
「なんでもいいけど、美姫、会いたかった」
左肩を出したわたしに消防隊員の制服をきたジュンはしばらく抱っこしたまま話をした。
シンデレラは、可哀そうな美しい娘が魔法使いにドレスアップされ舞踏会に行きガラスの靴を片方忘れ王子がシンデレラをガラスの靴をたよりに探した
わたしは愛に飢えた美しくない娘が一生のお願いでシンデレラのような美女になるも、初恋の人が元の美しくないわたしを探し火傷の跡により見つかった。
わたしはきっとアソコに毛が生えていないころからジュンに恋心を抱いていた。思春期を迎えジュンは世の中で言うとモテて自分よりポジションが上と痛感し、遠慮した。
ましてやそんな気持ちを出せば、唯一の肉親のようなジュンが目の前からいなくなるような気がして言えずにいた。言う必要もなかった。いつもジュンはそばにいたから。恋心か愛情か分からずにいたのかもしれない。
ありがとう。シンデレラになって大事なものが見つかりました。
大切なものは背伸びをしなくても近くにあるものなのかもしれない。
「あれ?美姫 もっと胸でかくなかった?」
「それもシンデレラ効果 0時まで待ってみ。巨乳ヒラメちゃん現るから」
「待てない.......」
イケメンに捨てられたわたしはある日シンデレラになりましたガラスの靴は持ってません 江戸 清水 @edoseisui
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます