ハチコイ 第三話『前編』

三毛猫マヤ

『前編』

「…ねぇ、キス…しよ……」

 しんとした室内に彼女の息づかいが聴こえる。

 窓の外には砂時計のような細かい雨が、さらさらと降っている。

 はらはらと布団の上に………が染みを作っていた。

 私が彼女に……することで、少しでもその瞳から………を減らすことが出来るなら、私は……。








          ◆◇


 目を閉じれば、彼女の笑顔も、恥ずかしそうに染める頬の色も、優しい声も、その温もりも鮮明に思い出すことが出来る。

 彼女と付き合ってから、私の中の日常が少しずつ彩られていくのを感じた。



 でも、いつからだろう……胸がぎゅっと締め付けられるように息苦しくさなったのは……。

 一人の時に、急に涙が零れるようになったのは……。

 考えても、悩んでも、答えは出なかった。



 だから、せめて……自分の好きに、寄り添うことにした。








          ◆◇


 駅の改札を抜けると半袖姿の顔馴染みの駅員が額に汗を浮かべながら、笑顔であいさつをしていた。

 今日から六月、衣替えの季節だった。 

 初めて袖を通した夏服は、ひんやりとしていて、心地良かったが、生地が薄いのと着慣れないためか、少し落ち着かなかった。

 蓮花も今日から夏服だと言っていた。

 初めての服装をお互いに見せ合う形になる。

 蓮花の夏服を見るのは楽しみだったが、見られるのはなんだか気恥ずかしかった。


 階段を下りてホームで電車を待つ。

 目を閉じて、イヤホンから流れてくる涼しげな声を聴く。

 頭の中に、歌詞の世界を想い描く。

 青い空と白い雲、堤防に白いワンピースを着た少女が一人、バランスを取るように両腕を平行に伸ばして歩く。

 飛び立つ鳥の群れが海を越えて行く。

「早く夏休み、来ないかな……」

 暑いのは嫌だけど、アイスを食べながら縁側で夕涼みをするのは好きだった。

 それに今年の夏は彼女が居る。

 まるで漫画やドラマみたいな話だった。

 自分にまさか彼女ができる日が来るなんて思わなかった。

 去年の私が聞いたらどんな反応をしていただろう。

 そう思うと笑いが込み上げてくる。

 目を開くと、視界の隅に電車が映っていた。


 朝のあいさつを交わし、私の隣に座ると蓮花がそっと耳打ちしてくる。

「あ、綾音…な、なちゅ服、か、かあいい…よ」

 耳にかかる息とは別に首の後ろがこそばゆい感じがした。

「ありがと。蓮花も可愛いよ、なちゅ、って噛んでるところが特に」

 すでに頬をピンクに染めていた蓮花が弱々しく抗議してくる。

「い、言わないで……」

 ぽしょぽしょと呟いて恥じらう姿につい嗜虐心しぎゃくしんそそられた。

「いや、実際さ、蓮花のなちゅ服姿は可愛いし、なちゅって表現も蓮花らしくて可愛いと思うよ」

「…も、もう! き、今日の綾音は朝から意地悪だ」

 蓮花がむくれてそっぽを向いてしまう。

 そんな子供じみた姿にくすりと笑いつつ、イヤホンを取り出し、耳元でそっとささやいた。

「ごめんね。大好きな蓮花の可愛い反応が見たくてつい……ねぇ、音楽、聞こっか」

 大好きという言葉にぴくりと反応し、少し機嫌を直したのか、私の提案に、蓮花は黙って手を差しのべてきた。

 いつもの聞きたい!という台詞がないのを少し残念に思いつつも、反応があったことにとりあえずホッとして片方のイヤホンを彼女の小さな手のひらにそっと置いた。

 私はもう片方のイヤホンを耳につけて俯くと音楽に聞き入ろうとしたが、蓮花のせいで歌は全然頭に入って来なかった。

 触れ合う肩から蓮花の温もりが服を通して伝わり、鼻先には彼女のシャンプーがほんのりと香った。

 でもそれ以上に、私の意識は鞄の下に隠された蓮花の指先に持っていかれていた。

 先ほど意地悪をした事に対してのねなのか、いつもより強引に指先を絡め取られていた。

 痛みすら覚える感覚が、より強く、私に彼女の存在を意識させる。

 初めて感じるその痛みは新鮮で、彼女への新たな発見にうれしさを感じているあたり、私はもう、なにかを踏み越えているのかも知れない。

 わずかに前屈かがみになり、彼女の横顔を見詰める。

 ふすっと頬をふくらませている顔がなんだか猫のモネみたいだった。

 指先から伝わる痛みと温もりに、つい蓮花に甘噛みをされてるみたいだなと連想してしまい、私の頬は更に熱を帯びるのだった。



          ◆◇


 昼休みになるといつも通り、美波みなみしおりの三人でご飯を食べる。

 美波が手ぬぐいをほどくと中から大きめのおにぎりがゴロンと二つ出てきた。

「美波、またお昼ご飯おにぎりだけなの?」

 栞が呆れながら弁当のきんぴらを箸で摘まんでいた。

「おにぎりがあれば私は十分だよ」

 美波が包装を解いておにぎりを食べ始める。

 栞はため息をつくと弁当箱からアスパラベーコンを一つ取り、美波に差し出した。

「ちゃんと栄養バランスを考えなさいよ」

「お、いいの? ありがとー。栞ちょういい奴♪」

「あ、私も玉子焼きあげるよ」

「やった。蓮花の作る玉子焼き大好き!」

 美波がいえーいと、うれしそうに片手を掲げる。

 えーと、ハイタッチ、したほうがいいの……かな?

 ぱちん!

 強めのハイタッチに手がしびれた。

「…なんか私と反応違くない?」

 栞がやや不満気に美波を見詰める。

「あ、ごめん。しおちゃんのおかずもうれしいよー」

 美波が笑いながら栞の頭を撫でる。

 クラスで一番背の低い栞を、背の高い美波が撫でると、端から見て、お姉さんが拗ねた妹をあやしているように見える。

 相変わらずの仲良しさんだった。

 美波と栞は昔からの幼なじみで、小学生の頃まで「しおちゃん」「なみちゃん」と呼び合っていたそうだ。

「こら、しおちゃん言うなし」

 栞が美波の手のひらで払いのけるも、美波はにへへと笑っていた。


 食事を終えたところで、栞が思い出したように口を開いた。

「ねぇ…蓮花って、お弁当自分で作ってるの?」

「あれ? 知らなかった?」

 美波が不思議そうに訊ねてから私の方を振り返る。

「…もしかして黙っておいた方が良かった?」

「ううん、別に隠してる訳じゃないから」

 自慢してるみたいで嫌だったから、あまり口外しないようにしていただけだ。

 口の固い二人に知られるくらいなら気にならなかった。

 朝食を母親と一緒に作っていたら、その流れでお弁当も作るようになったのだった。

「まあ、ほとんどは夕飯の余りとか、冷凍食品だし、私が作ってるのは玉子焼きとか簡単なものだけだよ」

「蓮花、すごい…天然なのに…朝御飯の用意までして」

 栞がじっと私を見詰め、美波はなぜか腕を組んでうんうんと頷いていた。

「えーと、あ、ありがと…う?」

 間に天然の言葉が入っているせいでやや反応に困った。

「な、すごいよなー。私なんてそんな時間があったらもっと眠るのに」

「美波、あんたはいい加減中学一年生から続く私からのモーニングコールを卒業しなさい」

 栞が美波に人差し指を突きつけていた。

 というか三年以上も毎日モーニングコールしてるんだ。

 そっちのがすごくない?

「愛してるぜ、しおちゃん♪ 早く私に毎朝大根のお味噌汁を作っておくれ」

「寝顔に沸騰ふっとうした味噌汁をぶっかけてあげようか」

「相変わらずのしお対応だね♪ しおちゃんだけに!」

「ウザイ…」

 いつものやりとりに笑いつつ、モーニングコール、いいなと思う。


 綾音からモーニングコールが来たら低血圧な私でもすぐに目覚めると思う。

 むしろモーニングコールの二〇分くらい前には起きて、いまかいまかとワクワクドキドキするまである。

 ……もはやモーニングコールじゃなくなっていた。

 じゃあ、逆に私からモーニングコールをするとかどうだろう。

『おはよう綾音、もう起きる時間だよ』

「んー? 蓮花?」

『うん、蓮花だよ。 ほら、早く起きて起きて!』

「ごめん、あと五分…」

『あ、こら! もう、綾音起きなさーい!』

「……ぐぅ」

『もう、は、早く起きないと、今からい、イタズラしにいっちゃう……ぞ』

「……」

『お、おでこにちゅー……とか……』

『………』

『……』

『…っ!!』

「うぉっ! どうした蓮花?! 急に机を叩き出して」

『え? いいや、なんでもなんでもなんでもないよー! あははははー』



          ◆◇


 渡り廊下を歩いている時に蓮花へ声をかけた。

「……ねぇ、蓮花」

「なぁに? 栞」

 蓮花が人懐こい声でこちらを振り向く。

「最近、明るくなったよね」

 蓮花が小首を傾げる。

「そうかな?」

「うん、前より元気になった気がするよ。…それに……きれいに、なった」

「えぇっ?! そ、そんなこと…ないと、思う…けど……」

 蓮花がわかりやすく動揺する。

「蓮花、最近幼なじみと再会したって、言ってた…よね」

「…う、うん」

「その件と、関係ある……とか?」

 蓮花の頬がほんのりと桜色に染まる。

 手首に付けているシュシュの桜よりもきれいだな、と思った。

「え、えぇと、関係…ない、よー」

 小学生すら騙せそうにないウソに、私は笑いながらそっか、とだけ言って歩き出した。

「ほ、ほんとのほんと、関係ないからね!」

 私は後ろから付いてくる蓮花の戯言たわごとを流しながら、考える。

 蓮花が好きになる幼なじみってどんな男なのかな?

 マッチョ……は、ないな。ないない。

 体育教師の顔が思い浮かび、ゾッとする。

 優男風でメガネでもかけてるのほほんとしてる人かな? あり得るけど、主体性のない二人が一緒になるといろいろグダグダになりそうで収集がつかなくなりそう。

 まあ、これからのんびり探りを入れて行こう。

 ふふ、楽しみ♪



          ◆◇


 学校帰り、いつもの駅で待ち合せをして、蓮花が好きな漫画の新刊を購入すると雨が降る前に帰ることにした。

 今朝の予報通り午後から空気は湿り始めていて、空にはどんよりとした雲が居座り、いつ雨が降ってもおかしくなかった。

 電車に乗ってイヤホンで一曲目を聞き終えた頃、雨粒が窓に張り付いているのに気付いた。

 私の手を握っていた蓮花が雨に気付いてあっと小さな声を上げた。

 私が視線で問うと、蓮花は眉根を寄せて、傘、学校に忘れてきちゃったと言った。

 母親はパートで遅くなるらしい。

 私は膝の上に乗せた鞄の口を開けて手を突っ込み、折り畳みの存在を確かめてから、家まで送る旨を伝えた。

 蓮花は申し訳なさそうにありがとうと言った。


 蓮花の最寄り駅を出て、水玉模様の傘を開くと、案の定一人用のため、早速蓮花の肩が濡れ始めていた。 

 遠慮して腰が引けているため、体の半分以上が濡れていた。

「蓮花、もっとこっちに寄りなよ」

「でも…悪いよ」

 自分が入ることで、私が濡れることに抵抗があるのだろう。とはいえ、こちらとしてはせっかく傘に入れているのに風邪を引かれては意味がない。

 仕方ないなぁ。

 私は彼女の肩をつかむ。

「あ、綾音?」

 彼女が驚いている間にそのまま抱き寄せた。

 蓮花の華奢な体が私の胸にすっぽりと収まる。

 鼻先を彼女のシャンプーの香りがふわりと掠めた。

 そのまま身を固くして黙り込む蓮花の頭をぽんぽんとしながら言った。

「蓮花は、少し遠慮し過ぎだよ。そんなんじゃ疲れちゃうよ」

「うん。分かってはいるんだけど…でも……」

 好きな人に嫌われたくない。

 好きな人の前では無理をしてでも良い子でいたい。

 相手の負担になりたくない…。

 迷惑をかけたくない…。

 好きな相手であればあるほどに……。

 おそらくはそんなことを考えているのかな、と思う。

「……とりあえず家まで送って行くね」

「う、うん…」

 寄り添って歩き出す。

 雨音と時折走り抜ける車の音だけがした。

 蓮花の家まであと半分というところで、対向から来たトラックに思い切り水しぶきを浴びせられた。

「うわっ!」

「冷たっ!」

 車道側を歩いていた私はもちろんのこと、蓮花も頭から水をかぶっていた。

「とりあえず、すぐそこの公園に入ろう」

 公園の東屋に入ると鞄からタオルを取り出して髪や服を拭った。

「蓮花、大丈夫?」

「…あまり大丈夫じゃ、な……っくち!」

 小さなくしゃみを聞いて蓮花の方を見ると、毛先から垂れた雫が首筋にも垂れて肩もびっしょりと濡れていた。

 雨はいつしかバケツをひっくり返したようなどしゃ降りに変わっていて、数メートル先も見えなくなっていた。

「蓮花、弱まるまで雨宿りしよう」

「う、うん…」

 二人でぼんやりと雨音を聞いていた。

 しばらくして、蓮花の視線を強く感じた。

 振り向くと、

 ささっ。

 思い切り視線を逸らされた。

 私が再び正面に向くと、しばらくしてまた隣から視線を感じる。

 思い切り振り返る。

 さ、ささっ。

 一瞬振り向く方向を間違えて、ワンテンポ遅れて蓮花が視線を逸らす。

 いや、もうそれ隠せてないからね。

「ねぇ、蓮花?」

「は、はい!」

 直立不動…いや、微妙にふるふると震えている。

「さっきから、なんで私のことを盗み見してるのかな?」

「な、なんのこと…かな?」

 ほぅ、この期に及んでまだ隠しますか。

 私は人差し指を伸ばすと、蓮花の頬に触れる。

「あ、あや…ね?」

「ふむ…」

 蓮花が頬を染め始めるのも構わずに、真面目な態度を装ってそのままプニプニと突っつく。

「あの、綾音、は、恥ずかし…」

「さっきから、なんで私のこと、見てたのかなー?」

「そ、そんなこと……」

 そこで私は蓮花の頬を親指と人差し指でぐにぐにと握る。

「い、いひゃいいひゃい…」

 蓮花が涙目になり始めたので解放する。

「さて、そろそろ話す気になったかな?」

「……」

「なったかなー?」

 手のひらを再び蓮花の頬に伸ばすとひぇっと悲鳴を上げ、コクコクと必死に頷いていた。

 そうして、蓮花は深呼吸を一度すると、口元を隠しながら、私のセーラー服をまじまじと見詰めていた。

 私は自分の胸を見下ろして、ようやく理由を悟った。

 先ほどトラックの水しぶきを避けるためにかさを傾けたため、短い間とはいえ強い雨に打たれたせいで白いセーラー服は水をたっぷりと吸っていて、三角タイで隠れているとはいえ、その……透けている……わけで……。

「……っ!」

 私はサッと体の前で腕を交差させる。

 蓮花が慌てて目を背け、ごめん、と謝る。

「ま、まあ、どちらも女の子同士だし、特に問題は……」

 ない……と、断言しようとして、そこでふと私たちは彼女同士だと言うことを思い出した。

 彼女ということは、仲が良くなると…その…き、キスとか……やっぱり、するのだろうか……?

 私自身、この前のデートの時に彼女とハグをしたいと思った。

 その延長上にはキスとか、その先もあるのだろうか?

 蓮花はどう、思ってるのかな?

 そっと彼女の背中を見詰める。

 蓮花の背中も私と変わらず雨に濡れていて、うっすらと下着が透けていた。

 お互い様とはいえ、妙な罪悪感めいたものを感じる。

 この気持ちを先ほどの蓮花も私に感じていたのだろう……。

「…れ、蓮花…」

 蓮花の肩がびくりとして、立ち上がる。

「あ、わ、私もう、帰るね! 傘入れてくれてありがとう! じゃ、じゃあ、また明日ね!」

「え? でも雨……」

 私が止めるより早く、蓮花はカバンを手に走り去って行った。

 いつもの蓮花では考えられない俊敏しゅんびんな動きに呆気に取られてしまう。

「風邪、ひくなよー」

 呟いた言葉はどこにも行けずに空しく雨音に溶けて消えた。



          ◆◇


 どしゃ降りの中、家へ駆ける。

 雨粒に全身を打ち付けられる。

 服が体に張り付いて気持ち悪い。

 水たまりを踏み抜いて、靴下がぐっしょりと濡れていた。

 雨を含んだ髪が重い。

 足は限界を迎えつつあった。

「わっ」

 歩道の脇、盛り上がっていた街路樹の根っこにつま先を取られ、バランスを崩して転んだ。

「痛っ……」

 咄嗟とっさに手をついて体を支えた手のひらに痛みが走った。

 手のひらからは鈍い痺れと共にじわじわ血がにじみ出ていた。

 立ち上がり、雨に打たれながら家路へと向かう。

 雨により体温が急激に奪われていく中、頭と胸だけはぼうっとして、熱を帯びている。

 不思議な感覚だった。

 ぼんやりとした意識の中、先ほどまでのことを回想していた。


 傘の中、いつもより近い距離。

 肩に触れた手のひらから伝わる彼女の体温や匂いにドキドキしていた。

 雨に濡れたつややかな彼女の黒髪がきれいだった。

 傘を掴む、細く柔らかそうな二の腕に触れてみたかった。

 柑橘系の爽やかなシャンプーの香りに、綾音を感じていつしか安心感を覚えるようになっていた。

 東屋の中、雨に透けた下着を見たとき、胸がひときわ高鳴った。

 その理由を知りたくて、じっと見詰めた。


 私は、綾音が好き。

 手のひらで撫でると、サラサラと柔らかく流れてゆく黒髪の綾音が好き

 細長いすべすべした心地よい指先の綾音が好き

 制服姿の綾音が好き

 私服姿の綾音が好き

 笑顔の綾音が好き

 綾音の声が好き

 時々意地悪な綾音が好き

 音楽を聞くときに触れ合う綾音の肩が好き

 ほのかに香る綾音の香りが好き


 綾音が、綾音が、綾音が……。


「綾音、綾音、綾音、あやね、あやね、あやね、あやね………」

 胸が熱くなり、喉を圧迫する感覚と息苦しさに、神経が麻痺しそうになる。

 何度もつぶやくそのコトノハは、木霊のように、私の胸に響く。


 彼女と一緒に同じ時間を過ごし、隣に居られるだけで、幸せだった。


 なのに……最近の私は変だ。

 時折、息が詰まりそうになる

 胸がぎゅっと締め付けられるように苦しくなる

 夜、前触れもなく涙を流すことがある


 綾音……。


「……好き…好き…好き、すき、すき、すき、すき、すき…………」

 ふいに零れた涙ににじむ視界の中で、何度も何度も告白した……。










―――――――後編につづく―――――――

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