空っぽの電脳は何を話す?
実のことを言うと、浩然自身もそこまでパソコンに詳しくない。というか最近まで本当に何も知らなかった。
でもそうなら、たぶんだけど浩然の知る限りの知識で解けるということだ。
「実は私も最近パソコン買おうと思っていて」
「ああ、そういえばバイトが決まったものね」
そうだった、和崎に会った時はバイトが決まっていなかった。
「はいおかげさまで…」
それと偽名事件の報酬金、臨時収入10万で買う予定だ。
「なら、今のあなたのほうが小夏に近い感覚でパソコンのこと解るかもね」
オフラインか…。おそらくオフラインでも作動するものを開いたのだろう。普通に考えればコマンドプロンプトを使ったとかか。
コマンドプロンプトとはコマンド(命令)を打ち込んでパソコンに話すやり方はある。コマンドプロンプトは立ち上げると黒い画面に英語が出てくる。ここに聞きたいこと入れればパソコンは話す。しかし、これはコマンドを知らないとできない。たとえばコンピュータの名前を聞くには『hostname』というコマンドを打たなければならない。それは一般的なスキルとは言い難い。
なぜコマンドプロンプトを浩然が知っているかと言えば、希は割と機械が好きなのだ。希は時々パソコンをいじったりしているのでその時についでに聞いている。
「今このパソコンってオフラインですよね?」
「ええ、何にも繋げてないから龍井が見た時と同じ状況よ」
それなら考えやすいな。
オフラインで起動できるものは他に何があるだろうか。空っぽのパソコンをいじりながら考える。
Word、Excel、PowerPoint、カレンダー、エクスプローラー。オフラインで起動はするがデータはない。ほかは電卓とか…? うーん、何を見たんだ? 浩然は無意識に首元に手を伸ばすと、ごつごつとした喉仏に指が当たった。
そういえばこのメーカーのパソコンは格安パソコンだったな。Word、Excel、PowerPoint…。あれ…?
「このメーカーってofficeって確かオプションじゃないですか? つまり初めからofficeが入っている訳じゃないですよね」
「ええ、そのパソコンは元々officeは入ってなかったわ。別で購入してオンラインで入れた」
「このパソコンは個人用ですよね? 何かofficeを使うことあったんですか?」
この間、希と家電量販店に行った時に、格安パソコンにはofficeがついていなかった。大学のレポートや発表でWordやPowerPointを使うだろう浩然はなんでついていないのかと思っていたが、希曰く、普通のライトユーザーはレポートも書かないし、発表もするわけじゃないからついてなくても困らないらしい。
和崎は研究用でパソコンをすでに持ってて、こちらは簡単な操作しかしていない。ならなんでofficeが入れたのだ、と思ったわけだ。
「それは講師時代に買ったもので、講師時代は個人PCではあったけれど、それで仕事もしていたわ。その時の大学では講師にはパソコンの配布がなかったから」
「和崎先生は今は准教授ですよね」
「そう、今年からね。だからそのパソコンもクリーンインストールしたのよ」
勝手に勘違いしていたが、小夏との思い出を消すためだけにクリーンインストールしたのではなかったのか。
「…立ち入ったことお聞きしますが、やっぱり講師の頃って生活は…」
「ああ、楽じゃなかったわ、給料少なかったし」
浩然も今パソコンを買おうとしているが、やはりパソコンのスペックが高くなると、パソコンは値段も高くなる。でも安いパソコンは浩然の欲しい性能が欠けてしまう。要は貧乏にとってパソコンはバランスが大事なのだ。
…そうか。
「和崎先生、3点お伺いします」
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