第34話 カッコいい先輩

 僕は結局、廉也をやり込めようと綿密に練って撮影した動画はすべて削除してしまった。その代わり、廉也と連絡先を交換し、笑顔で手を振って別れた。


「理沙があんたのこと好きになった理由、やっぱりこういうところなんだよね」


遥さんがしみじみ言った。


「もう、その話はしないでよ」


りっちゃんは真っ赤になっている。


「なんか、いろいろ巻き込んじゃって悪かったね。また会おう」


「うん。今度ダブルデートでもする? 僕と翔と四人で」


僕はいつの間にか遥さんに対してタメ口になっていた。


「あはは! それ、楽しそう」


「そうだね。考えておくわ」


そう言うと、りっちゃんと遥さんも僕らと別れた。


「一郎先輩、本当にありがとうございました!」


栄斗がいきなり改まって、僕に頭を下げた。


「やめてよ。いつものようにでいいってば」


「いえ。だって、今日の一郎先輩、最高に頼りがいがあってカッコよかったっす!」


栄斗の言葉に僕はすっかり舞い上がってしまった。え? 僕が頼りがいがあるって? カッコいいって?


「あー、そのセリフ、もう一回聞きたい! 後一回言って!」


そんなはしゃぐ僕に向かって、


「もう言わないっすよ、一郎くん!」


と栄斗くんはウインクした。


「あー、ケチ! もっと僕のこと、カッコいい先輩って言ってよね!」


「いやぁ、やっぱり可愛い先輩かな?」


「栄斗の意地悪!」


「仕方ないだろ、一郎は可愛いんだから」


「翔まで!」


僕の膨れっ面を見て翔と栄斗の笑い声が上がった。




 その日の夜、僕は忙しい受験勉強の合間を縫って協力してくれた翔のために、翔の大好物の唐揚げを作ってあげた。


「やっぱり、一郎の揚げる唐揚げは最高だな」


翔は何度もそう繰り返した。食事が終わって満腹になると、僕らは翔の部屋で寝っ転がりながらいちゃつき始めた。翔が僕におもむろに


「俺、なんで一郎のことがこんなに好きなのか、今日、その理由がはっきりしたわ」


と言い出した。


「何、急に?」


「お前、俺が好きな男の要素全部持ってるんだよ。可愛いくて甘えん坊で泣き虫な少年みたいなところと、優しくて思いやりのあるところ。たまにめっちゃカッコよく決めるところ」


翔があまりにも僕を褒めるので、僕は顔を赤くした。


「え? なにそれ。褒めすぎだよ。それ以上褒めても、僕、出すもの何もないよ」


「まだまだあるぞ。今日みたいに、俺なんかよりずっと大人っぽくてしっかりしてるところ。そのくせに、次の瞬間には小学生みたいに子どもっぽくなるところ。こいつに任せといたら大丈夫だな、って思わせておきながら、頼りないときはとことん抜けちゃうところ」


ちょっと、だんだん悪口が増えて来てませんか? だが、最後に翔は意味深な顔をして、


「それから・・・」


と僕にそっと囁いた。


「それから?」


「エッチなところ!」


そう言うなり、翔は僕の服の中に手を忍び込ませながら、僕の唇を奪った。翔は僕の服を脱がせると、自分も服を脱ぎ捨てた。僕らはそのまま久しぶりに交わった。勉強で忙しい翔とこうやって夜に交わることはよりを戻してからもほとんどできていなかったのだ。互いへの欲求は最高潮に達していた。僕も翔も互いを狂おしいほどに求め合い続けた。僕らは三回戦もやり終え、ずっかり互いの愛液で汚れた身体を舐め合った。翔の味が僕の身体全体に染み渡っていった。

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