第45話 強力な助っ人

 その時、僕はぱっと湊のことを思い出した。そういえば、湊のやつ、家族にゲイがバレたんだよな。で、携帯を取り上げられて、もうゲイには関わるな、と厳命されていたはず・・・。少なくとも、信一の弟さんの状況に対応するには、僕より適任だろう。


「もしかしたら、もっと強力な助っ人を呼べるかも」


「え、本当か?」


「うん」


湊、ああ見えて、結構頼りになるからな。




 この日、僕は久しぶりに嶺くん経由で湊に電話し、信一の弟の件を頼んで

みた。湊は僕の頼みを聞くなり、すぐに食いついて来た。


「え、面白ろそう! 行く行く!!」


いや、面白い話ではないと思うけど・・・。


「じゃあ、春休みになったら一郎んち遊びに行くね! その時に一郎の友達の弟くん、会えるでしょ?」


「そうだね。うん。いいよ」


「わーい! めっちゃ楽しみ!」


湊はノー天気にはしゃいでいる。やっぱり湊だとちょっと不安だなぁ。


「あのさ、僕んちに来るための口実にしてない? 結構これ、まじめな話なんだけどな。ちゃんと考えてよ?」


「わかってるって。桐谷湊大先生にかかればなんでもパパっと解決しちゃうよ!」


本当、わかりやすく調子に乗るやつだな、湊は。


「あ、そういえば、僕、嶺との関係、親にバレちゃった」


「は???」


このタイミングでその話する?ていうか、今、湊のやつ、嶺くんの携帯で電話かけてるんだよね? どうなっているんだ?


「だってさぁ、僕たち、しょっちゅうお泊りしてるじゃない? 最初はうまく友達で誤魔化せていたんだけど、だんだん怪しまれるようになってさ。それで、この前、嶺とエッチしてる時に親、僕の部屋に狙って入って来たんだよ? 最低だよね!」


いつの間にそんな修羅場が・・・。


「で、今はどうなってるの?」


「それ聞く? 実はね、僕、親に勝っちゃったんだよ、すごくない?」


「どういうこと?」


「嶺と別れろっていうからさ、だったら親子の縁切って家出てってやるって僕言ったんだ。出て行けるものなら出て行ってみろ、なんて親言うから、本気なとこ見せてやろうと思って、僕、荷物まとめて嶺んちに家出したの。そしたら、親、嶺んちまで押しかけてきて、嶺の親にも僕らの関係バレちゃった」


僕が知らない間に、湊ったら両家を巻き込む騒動にまで発展させていたのか。


「おいおい、それって逆にまずい展開じゃ?」


「違うの! これからがスゴイの!


 でね、僕、大泣きするフリして嶺のお父さんとお母さんにお願いしたんだ。もう、嶺と無理矢理別れさせられたら、僕、生きていけませんって。嶺までそれ、本気にしちゃってさ。めっちゃみんなに心配されて、嶺のお父さんとお母さん、そんなに僕と嶺が想い合ってるなら、口出しはしない、なんて言い出すんだよ!


 それで、うちの親、お前の関係は絶対に認めないけど、止めもしない、だって! これ、黙認しますって言ってるようなもんじゃん? しかも、もう携帯買ってもいいって言われたから、春休みになったら僕、携帯復活するよ」


 湊はサラッとこんなことを話してくれたけど、壮絶すぎる展開に僕は声も出なかった。湊、ちょっと強すぎない? あのいつもの可愛らしい湊の雰囲気からは想像できない、湊の奥深くに眠っている力って結構すごいよな、と思う。僕なんかじゃ全然湊に勝てっこないや。

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