第24話 偽装彼女?
しかし、問題はクラスだけではない。料理部の新藤部長と宮上だ。僕は「クラスの企画展示の仕事」をするために、部室を抜け出したはずだ。それが、演劇部の手伝いをしている最中に制服を汚して体操服登校とは・・・。料理部はいつも制服で活動しているから、体操服で行けばすぐにわかってしまうのだ。しかも、僕が笹原さんに片想いしている設定を、宮上は知っているのだ。
「へぇ。俺たちに隠れてデートしてたんだ」
宮上はニヤニヤしながら言った。
「デートってどういうこと?」
新藤部長が宮上に尋ねる。
「こいつ、ずっと片想いしている女子の手伝いしていて、制服汚したんですよ」
話が変な方向に進んできたぞ・・・。
「え、そうなの⁉」
新藤部長が頓狂な声を上げる。
「因幡くん・・・」
一方、水沢先輩は心配そうに僕を見た。
「あ、いや、違うんです。たまたま、その子が困ってるところに遭遇しただけで。それに、別にその子とデートなんてしてません」
僕はもう冷や汗でびっしょりだ。
「因幡くん、女の子を好きになるのは構わないけど、そのために部活をサボるのは今後やめてね」
と、新藤部長に僕はやや厳しく叱責された。なんで僕は叱られているんだろう・・・。
部活後、僕は水沢先輩に呼び出された。
「ちょっと、因幡くん、どういうこと?」
「はい・・・。僕が友達に好きな女の子いるかって聞かれて、彼女が好きなことにしていたんです」
「えー! それで、相手の子は因幡くんのことどう思ってるの?」
「どうって言われても・・・。少なくとも、僕が彼女のことを好きだって噂は、彼女自身は知らないみたいです」
「変な誤解受けないように、もし何かあったら、その気はありませんってちゃんと言わないとだめだよ」
「はい・・・」
まぁ、そんなことは万に一つもないとは思うけれど。
でも、まだまだ僕には試練が続く。演劇部の手伝いが文化祭、果ては高校演劇の大会まで続くのだ。つまり、毎日笹原さんと顔を合わせるのだ。その姿をクラスメートも見るはずだ。
あまり仲良くないふりをしなくちゃ。仲良くないふりっと・・・。
「因幡くん、大丈夫?ちょっと顔色悪そうだけど」
と笹原さんに心配され、僕は首を横にぶんぶん振った。
「全然大丈夫だよ。ほら、こんなに僕は元気だって」
僕はぴょんぴょん飛び跳ねてみせた。そんな僕の様子に笹原さんはクスリと笑った。
「一郎くんって、結構面白いね」
「そうかな?」
「うん。面白い」
僕は苦笑するしかなかった。翔は笹原さんと仲良くなるな、と言うけれど、一緒に活動する限り、何も話さないわけにもいかない。文学という共通の話題もある。結局、活動を手伝っているうちに、僕らは仲良く笑いながら話をするようになった。そして、決まって一緒に帰る。途中で手を振って別れるまでのルーティーンが毎日続いた。
二人でわいわい盛り上がっているのは、傍から見れば、十分にカップルに見えたかもしれない。
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