第7話 百戦要訣~運用の妙は一心に存す

「上杉大将、造反! 電文……『このお方は辰馬サンの息子さんだぁ♡ つーわけでオレはこっちにつく、つーかお前ら逆賊、殺す』とのことです……元帥」

「ふむ……」

「かの新羅乕が真実、先帝の継嗣であるとすれば、確かに大将の言葉通り反逆者は我々ということに……」

「ならんよ」


 梁田篤は三白眼の迫力ある顔を柔和に緩めて言った。まばらなひげをさすりながら、言葉を続ける。


「我が忠誠を捧げるのは『伽耶の末裔、新羅の皇統』であって、『新羅辰馬個人』にではない。すでに皇統はエーリカ陛下のもとにあり、それを忽(ゆるが)せにする者こそ大逆の悪人、そうではないかね?」

「は……であれば……」

「決戦、しかあるまいよ。幸い、上杉は船を置き捨てにして行った。艦隊を万丈河(ばんじょうがわ)に乗り入れ、京師……いや、太宰に遡上、直撃する! 難攻不落の柱天城といえど、この砲の威力に太刀打ちできる者でないことを証明して見せよう!」


……

……………

……………………


「新式砲、ですか」

「カンバーラント砲、って言いましてね、帝都カンバーラント社が造ったバケモノ砲です。射程はこれまでの砲の2倍、命中精度は3倍、威力は4倍とまぁ、うたい文句はそんな感じで。実際の威力もすげーですよ? 普通の城壁なら半刻かけずに吹っ飛びます……つか、トラさん? なんでそんな離れるんですかね?」

「……いや……なぜと言われても……」


 そりゃお前がおれのケツさわりに来るからだろーがよ! と先代なら鋭く軽妙にツッコんでくるところだが、当代はそのあたりの気性がおとなしく、またどう話しても若造のチンピラがイキって喋っている口調でしかない上杉ではあるがこれでも先帝の腹心であり、帝国の元勲。敬意を払わないわけにはいかない。


 上杉慎太郎、70才。赤毛の髪は今なお白いものを許さず、ロン毛は頭頂で束ねて茶筅髷にしているし顔立ちにもしわが目立ち老いの陰は隠しきれていないが、実年齢70といわれれぱ大概の人が驚く程度の若作りではある。声には張りがあり、挙措も溌剌そのもの。見た感じだと50才前後に見える。これは帝都にいる朝比奈大輔や、同じく帝都に詰めている出水秀規、そして女帝エーリカと北嶺院文にも共通で、新羅辰馬に関わった人間というのはすべからく、若やぎの恩恵に与っているらしい。それでもエーリカは過労による病魔に蝕まれているし、永遠の若さや命を望むべくはないのだが。


「警戒しなくてもいーっスよ? オレは愛でるのが好きで手折るのは嫌いなホモっスから。トラさんのケツの穴バージンを奪うつもりはねーっス」

「は、はぁ……」


 いままで接してきた人々とはあまりに異質な態度に、乕としては驚くやら面食らうやら。亡父の親友ということは父の前でもこういう態度だったのだろうかとか、そうなると父は異性だけでなく同性にもだらしなかったのでは……? と考えてまた乕の中で辰馬の株が急落する。


「トラちゃん、それはないから。さすがに、それはたぁくんの名誉のために言っておくけど、あの二人そーいう関係じゃないからね?」


 雫が、わずかに慌てた口調で言い立てる。「なにも言ってませんが……?」「いやだって……たぁくんとシンタくんの関係、ホモだと思ったでしょ?」


「違うんですか?」

「違う違う、おーちがい! あの二人の友情はそんなもんじゃないんだって! そりゃまあ、友愛の表現が行きすぎてあーいうことになっちゃうけど」

「なんか誤解させちゃいましたかね。オレは辰馬サンのこと大好きでブチ込んでもいい気分だったんスけどねー、あっちにその気がなかったもんで……」

「いや、やっぱりホモ……失礼、同性愛のかたですよね?」

「そーっスよ?」

「いやいや、シンタくん。キミのじょーだん、わかんない人は本気にしちゃうから」

「別に冗談言ってるつもりもないんスけどね。まあ、オレがホモなのは辰馬サン相手のときだけですが」

「……だから~。えぇとね、この子はアレなの、ホモとかなんとかじゃなくて、たぁくんの信者」

「信者?」


「なんてゆーのかなぁ、今の時代同じよーなひとっていうと……スケールは違うけど緋咲ちゃんかな」

「はい? わたしですか~、雫ねーさま?」

「んー、なんでもないよ~、緋咲ちゃんは可愛いねって話。……ほらね、求心力があって、みーんなそのひとのこと好きになっちゃう子。そのすっごいスケールがおっきい版が、たぁくん」

「本当にねー、あの人には「なにかしてやらんと」って思わせられて。父性をくすぐるってヤツ? いやー、かーいかった。ケツも柔らかかったし、ふへへ……」

「ふふふ、シンタくんよ、あたしはケツ触ったくらいじゃないんだぜ~♪ 調子に乗んな♪」

「そら、雫ちゃん先生には勝てませんよ。辰馬サンの一番だし」

「へ? ……一番、だったらいーけどねぇ-、それは瑞穂ちゃんじゃないかな~と思うんだ。なんのかんので一番たぁくんの身近に居たのって瑞穂ちゃんでしょ?」

「まぁ、辰馬サン薄幸キャラ好きですからね~」

「だよね~。あれは勝てないって。ズルい」

「ま、エーリカ《今上皇帝》には間違いなく勝ってたっスよ。オレらもなんでエーリカが皇后で雫ちゃん先生が貴妃どまりなのかってわけわかんなくなりましたもん。これ、帝国で言うわけに行かねーから、ずっと我慢してたけど」

「それを言われるから、エーリカちゃんかわいそーなんだって。あの子必死に尽くしてるのにどうしてもみんなの評価が一段下で、だからすっげー悔しかったと思うんだよ~。いま暴君やってるのもその反動じゃないかって。だとしたらたぁくんとか、あたしたちにも責任あるんだけど」

「それぁ関係ねーでしょ。つらい思いしたから悪女になっていいってんなら、瑞穂ねーさんなんか一番にそーなってますよ?」

「あの子とかあたしは報われてるから。エーリカちゃんってたぁくんにヴェスローディアを差し出して王様にしてあげた割に、女王特権てゆーかそういうの薄かったもん。たぁくんも立皇妃は最初から瑞穂ちゃんで考えてたし」

「つまり、すべては不実なウチの父が悪いと言うことで」

「「そう!」」


 最後を乕が受けると、雫と上杉は我が意を得たりと叫ぶ。結局のところ、現在のエーリカの専横は新羅辰馬という男が彼女を満足させてやれなかったための反動でしかない。辰馬としてはすべての妻に等しく愛情を注いだつもりだろうが一人一人求める愛の量はちがい、エーリカの求める愛は辰馬が注ぐそれより大きいことに気付けなかったのは、間違いなく辰馬の失策。


……

…………

………………


「まぁんなこと言ってる場合でもなく、艦隊戦で来るよなぁ……。んじゃ、オレもそろそろ邀撃(ようげき)、出ますか」

「私も出ます。祖父と私、将棋なら私の100戦100勝。少しは戦力になれるはずです!」


 そう言ったのは財務長官、梁田詩。祖父を主君に刃向かわせているという状況にかなり心を痛めているのは、ぱっと見でわかる。罪を功績で贖(あがな)いたく、焦っているのだろうが、乕としてはそれを許すわけに行かない。彼がフェミニストであって戦場は男のものという考えが頭の中を占めているのも確かながら、国の財政を任せられる人材が皇国には他にいない。官僚として優秀な人材はごろごろいるが、大臣を任せられるほどの人傑は本当に数えるほどしかいないのだ。


「いえ。僕が出ましょう。梁田さんは僕の本陣に随行を」

「……はい!」

「わたしは~? 兄さま、緋咲はご用でないですか~?」


 一度、否定された詩だが随行を許されるとぱっと愁眉を開く。それに乗じて緋咲も自分の出番を希求するが、今回は戦争であり大切な妹分をうっかりそんな場所に連れて行けない。


「緋咲は危ないよ。君は留守を守っていてほしい、それも重要な役目だ」

「……はーい」


 明らかに納得していない顔の緋咲だが、留守居役が大事な仕事だというのも事実。本当なら僕の身体を二つに分けられればいいのですが、と考えるも、いかんせんどうしようもない。


……

…………

………………


艾川(よもぎがわ)、三十三頭竜川(みとみずりゅうがわ)を下り、そのまま万里の流れをなして東の果て、海に流れるのは万丈河(ばんじょうがわ)。河川中流安宅砂丘を前にした原野、その茂みに新羅乕は歩兵隊6千を伏せた。鎖の奥、川向かいの平原には上杉慎太郎の小型船隊19万4千が浮かぶ。あとの戦力20万はハゲネとヘラクリウスの100万を迎撃するため、戚の指揮下に入って貰い西方に向かわせた。ともかくこの戦場における戦術要諦はまず、敵艦が鎖と鉄杭に足を取られ、砂丘に上陸したら伏せている歩兵隊が発って砂浜に足を取られる敵兵を撃滅、強引に流れを越えてきた相手には上杉の船隊が一斉掃射を加える。そういう布陣である。策は戚が残していき、布陣に関する進言は上杉が出したが、実際それを運用する乕の手並みはかなりのもの。すくなくとも百戦錬磨の大将軍である上杉に舌を巻かせるだけのものはある。アカツキ奪回戦においては完全なお飾り、今回がほぼ初陣であり、帝国皇太子シェティのような兵学の師匠に恵まれたわけではない一武弁の冒険者あがりが、ほぼ自分の素の頭脳だけでひねり出した陣立てとしては出色と言っていい。


「ここで時間を取られるわけには行きません。西方からの100万を邀撃するため、この戦は1日で決めます!」


気勢を上げる乕。天下万民の安寧と平穏のために戦うと決めた乕にとって本来は政治で決着をつけたく、敵と言えど人を殺すのに忍びないが、まず自分の国を護るくらいできなければその先に進むこともできない。偉大な征服者といわれる父にはおそらく、理解できない悩みでしょうがと冷笑的になる乕は、亡父がかつて一戦場ごとに嘔吐し吐瀉して戦争というものを憎み苦しみ抜きながら戦い続けたことを知らない。


……


「ふむ。なかなかの陣容だが……一挙揉み潰す! カンバーラント砲、用意!」


……


「敵影見ゆ! カンバーラント砲発射準備、入っています!?」

「おう、まー見とけって。梁田のジーさまの度肝、抜いちゃるわ」


 船上で、上杉慎太郎は楽しげに嬉しげに、生き生きとライフルを構える。彼我の距離はまだ数㎞、敵の姿はほとんど芥子粒のようにしか見えないが、上杉の老衰を知らぬ眼にははっきりと敵舟の最前に積まれた大砲の砲口が見えている。


 ……神経研ぎ澄ませ-、オレ。一世一代のピンホールショット、これを決めたら拍手喝采ってな!


 人馬一体という言葉があるが、いまの上杉は人銃一体。使いなじんだライフルと完全に一体化している。その上杉が照準を定め。


「ファイア!」


 たん、と放った。


 季弩の勢いという。強力な石弩から放たれた矢も常に勢いは衰え続け、その果てるところでは布一枚貫けないというのだが、上杉の放った弾丸は衰えを知らない。むしろぐんぐんと加速して、2㎞以上距離があるカンバーラント砲の砲口に着弾、暴発自壊させる。


「っし! これで条件五分と五分、地形考えればこっち有利か!?」


……

…………

………………


「カンバーラント砲損壊! 修理は……とうぶん間に合いません!」

「狼狽えるな、たじろぐな。まだこちらに優位はある。カンバーラント砲でなくとも、大砲はいくらでもあるのだ、すべてつぶせるつもりか、上杉……?」


 悠然と構えていた梁田だが、ここで艦隊が一斉に足止めされる。川間に渡された鉄条網と、川底の鉄鎖によって戦艦が止められてしまっていた。海なら考えられない事態だが、ここが大なりとはいえ河であるという事実が、この足止めを可能にする。半日そこらの突貫工事ながら、乕の人望と先帝の遺児という名声、そして梁田詩の財力によって形成された封鎖網の機能は十二分だった。


「艦隊を分ける! 半分は上陸して迂回、残り半分はわしが率いる! このまま鎖を引きちぎって前進、叛徒、上杉慎太郎に灸を据える!」


……

…………

………………


「敵、上陸してきます! 伏兵、発ちますか?」

「まだです……もっと引きつける。一瞬で決着をつけるために、最も効果的なところに敵を引きつけねば……」


 乕は答えつつも、秀麗並ぶものなしの双眸には脂汗が浮かぶ。本当の意味での戦陣は初めてであり、失敗は許されないというプレッシャーはきわめて大きい。


 敵が寄ってくる。砂浜を、歩きづらそうに。対するにこちらは歩兵を裸足にして、砂浜でも機動力の減衰は最小限にしてある。いま突撃すれば敵に大損害を与えられるのは間違いないが、まだ早い。上陸部隊すべてが砂浜に乗り、完璧に動きが封じられるくらいの瞬間を待つ必要がある。そのときこそ一瞬で、雌雄を決すとき。それを待つのがここまで精神を摩耗させるとは思いもしなかったが。


………………


そして、待ち続け。


上杉の陣のほうで銃声と砲声が交錯する。どちらが優勢なのか分からない。小型帆船と大型戦艦、兵力はともかくとして、艦隊のほとんどが大型櫂船であるぶん向こうが有利か。確かめたいが動けない焦燥。美貌に汗がにじむ。そのとき敵陸戦部隊のことごとくが砂浜に乗り入れ終える。これ以上待っては機を失する!


「全軍伏発! ……鏖殺せよ!!」


 いいたくないが、言わねばならない一言。その言葉のもと、6千人が8万に殺到した。もともとおなじ艦隊の仲間だけに武装はほぼ同等。しかし敵は不意打ちであること、砂場に足を取られていること、そしてなにより先帝の皇子を敵としているという畏敬と遠慮からその戦闘力のほとんどを喪失しており、烏合と変わっていた。安宅砂丘の戦いは一方的殺戮となった。


………………


 そして上杉19万4千vs梁田12万。


 こちらはほぼ互角だった。強引に鉄条網を剪(き)り、鉄杭をひねり倒して進む大船団はそれ自体要塞。8万近い兵力差など関係ない。大型櫂船の機動力と、あまたの大砲を要する梁田のほうにこそ利があった。そして射程距離も、皇国軍より帝国の砲のほうが遠い。戦闘は一方的になるはずだった。そうならなかったのはここを戦場に策定した新羅乕の智慧と、そして。


艦橋ブリッジに橋かけてやれ。白兵戦に持ち込む!」


 上杉の号令で、敵艦隊へと橋が架けられる。いわゆるところのコルヴス戦術。旧世界のある海洋覇権戦争において、陸軍国家が海軍国家に勝つべくして考案され、以後営々と採用され続けた対大型櫂船必殺技で、敵の艦橋に鍵をかけ橋を引っかけて乗り込み、白兵戦に持ちこむ戦法。これが成功すれば互いの機動力の差はゼロ、砲撃は潰したも同然、そして究極的にものを言うのは純粋な兵力差だけになる。梁田とてこれを十分に警戒していたが、上杉は巧みに帝国艦隊を誘導、流れの緩いところに帝国艦隊を流し込み、速いところから寄って橋を架けた。その手際の良さには感嘆しかない。


 コルヴスが成功した時点で勝敗は決した。条件五分の兵力勝負で、1.5倍の兵力差は覆しがたい。ついに梁田篤は白旗を揚げる。


……

…………

………………


「なるほど、先帝陛下によく似ておられる。ただの容姿のことなら帝国皇太子のほうが似ているのかもしれませぬが、その瞳に宿る意思の光り、まさしく生き写しというべし……勝てぬわけですな」


 戦後、引き据えられた梁田は乕の双眸を見てそう言った。乕にはよくわからないことだが、新羅辰馬を知るもの全員がなぜ、こうも皆揃って敬愛敬慕の言葉を、言葉だけでなく心から発するのか。


 ……父もただの放蕩者ではなかった、ということでしょうか……?


「では、死を賜りましょう」

「それは許しません。これ以上無為に死なれては困ります」

「そう申されましてもな。老兵にこれ以上生き恥を晒せと?」

「ええ。晒してください。それに、ここで死なれるとあなたのお孫さんも悲しみます」


 この言葉に梁田は大きく三白眼を見開いて驚く。乕につかみかからんばかりの勢いを見せたが、それは衛兵に止められた。


「……詩が、いるのですか!?」

「はい、こちらに」


 乕は言って、後方、兵站方に控えていた詩を呼ばせる。やってきた詩は乕に明らかな好意の視線を向け、そして転じて梁田へと絶対零度の視線を向けた。


「いいザマですね、おじいさま?」

「ぅ……」

「皇子を殺すべく兵を用いて、 失敗して、恩情をかけられて。潔く殺せだのなんだの、責任を放棄してぐだぐだ言うの、みっともないと思いませんか?」

「むぅ……」

「女帝エーリカと皇子……、いえ、皇帝陛下、どちらが真主の器量かは戦って身に染みたはず。さっさと膝をついて忠誠を誓い、粉骨砕身なさい!」

「………………、分かった、そうしよう。お前はいつでも正しい」


 孫娘の剣幕に圧されまくった梁田はそう言うと、やおら乕に向き直り、改めて膝をつく。


「梁田篤、この通り無能の老骨ではございますが。命を拾っていただいた以上、主上の剣となり盾となり、犬馬の労をとることをここに誓います。この命、いかようなりともお使いください」

「助かります。梁田さんも、憎まれ役を有り難う」

「お恥ずかしいところをお見せしました。でも、憎まれ役なんてとんでもないです。あのおじいさんはああいう言われようを喜ぶ質なので」

「……はぁ、そうですか」


 ともかくとして、こうして皇国はちょっとおかしいホモ(?)の大将と、被虐嗜好の元帥という二人の将帥を手に入れた。そのまま転進、艦隊は安宅の渡船場に適当に駐留させ、陸兵で東の戦場へと向かう。


………………


「……それにしても、上杉。お前がああも見事に流れを読むとはな」

「あー、あれな。あれはこれだわ」


 梁田のこぼした言葉に、上杉は戦袍のポケットから一冊の小冊子を取り出してみせる。手製らしいその冊子の表紙には「百戦要訣」。


「神楽坂嬢……皇后陛下の著か」

「ん。辰馬サンの形見分けンときに、オレが貰ったんだわ。いやホント、タメんなるなる。人生のバイブルつーても過言でないね」

「そうだろうな。大事にするがいいわ」

「辰馬サンと瑞穂ねーさんの魂がこもってんだぜ? 言われるまでもねーっての!」


 上杉はそう言って不適に笑う。その表情は数十年の年を経(ふ)りて、なお少年時代の、新羅辰馬とともに冒険を繰り広げていた「シンタ」の風があった。

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