クラス召喚された僕らは魔力判定オーブに挑む

笠本

【短編】クラス召喚された僕らは魔力判定オーブに挑む

 まばゆい光が収まると、そこは僕らが休み時間を過ごしていた教室ではなく、石造りの大きな部屋だった。


 足元には今も淡く光る魔法陣。そして周りを囲むのは金属鎧を着た騎士やローブに身を包んだ老人、見るからに華美な装飾品を身に着けた貴人たち。


 その中の一人、王冠をかぶった恰幅の良い初老男性が僕らに近づいてきた。


「おお、勇者の皆様がた。よくぞ我らの召喚にお応えくださいました。どうか皆様の力で我らの窮地をお救いくださいませ」


「「「ステータスオープン!」」」

 漫画研究会の3人が叫んで、あれっと首をかしげた。どうもそういう仕組じゃないみたいだ。


「おいおい、君たち。王様にも段取りというのがあるんだから、先走っちゃだめだろ」

 学級委員である僕はいつものように暴走しがちなクラスメイトを抑えようとした。


「ほっほっほっ。いやいや、勝手にお呼びだてしたのは我らの方。ここは当然、無礼講というものでしょう。どうかお気になさらずに」


「無礼講って、日本語がお上手なんですね」


「それは我らは100年前にこの世界を救われた勇者タナカタカシ様の子孫でございますから。タカシ様は皆様の世界に戻られましたが、我らはその恩を忘れずにニホン語を公用語として用いておるのです」


 さりげなく戻れますアピールを入れてくるあたり、王様あなどれない。


「名前からすると現代人っぽいよねー」

「でも聞いたことないぞ」

「帰ったらググってみようぜ」

「インスタとかやってるかな」


「まあ、戻られたら今みなさまの身に宿ったチート能力は使えなくなりますので、タカシ様もそちらでは普通の学生として生活されているかもしれませんな」


「おお、やはりチートあるんですね。そこの所を詳しくお願いします」


 気になるチートの中身は、まず僕らの体の中に莫大な魔力があること。それといわゆる転移者には称号システムというものがあって、授かった称号に応じたステータス補正や特殊スキルが使えるのだと。


 たしかに脳裏にその称号というものは浮かんでくるし、お腹の辺りに何か温かいものが巡ってるのは感じ取れる。

 

 メイドさんが近づいてきて僕らの前に台を置いた。その上には柔らかな布に鎮座した半透明で黒紫色に輝くオーブ。中にクリオネみたいな形の模様がある。

 

「これは世界樹の根本でのみ採取できるオーブでしてな。中にいる精霊の化身が流し込んだ魔力に反応することで皆様の魔力量を7段階で判定することができるのです」


 一人ずつ確認してほしいというので、「じゃあまずは名簿順に頼むよ」と僕が呼びかけると吾妻アキラ君がオーブに手をかざす。


 オーブは一度明滅すると全体が光だしていった。次第にその輝きは強くなっていく。最大限に光ったところで部屋にいる大勢が歓声を上げた。


「おお、なんと魔力レベル5! 宮廷魔道士や騎士団長と並びますぞ!」

 皆の興奮ぶりに僕らも自然と拍手。赤面するアキラ君。


 続いて飯塚イチカさんが挑む。

 オーブは先程より強い光に落ち着く。

「6ですぞ、魔力レベル6! このレベルは伝説級。我が国はおろか世界でも過去に数人しか確認されておりませんぞー!」

「へへっ、まあこんなもんかなー」


 そのイチカさんと仲のいい、いつもマイペースな上原ウイカさんがのほほんとオーブに触れる。

 生まれた光は夜の道路工事レベルで、瞼が焼きつくようだった。


「レベル7! タナカタカシ様の再来じゃー!」

「おおー、私ってすごい?」

 いつのまに部屋に入ってきていたのか、楽師隊がラッパを鳴らした。もう部屋内はお祭り騒ぎ。


「さすが異世界の方々、いきなり最高レベルが登場するとは。これは次の方も楽しみですなあ」


 続く江藤エイジ君はもう、ガッチガチに緊張していた。愛用の指ぬきグローブではオーブが反応しないと言われて、慌てて脱ぎ捨てる。


「エイジ君、落ちついて」

「あっ、ああ分かってる」


 一度深呼吸した彼は真剣な顔つきでオーブを強く握りこむ。

 皆が息を飲んで見守る中、彼の挑戦が始まった。

「行くぞ!」


 光は順調に強さを増していく。

「「「1! ……2! ……3! ……4! ……5!」」」

 

 さらに一段階輝きが増す。

「「「6!」」」


 そしてついに光は最終段階へ。

「「「7!」」」


 だが彼は手を離しはしない。僕らもそのまま見守り続ける。


 エイジ君はいわゆる厨二キャラだ。中学の頃からオリジナル呪文や守護霊を設定しそれを公言していた。高校に入ってからはその過去を持ちネタに使った愛されキャラに転向したけれど、本当は今でも誰より強くファンタジーに憧れているのを僕らは知っている。


 ならばこんな所で終わるはずがないだろう?


 しかし膠着状態がそのまま続き、エイジ君の表情が厳しくなる。歯ぐきをむき出しに額には脂汗。だが光量は変わりない。いや、少し弱まってきた!?


「エイジ君! もっと右手を解放するんだ!」

「光と闇、二つの力を束ねるんだ!」

「今こそ覚醒だろ! エイジー!」

 僕らは思い思いに彼を激励する。


「うおおおおおお!!!!!」

 エイジ君の咆哮と共にバリンっと音がしてオーブが割れた。中から淡い光のクリオネが浮かんできて、どこかへ飛び去っていった。

 僕は膝から崩れ落ちる彼を、慌てて支える。


「オーブが割れるとは……なんということか。これは判定不能、規格外、とにかく前代未聞の新記録じゃあー!」


「すげえよ! すげえよエイジ!」

「ついに真の男になりやがったぜエイジ!」


「やったじゃないかエイジ君!」

「あっ、ああ……ありが……とう」

 エイジ君は満足そうに微笑むと、意識を失った。


 そんな勇者エイジ……いや、黒騎士エイジを空いてた長椅子に横たえる。メイドさんたちが彼の介抱をする間に、僕は王様に話しかける。


「王様、この城にあるオーブをあるったけ持ってきてください」

「おお!? ああ、もちろんだとも」


 王様が至急用意してくれたいくつものオーブ。僕はそれを皆に振り分ける。


 クラスのギャルであり次の順番である小笠原オリネさんにも手渡す。


「んじゃ、悪いねオタクくん。主役は私がもらうからさ」


 最近仲の良い漫研の3人組にそう言い残し、彼女はオーブに向かう。

 さきほどオリネさんからオーブがまったく輝かないという無反応パターンを狙うって言われたんだけど。どうする気なんだろう。


 と、よく見れば彼女の手の平に透明な輝きがあった。

「なるほど、手にハンドクリームかジェルを塗って、それを絶縁体にしようって訳か。それにしても無反応パターンが主役って捉えてるあたり、オリネさんはなかなか分かってるね」


「そうだろ。オリネさんはファッションなんかじゃなくて本物のオタクにやさしいギャルなんだ」


「しかも手に塗ってるのは接着剤なんだぜ。ガンプラの作り方を教えてほしいっていうから最近一緒に練習してるくらいの本物さ」


「ガンプラって接着剤なしで組み立てられるけど、パーツの合わせ目を消すみたいな、よりクオリティを上げるときに必要になるんだ。もうそのレベルにまで到達したんだよ」


「そういえばオリネさんと付き合ってる隣のクラスの佐藤君はガンダムファンだったね」

 たしか彼の誕生日が来月だったっけかな。


「「「えっ!?」」」


 おっ、そうこうしている内にオリネさんがオーブを無反応でクリアして称賛を浴びている。


「おおっ、子供でも触れればレベル1になろうというのにまったくの無反応! これもまた規格外ですぞお!」

「へへい! やっちゃったね!」


「さあ、次は君たちの番だよ」

 加藤カズキ君、木原キクト君、工藤クミハル君に呼びかける。


「あ……うん」

 3人はとぼとぼと壇上に向かって行った。


「ええと、ぼくたちはオーブを使ったヲタ芸を披露したいと思います。光の点滅でライブを盛り上げます。曲は天使爛漫エンジェルパラダイスの新OP『恋する乙女は無敵でしょ』。オリネさん、歌の方をお願いできるかな?」


「えーいきなり!? まあ、いいっしょ」


 そしてスマホから音楽が流れ出し、彼らのライブが始まった。乙女が恋する男の子への想いを歌いあげるラブソング。

 意外やかなり上手いオリネさんの歌声にバックの3人のパフォーマンスが光る。


「何か心が沸き立ちますな」

「ああ、わたくしもまた恋をしてみたくなりましたわ」


「それにしてもあのオーブの点滅。あれだけ激しく振り回しているのに、曲に合わせてレベル1から3まで自在に変化させてますぞ。あれはかなり魔力操作に長けてなければ不可能。さすが異世界の方は違いますな」


 二番目が始まる頃には楽師隊が即興で伴奏を合わせてきてさらなる盛り上がり。


 最終的にアンコールまでこなして大盛り上がりであった。

「みんなー! ありがとー!」


 どちらかというとオーブはおまけでオリネさんの方がメインだった感じだけど、3人組は満ち足りた表情をしていた。


「ふふっ、まあこれがぼくたちの立ち位置ってところかな」

「「だなっ」」


「それにしても3人共よくあんな器用にオーブを操れたね」

「ああ、ぼくたち3人揃って『大魔法使い見習い』の称号を得たんだ。見習いでもこれくらいはやってみせるさ」


 多分それは称号というより呪いの方だと思うよ。


 メイドさんたちが飲み物を配って周り、ライブの興奮が落ちついた頃には次の番である慶雲寺ケイジュウロウ君の支度が整う。


 靴を脱いで素足に、上半身を裸に、鍛え上げられた肉体を晒した彼。


 ゆっくりと壇上に上ると脇に抱えたオーブをそっと床に置いた。


 そして構えをとる。膝を落し、拳を引いてすぅーっと息を吸い込む。

 「セイッ!」と掛け声と共に直下のオーブに向けて寸勁を放つ。


 学園祭で毎年多くの観客を集めるケイジュウロウ君の瓦割りショー。年々その枚数を増やす彼の鍛え上げられた拳。その全力がオーブに叩きつけられたのだ。


 ビキッとオーブにヒビが入った。その割れ目から淡く光るクリオネみたいなのが浮かび、どこかへ流れていく。


「どうです! これが我ら3組の誇る最強の武道家クラス、カラテカ、ケイジュウロウ君の力です!」


「オッス!」

 ケイジュウロウ君が一礼すれば護衛の騎士たちからも野太い称賛の声が上がる。


「オッシャラー!」

「ナイスパンチ!」


 次に壇上に登場したのは小柴コウイチ君。


「さて、では僕は頭脳的に壊しますよ」

 くいっとエアメガネをいじった彼は科学部部長にして理数トップの英才だ。


「このオーブ、世界樹の根本でとれるというのと、中に精霊の化身が宿っているという証言から、地球でいう琥珀のようなものだと仮定するよ。まずは化学的なアプローチを試そう。ここにエタノールかエーテルはありますか?」


 エーテルってファンタジーっぽいなあと思ったら、普通に地球にある物質だそうで、この世界にもあって、すぐ提供された。


 コウイチ君が容器を傾けてエーテルをオーブにかける。するとオーブの表面が溶け落ちていく。

「やはり主成分は高分子イソプレノイドだったか」


「おおっ」

「コウイチ殿は錬金術師であったか。素晴らしい知識ですな」


「いいえ、全ては僕の計算によるものですよ」

 コウイチ君はタタタッとエアキーボードを打つ仕草をするが、それはさすがにここの人には伝わってないと思うよ。


「ねえ、コウイチ君」

 と、次の相模サエさんがコウイチ君に呼びかけて何やらごにょごにょと話している。 

 すると彼女はオーブを片手にして、くるりくるりとその表面を観察する。


 まるで手にした野菜の鮮度を確かめているみたいな。

 実際彼女は料理部の部長だ。その仕草はよく似合っていた。


「私が得た称号は料理人。その真髄をお見せします」

 そしてオーブを手にしたまま壁際のコックさんに問いかける。


「ここの厨房にオーブンはありますか?」

 これまでも僕たちに料理やお菓子など、その成果をふるまってくれた彼女。この異世界でも日本料理無双をしてしまうのだろうか。そう思ったが違った。


「琥珀の融点は200度だそうだから、オーブンを通せばイチコロね」

「いえ、それは……」


 コックさんが抵抗したが、もう遅かった。


「そしてここに加熱したものを用意しました」


 サエさんが手を向ければ台座の上には皿、そして中には煮崩れたオーブ。

 すうーっと淡い光が浮かび上がって消えていった。


 えっと、精霊的なあれだから自然に還ったみたいなあれだよね、多分。


「おお、これが料理人の幻の特殊スキル『工程エンジェルズ破棄タイム』か!」

 コックさんがサエさんを憧れの目で見る。


「まさに魔法!」

「ファンタスティック!」


 沸き立つ場内。

 僕たちも初めて見るチートスキルに興奮が止められない。


 そんな喧騒に割って入るように、次の番である四堂シュンヤ君が王様の前に進む。護衛役の騎士が警戒するように半歩前に出た。


 無理もない、シュンヤ君は染めた金髪に着崩した制服というヤンキーなのだ。

 加えて彼はその騎士たちに向かって言った。


「その剣を貸してほしい」


「なんだと!」


「待ってください!」

 声を荒げた騎士とシュンヤ君の間に割って入ったのはサエさん。


「シュンヤ……あんた……」

「ああ、俺、剣士の称号を得たんだ。いや、違う。これから剣士になるんだ」


 そして見つめ合う二人。


 僕は困惑する王様たちに頭を下げる。

「王様、どうか彼に剣を使わせてやってください。彼はきっとその剣でこのオーブを叩き切ってみせます」


「いや、待て。剣を使っていいならこの者たちでもできることであるぞ」


「違います。これは彼が剣を振るうことに意味があるんです。彼……シュンヤ君は以前は剣道部、いわば日本の騎士団のエースでした。でも彼の実力を妬んだ先輩に嫌がらせで怪我をさせられて……その報復で相手をボコボコにしたのが問題になってしまって謹慎処分を受けたんです…………そんなゴタゴタから不良闇落ちになってしまったんです」


 僕たちはそんな彼の苦しみを知りながらも、荒れるシュンヤ君を恐れて遠ざけてしまった。でも……


「でもたった一人、幼馴染であったサエさんだけが彼にかまい続けたんです。本当は部に復帰したい、剣道を続けたい。その内心に気づいていた彼女は、どれだけ邪険にされようと彼を説得し、部員との関係を取り持とうと頑張っていたんです」


「そうか、そんなことが……」


「今まですまなかった、サエ。俺はこの世界にきて、自分が剣士の称号を得たってすぐに理解できたんだ」


「うん……」


 そう、最初の説明によれば、授かる称号はその人の魂にもっとも適したものだというのだ。

 つまり、その人の心が強く求めるものを。


「俺、もう自分の心に嘘はつかない」


 シュンヤ君は幼馴染の肩に一度触れ、王様に向き直る。

「お願いします王様。ここで俺を本物の剣士にしてください!」


「分かった。シドウシュンヤ。ここにお主の騎士叙任の儀を執り行う。見事そのオーブ、叩き切って見せよ」


 騎士団長が差し出すロングソード。

 本物の真剣。見るからに重量のある鉄製の武器。

 シュンヤ君はその剣を危なげなく握ると、上段に構える。


 キッと標的を見据え、ダンっと力強い踏み込み。


「めーーーーん!!!」


 ずぱっとオーブは台座ごと真っ二つに割れた。淡い光が……


「シドウシュンヤよ、よく試練を乗り越えた。これでお主は一人前の剣士である。そしてここに忠誠の誓いを立て、騎士となるがよい」


 うなづくシュンヤ君はサエさんに向き直る。

「サエ、今まですまなかった。そしてありがとう。俺はこうして剣士に戻れたよ。その……それで……俺をサエの騎士にしてくれないか。一生守るって誓うからさ」


「うんっ、うん……私も……ずっとシュンヤについていくよ」

 そして抱き合う二人。


 周囲は今日一番の大歓声。

 中には感激で失神してしまう令嬢まで出ていた。


「よがっだよおおぉ、ザエェえ……」

 クラスのギャル、小笠原オリネさんなんてぼろぼろ涙を流して化粧が落ちてしまってるよ。


 さあ、それではいよいよ最後の一人。僕、我妻ワカオの番だ。

 

 会場はもう存分に盛り上がりに盛り上がった。後は僕がオーブを残ったレベル4に光らせれば終わりだ。


 わざわざ皆がレベル4だけ残しておいてくれたんだ。地味で意外性はないけれど、僕にオーブを破壊するような力なんてない。ここまで来たんだから王様だってそれで許してくれるだろう。


 だけどそれでいいのか我妻ワカオ。


 僕の称号は『リーダー』だったのだ。他のみんなが本気で全力を出し切ったのに僕だけこんな予定調和でいいのだろうか。そんなんで日本に戻って委員長を名乗れるのか?


 いや……

「やっぱ、リーダ-ならやるべきだよな」


 そして僕はオーブの前で大きく息を吸って、勝負に出た。


「王様、今日はお招きいただきありがとうございます。おかげで得難い体験が出来たと思います。ですが一点だけ物申させてください」


「うむ、何かの」


「はい…………それは、今どきクラス召喚とか古臭くないかってことです」


「なっ!?」


「異世界ファンタジーは日進月歩。常に流行が移り変わる激戦区ですよ。なのにクラス召喚とか何年前の流行りですか? しかも魔力判定オーブをドヤ顔で持ち出すとか。今どきのユーザーがそれで満足するとお思いですか? まったく、旧態依然きゅうたいいぜんが過ぎますよ。でもまあいいでしょう、僕のチートでこのオーブをボコボコにして見せますよ」


 そこで僕は目の前のオーブに向かい、ハッと拳を当てる。続いてエイヤッと手刀を入れ、はああっと手のひらを向けて念を送りこむ。やがて全ての念を出し切った僕は姿勢を直し、額の汗をぬぐう仕草をした。


「まあこんなものでしょう」


 そしてチラッと皆の方に視線を向ける。真剣な表情でこちらを見守る皆。内の1人、僕と目が合った上原ウイカさんが頷くとオーブに近づいてくる。


 ウイカさんはオーブを優しく撫で、押し抱くように持ち上げると王様に言った。


依然いぜんとして、球体きゅうたいです」


 部屋が沈黙に覆われる。王様は目をつぶった。緊張が場を支配する。皆で息をのんだ……


 どうだ、いけるか……


 やがて王様は目を開き、王笏を掲げて言った。


「この者に褒美を取らせい!」


 パラッパーとラッパが吹き鳴らされる。

 周りの令嬢やメイドさんたちからは黄色い歓声がとぶ。


「やったね委員長!」

「さすが魔の3組と呼ばれた俺たち問題児のまとめ役やってるだけあるぜ!」

「俺たちのリーダー!」

 皆がわあっと集まってきてもみくちゃにされてしまう。


「ありがとう、みんなありがとう」


 それから僕たちは部屋の反対側でおいしそうな匂いを漂わせていた料理をごちそうになった(普通に日本のおなじみ料理ばかりだった)。そして色々お土産をもらって元の教室の元の時間に帰った。休み時間に教室の外に出ていたクラスメイトは泣いてくやしがったよ。


 ああ、魔王とかは100年前に召喚された勇者タナカタカシが完全消滅させてるので、今回僕らが呼ばれたのは単に新年会のマンネリの解消だったとのこと。


 なお、好評に応えて来年も『こんな追放はいやだ』というお題で実施するらしいので、皆も召喚された時にそなえて今からネタを磨いといてほしい。


――――――――『完』

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